シルビア 【1983,1984,1985,1986,1987,1988】
進化したFR本格スペシャルティ
シルビアは、1983年8月に4年6カ月ぶりのフルモデルチェンジを受けて4代目へと発展した。ボディタイプはクーペとハッチバックの2種。ノッチバック形状のクーペは若々しさのなかにも落ち着いた印象が漂った。
シルビアのスタイリングは極めてクリーンなものであり、空気抵抗係数Cd=0.34と、当時としてはかなり優れた値を示していた。ロングノーズ&ショートデッキの造形テーストは、同時代のフェアレディZにも共通するもので、日産のスポーティーカーに共通する個性を持っていた。外観上の大きな特徴は、当時のトレンドであったリトラクタブル・ヘッドライトだ。エンジン・フードの左右先端部分のヘッドライトのカバーが、ヘッドライトのスイッチを入れるとライトと共に起き上がる仕組みである。ホンダ・プレリュードやマツダRX-7などが採用し、一時爆発的な流行となったものだ。シルビアの車種体系は2種のボディスタイルや5種類のエンジンを含めて22車種とそれほど多くはない。限られたユーザー向けであるスペシャルティ・パーソナルカーと言う位置付けであって見れば当然である。
シルビアのグレードは、主に搭載されるエンジンの違いで区別される。搭載されるエンジンはいずれも直列4気筒では排気量1809㏄と1990㏄の2種。キャブレター仕様とインジェクション仕様、さらにターボチャージャーを装備した仕様がある。呼称は分り易いもので、装備の違いによるR-LとR-Xが基本で、電子制御燃料噴射装置(EGI)付きがR-X・Eとなり、ターボチャージャー付きはターボR-L、ターボR-XおよびターボR-X・Gとなる。1990㏄エンジン付きのホットモデルでは各々RS-X、ターボRS-Xとなる。最強のターボチャージャー付きFJ20E・T型エンジンは、190ps/6400rpmの最高出力と23.0㎏・m/4800rpmの最大トルクを発揮していたが、これは2.0リッター・クラスとしては国産車中最高性能を持つものであった。スペースの関係かインタークーラーは装備されていなかった。
トランスミッションは4速および5速のマニュアル型が主流であり、オートマチック・トランスミッションは1.8リッター・エンジン装備車に限って装備可能となっていた。オートマチック・トランスミッションの装備率が90%に近いと言われる今日から見れば、まさに昔日の感がある。シフトレバーの位置はすべてフロアシフトであった。
室内装備は豪華を極めており、スポーツカーであったフェアレディZよりも豪華なほどだ。インスツルメンツ・パネルのデザインは直線を基調としたもので、一部車種にはデジタル表示メーターも装備されていた。シートは8ウェイの電動シートで、電動のエア・ポンプで調節されるサイ・サポート、ランバー・サポート、サイド・サポートを備える。この他、キーレス・エントリー・システム、ヘッドライト・ワイパーなど、当時として考えられるあらゆる豪華装備が施されていた。価格はシルビアクーペ2000ターボRS-Xでは254万円となっており、ライバルのセリカXX2000ターボGの211万円より大幅に高価であった。