トヨタ・クラシック 【1996】
トヨタ初の乗用車AA型の復刻版
1936年、トヨタは、トヨダAA型と呼ばれる乗用車を発売。以来、国産を代表する自動車メーカーとして歩み続けている。その60周年を記念して、製作されたのが、トヨタ クラシックである。
トヨダAA型は、第二次大戦前の1936年(昭和11年)9月に開催された「トヨダ大衆車完成記念展覧会」でお披露目となった。トヨタ(当時、豊田自動織機製作所・自動車部)で初となる乗用車で、トヨタ創業者の豊田喜一郎が開発の指揮を担っている。
ボディサイズは全長4785×全幅1730×全高1736mm、ホイールベースは2850mmで、純国産車としては初の大型車であった。搭載エンジンは、4サイクル水冷直列6気筒OHV。3389ccの排気量を持ち、最高出力65ps/3000rpm、最大トルク19.4kg-m/1800rpmを誇った。3速MTのトランスミッションを採用し、乗車定員は5名。開発に際しては、豊田喜一郎は「日本人の頭と腕で国産大衆車を」という思いを貫いた。それだけに、完成度は高く、流麗なデザインは現代においても美しいという表現が当てはまる。
そのトヨダAA型をモチーフとしたトヨタ クラシック。トヨダAAの美しいラインを再現するかのように、当時の面影を全面に映し出している。
ベースとなったモデルは、ハイラックス(5代目)である。ディメンジョンの近さやフレーム式構造を持つことからハイラックスが選ばれたようで、企画開発と製作をトヨタ自動車や日野自動車の特装車事業を展開しているトヨタ テクノクラフト社が担った。AA型同様、フロントグリルはメッキが眩しい格子状で、その上にトヨタマークのマスコットを置いた。
前後のタイヤハウスの膨らみ、丸いヘッドライト、ホワイトリボンタイヤ&メッシュホイールなど、当時にタイムスリップしたかのような錯覚さえ与える秀逸なエクステリアである。ボディーサイズは、全長4885×全幅1735×全高1650mm、ホイールベースは2850mm。トヨダAA型と比較して全長は100mm長く、全幅は5mmだけワイド。全高は86mm低い。驚くことにホイールベースは、2850mmで完全にオーバーラップする。
インテリアは、木目調インパネや木目調ドアトリムアッパーなどウッドなムードでキャビン全体を包み込み、そこにレッドのカラーが鮮烈な本革シート、本革巻きシフトレバーノブ、本革風ドアトリムなどを組み合わせる。上質な空間を作り上げるための演出も多数、施している。
搭載エンジンは、3Y-E型1998cc直列4気筒OHVで、最高出力は97ps/4800rpm、最大トルク16.3kg-m/3800rpm。OD付きの4速オートマチックトランスミッションを備える
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生産台数は100台限定。コーチワーク作業は熟練工たちによる職人技が光る手作業で多くを行われたこともあり、800万円というプライスタグが掲げられた。トヨタクラシックは、トヨダAA型のイメージを現代に再現したメモリアルモデルであると同時に、当時のクルマ作り熱意を伝えるためのクルマだ。走りそのものはピックアップのハイラックスがベースなので、見るべきポイントは少ないが、その入念な作り込みが生む深い味わいは格別なものがある。