マークII 【2000,2001,2002,2003,2004】

高級ドライバーズカーに成長した最終進化モデル

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9代目は新世紀のベンチマークを指向

 2000年10月に第9世代のマークII(X110型)がデビューする。9代目は意欲的なクルマだった。クルマの基本となるプラットフォームをはじめ、エンジン、サスペンションを一新していたからだ。開発コンセプトは“新しい高級ドライバーズセダンの創造”。その象徴が新鮮なパッケージングだった。全長を25mm縮小しながら、前後のオーバーハングを切り詰め、さらにホイールベースを50mm拡大すると同時に、エンジン本体や燃料タンクの搭載位置を車両中央に寄せることで操縦性・走行安定性をリファインする。ボディサイズは全長が4735mmに、全幅は50mm増えて1760mmに、全高は60mm高い1460mmとなった。ホイールベースは50mm長くなって2780mmだった。

 9代目マークIIはFR車ならではの理想的な前後重量配分により、ヨー慣性モーメントの少ない自然でスポーティなハンドリングを実現する。パッケージそのものから革新した9代目は“本気のドライバーズセダン”といえた。イメージキャラクターにハリウッドの人気俳優、ジョージ・クルーニーを起用したのも9代目の“本気ぶり”を象徴していた。

虚飾を抑えたクリーンなスタイリング

 スタイリングはやはりマークIIで、これといった特徴的な部分はないが、クリーンな印象でまとめられた。フロントグリルはクラウンとセルシオの中間的な形となっている。さらにいえば、エクステリアに無用なクロムメッキの飾り物などはない。ボディ各部の仕上げは、トヨタのモデルだけあって申し分なかった。
 インテリアは他の高級車にも見られるようなドア内側と一連の流れを感じさせるデザインとなっており、アクセントとして使われているウッドパネルも上品な感じを与える。速度計とエンジン回転計は電子システムを使いながらも円形アナログ式の指針表示となっている。上級モデルのステアリングは上下部分にウッド模様を配した革巻き仕様の4本スポーク型となる。

新世代の直噴エンジンをラインアップ

 X110系マークIIのモデルバリエーションはエンジンが4種、ボディ形式はセダンの1種だが、派生車種として “ブリッド”のサブネームを持つステーションワゴンが遅れて誕生している。トランスミッションは5速および4速型オートマチック、5速マニュアルの3種がある。駆動方式は縦置きエンジンによるフロントエンジン・リアドライブ(FR)、さらに4輪駆動モデルも設定されていた。

 搭載される4種のエンジンは全て直列6気筒レイアウトとなり、排気量は2.0及び2.5リッターで、可変バルブタイミング機構(VVT)を持つ。また、燃費向上と排気ガスのクリーン化を実現したD-4と名付けられたガソリン直接噴射システムを持つエンジンもシリーズに加えられている。最高性能を持つターボチャージャー搭載のグランデiR-V2500ツインカム24ターボでは、280ps/6200rpmの最高出力を得ている。
 主力エンジンは、直噴システムをはじめ数々の新機構によりクラストップの低燃費と高出力を実現した1JZ-FSE型だった。2491ccの排気量から200ps/25.5kg・mの出力/トルクを生みだし、燃費も10・15モード値で12.6km/Lをマーク。3.0Lクラスの余裕を2.0Lと同等の経済性で楽しめたのだから価値があった。

装備充実。足回りはクラウン用をリファイン

 サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン/コイルスプリングの独立懸架、ブレーキは4輪サーボ付きディスクで、クラウン系と同じものが使われている。オプション装備としてVSC(ヴィークル スタビリティ コントロール)やトラクションコントロール、ABS、さらにナビゲーションシステムと連動してシフトコントロールを自動的に行うNAVI・AIシステムという装備もある。安全装備や快適装備では、まさに至れり尽くせりというところで、オーナードライバー向けの最高級車としてのマーク㈼の存在を際立たせている。タイヤサイズは215/45ZR17がトップグレードのグランデiR-V2500ツインカム24ターボに標準装備となるほか、下位グレードには205/55R16サイズも用いられた。

 2000年代に入ってからは、クルマに対するオーナードライバーの持つ趣味嗜好の多様化、さらに安全や省エネルギー、地球温暖化などに絡んでのクルマの存在そのもののあり方が再検討される傾向が強くなり、一時は社会現象とまでいわれたマークIIの存在も再検討が必要な時期に差し掛かっていた。ユーザーの多くはミニバンやSUVへとシフトし、3ボックスセダンとしてのマークIIはその役目を終えることとなる。クルマの選ばれる条件が変わったのである。

 マークIIは、2002年10月に内外装にマイナーチェンジを施した後、パーソナル指向を鮮明にした次期モデルとなるマークXがデビューしたことで、1968年から36年間受け継がれたマーク㈼の名は消滅した。それはひとつの時代の終焉であり、クルマ社会大変動の表れでもあった。