シビック・タイプR 【1997,1998,1999,2000,2001】

サーキットを射程に収めたチューンドハッチ

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ホンダのスポーツイズム体現車、タイプRの誕生

 痛快なスポーツ走行を堪能するには、第一にパワフルで吹き上がりに優れたエンジン、第二にそのパワーを路面にフルに伝える強靭な足回り、そして第三に心躍る内外装の演出が不可欠である。各種モータースポーツに積極参戦し、走りの歓びを知り尽くしているホンダにとって、この3条件は当たり前のものだった。1997年8月にシビックのラインアップに加わったタイプRは、3条件を高い次元で満たした傑作スポーツハッチである。

 シビック・タイプRは、ミッドシップスポーツのNSX、そしてFFスペシャティのインテグラに続くタイプRの第三弾。ホンダのスポーツスピリットを凝縮した価値ある1台だった。従来のスポーツモデル、シビック・ハッチバックSiRをベースに各部が徹底的にファインチューンされ、一般公道はもちろんサーキットでも真価を発揮するように仕上げられていた。

レブリミット8400rpm! レーシーな心臓搭載

 タイプRの魅力を具体的に紹介しよう。まずは「速さを得るためのパワーユニット」である。タイプRの1598cc直4DOHC16V・VTECユニットは、高回転対応バルブシステム、吸排気抵抗の低減、圧縮比アップ、各部フリクション減少を実施。185ps/8200rpm、16.3kg・m/7500rpmの最高出力と最大トルクを生み出した。

 リッター当たり出力はベース車の108ps/Lから当時世界トップレベルの116ps/Lに上昇。リブリミットもノーマル比+200rpmの8400rpmとレーシングエンジンに匹敵するレベルに高められた。絶対的なパワーだけでなく、ドライバーの意思に即応するレスポンスと、高回転域の痛快な伸びなどフィーリング面のリファインも万全だった。トランスミッションはクロースレシオ設定の5速マニュアルを組み合わせる。

ドライバーを高ぶらせる操縦性と演出。すべてが絶品!

 第二のポイントである「操る歓びのためのシャシー」では、車高ダウンによる低重心化、サスペンションのハードチューニング、ブレーキ能力アップ、パフォーマンスロッド採用によるボディ剛性強化、ABSの専用スポーツセッティング、タイプR専用タイヤ(BSポテンザ)、ヒール&トゥに配慮したペダルレイアウト改善を実施。なかでもサスペンションの強化と、ボディ剛性アップは徹底しており、サスペンションのバネレートは前13%、後91%アップ。それに応じてダンパーの減衰力も大幅に高められた。ボディはモノコック本体の補強を実施するとともに、ストラットタワーバーの厚肉化を実施。軽量さを追求しながら、ぐんとしっかり感を増した。

 内外装の「心に高揚をもたらす演出」も見事だった。高速安定性を高める空力パーツ(前後アンダースポイラー&リアスポイラー)、7本スポークの軽量アルミホイール、MOMO社製本革巻きステアリング、深紅のレカロ製バケットシート、ショートストロークのチタン削り出しシフトノブ、カーボン調メーターパネルなどの特別装備が施され、エキゾーストノートも重低音にセッティングされた。

別格の走り! 速さと操る楽しさと融合

 シビック・タイプRのスポーツ性は別格だった。エンジンは刺激的なサウンドを奏でながら8400rpmのレブリミットまで一気に回り、回すほどにパワーが盛り上がった。その速さは1.6ℓの自然吸気ユニット搭載車とは思えないレベルに達していた。足回りはシャープ。とくにワインディングロードでの小気味いいハンドリングは絶品だった。贅肉のないスパルタンなスタイリングや、ハードなスポーツドライビングにトライしてもしっかりとサポートするレカロシートもドライバーの気持ちを高ぶらせた。シビック・タイプRには、NSXタイプRと同質の走りの歓びと操る感動、そして持つ満足が備わっていたのだ。

 シビック・タイプRは、ホンダのスポーツスピリットを凝縮したライトウェイトFFリアルスポーツだった。スポーツ派ドライバーにとって最高のプレゼントであり、その走りは輝いていた。傑作である。