イプサム 【1996,1997,1998,1999,2000,2001】

ファミリーカーの概念を革新した3列シートモデル



5ナンバーサイズにまとめた新世代ミニバンの誕生

 イプサムは、日本のファミリーカーの主役がサルーンから、マルチユースフルなミニバンに変わったことを印象づけたエポックモデルだった。1994年に登場したホンダ・オデッセイの好評を受け、業界トップのトヨタが全力を傾注して新開発したモデルで、後発モデルだけに扱いやすいサイズ設定や多彩なシートアレンジなど見るべきポイントが多かった。

 イプサムの特徴は5ナンバーサイズ内に収めたボディサイズにあった。2735mmのロングホイールベース上に構築したボディは全長4530mm×全幅1695mm×全高1620mm。全長と全幅はコロナ・プレミオとほぼ等しく全高のみ200mmほど引き上げていた。ライバルとなるオデッセイよりひと回り以上小さい日本の道にジャストフィットする絶妙なサイズ設定である。

 イプサムのようなファミリーモデルは、普段は女性がドライブする機会が多く、扱いやすさは非常に重要な要素だった。イプサムは絶好の視界もあり、非常に運転のしやすいクルマで、しかも最小回転半径も5.5mと小回りが利いた。女性にも優しいサイズ設定はイプサムの大きなセールスポイントだったのだ。

1台で3役をこなす多彩なユーティリティ

 室内の使い勝手は秀逸だった。イプサムの開発コンセプトは「1台でセダン、ステーションワゴン、ワンボックスワゴンの3役をこなすクルマ」だったが、工夫を満載した広大な室内空間は、その主張どおりに仕上がっていた。3列シートを配置した室内の室内長は2565mmに達し、室内高も1220mmと余裕たっぷり。1列目から2列目へは簡単にウォークスルーが可能で、9通りものシートアレンジにより多彩に使えた。

 1列目2名+2列目3名+3列目2名での最大7名でドライブが楽しめただけでなく、3列目を床下に収納すると広大なラゲッジスペースが出現。アウトドアシーンで便利なフルフラット機構は1-2列目だけでなく、2-3列目の2通りでアレンジ可能だった。また2列目は前後に345mmものロングスライドが出来、シートバックも折り畳みが自在。折り畳むと簡易テーブルとして使える便利な設計だった。

 イプサムの多彩にアレンジできる室内空間は、さまざまなライフスタイルに寄り添うだけではなかった。その自在さで新たなライフシーンを生みだす力を秘めていた。イプサムを手に入れることでアウトドア・キャンプの楽しさに目覚めたファミリーは多かった。またバスフィッシングやラジコン操縦などの趣味の足としても最適な1台だった。

走りも意外にスポーティ!?

 イプサムは走りの性能も秀でていた。なかでも確かな操縦性はスポーティと表現していいレベルに到達していた。エンジンは135ps/6000rpm、18.5kg・m/4400rpmを発揮する1998ccの3S-FE型直列4気筒DOHC16Vで、足回りはフロントがストラット式、リアがトーションビーム式ととくに凝った点はなかった。しかしチューニングが絶妙だったこともあり、とにかく気持ちのいい走りを披露したのだ。

 動力性能は高速道路を含めて俊敏な印象で、ハンドリングも信頼感たっぷり。ワインディングロードではついつい走りに没頭してしまうほど完成度が高かった。高回転域でノイジーになるエンジン音と、全般的にロードノイズが耳につくことは欠点だったが、イプサムの走りは爽快だった。マルチに使えるファミリーカーであると同時に、ドライバーズカーでもあったのだ。イプサムが瞬く間に新時代ファミリーカーのベンチマークに成長したのは、使い勝手に優れた室内空間やボディサイズとともに、ハイレベルな走りの持ち主だったからである。

日本ジャストサイズのイプサムのライバルは!?

 イプサムは、トヨタで初めての乗用車をベースに開発した本格ミニバンだった。それまでの3列シートミニバンは商業車を豪華ににしたものが主流だった。しかしイプサムの基本はコロナ・プレミオ。俊敏さと快適な乗り心地を高次元で融合していたのは乗用車をベースにした新世代だったからだった。

 乗用車をベースにしたミニバンは、日本ではオデッセイが先鞭をつける。1994年10月にデビューしたオデッセイのベースはアコードだ。オデッセイは優れたユーティリティと走りのよさでホンダの代表車に瞬く間に成長する。イプサムはオデッセイの対抗モデルとして開発されただけに、キャラクター的にはほぼオーバーラップしていた。良きライバルだったのである。

 イプサムは日本ジャストサイズの5ナンバー規格にこだわり、ボディサイズもエンジン排気量もオデッセイより小さく取り回しに優れていた。5ナンバーサイズのため軽量で燃費もよかった。室内空間はオデッセイのほうがゆとりを感じたが、イプサムも広大。どちらも選んで間違いのない新世代ミニバンと言えた。