グランビア 【1995,1996,1997,1998,1999,2000,2001,2002】

安全性を追求したミニバン専用設計モデル

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ミニバン専用設計の新世代

 1995年8月に登場したグランビアは、エスティマ(1990年5月登場)に続いてミニバン専用設計を採用した新世代モデルだった。全長4715mm×全幅1800mm×全高1965mmの堂々たる3ナンバーサイズを持ち、広々とした3列シート構成のキャビンでユーザーを魅了する。エスティマが独創のミッドシップ・レイアウトを採用し、ワンモーションの先進デザインを持っていたのに対し、グランビアのシャシーは、オーソドックスなフロントエンジン。スタイリングもジェントルにまとめていた。

 アメリカ市場も意識していた国際派のエスティマに対し、グランビアの主戦場は日本。ワンボックス形状のハイエース・ワゴンからの乗り替えに最適なモデルとして開発されていたのだ。ちなみにグランビアのネーミングは、イタリア語のGRANDE(偉大な)とVIA(道)を組み合わせた造語だ。

安全性と快適性を追求した1.5ボックスデザイン

 1990年代半ば、自動車には高い安全性が求められた。グランビアは時代のニーズに真摯に応えていた。グランビアの基本スタイルは短いボンネットを持つ1.5ボックス。スペース効率の面から考えるとワンボックスより劣る形状である。しかしグランビアはあえて1.5ボックスを採用していた。

 従来までの主流であるワンボックスは、広い室内空間が得られるものの、万が一のアクシデント時に乗員を守る衝撃吸収スペースがなかった。事故の衝撃をボディ側では吸収できず、パッセンジャーが危険にさらされていたのである。グランビアはその欠点を見事に解消していた。ボディの基本構造を徹底的に吟味しフレーム構造を最適化することで、効率的に衝突エネルギーを吸収する設計としていた。それだけではない。ミニバンとしては初めてABSブレーキと、運転席&助手席SRSエアバッグを標準で装備する。グランビアの安全に対する取り組みは実に積極的だった。

圧倒的に広く、快適な室内空間

 室内空間も余裕たっぷりだった。大柄なボディサイズの利点を存分に生かしていたからだ。しかもフロア高を520mmと低く仕上げ、1375mmの室内高を実現。大人でもちょっとかがむだけでキャビンを自在に移動できるようになっていた。

 3列構成のシートは、2列目がセパレート形状のキャプテンシート仕様と、3名掛けのセミセパレート仕様から選べた。ミニバン専用設計だけにシートは多彩なアレンジが楽しめた。とくに2列目セカンドシートは前後最大410mmのロングスライドのほか回転対座やフルリクライニングが可能で、さまざまな使用パターンに適応した。サードシートのクッションを折り畳むと最大容量2650Lの広いラゲッジスペースが生まれるのも魅力だった。

 ツインエアコンや高級オーディオ、室内カーテンなどドライブをサポートする快適アイテムの充実ぶりも目を瞠った。グランビアはVIP用のショーファードリブンとして活用されることも珍しくなかったが、それは単に室内空間が広いだけでなく、装備や作りが入念で高級車としての風格に溢れていたからだった。

主力はトルクフルな3.0リッターのディーゼル

 メカニズム面でも見るべきポイントは多かった。とくに足回りは凝っていた。フロントがダブルウィッシュボーン式、リアがセミトレーリングアーム式の4輪独立システムを採用し、滑らかな乗り心地を目指したのだ。ステアリングは確実な反応を示すラック&ピニオン方式である。

 パワーユニットは2693ccの排気量を持つ3RZ-FE型・直列4気筒DOHC16Vガソリン(145ps/22.6kg・m)と、2982ccの1KZ-TE型・直列4気筒OHCディーゼルターボ(130ps/29.5kg・m)の2種で、トランスミッションはともにコラムセレクト方式の電子制御4速オートマチックとなっていた。デビュー当時の主力ユニットは燃費に優れ、しかもトルクフルなディーゼルターボだった。駆動方式は2WDに加え、センターデフ方式のフルタイム4WDも設定する。

 グランビアをドライブすると、その豊かな居住性と滑らかな乗り心地が印象的だった。またエンジンの上に座る従来のワンボックス型と違い静粛性に優れていた。ブレーキなど走りを支えるパーツの多くは圧倒的なタフさを誇るコマーシャルカーと共通だったため、非常に信頼性が高かったのも特徴だった。グランビアはちょっぴり地味なスタイリングもあって、圧倒的な人気を誇るまでにはならなかったが、基本機能に優れた良質なモデルであることは間違いなかった。

グランビアを刺激したライバルの登場

 グランビアはトヨタのフラッグシップ・ミニバンとして評価が高かった。しかし1997年5月に最大のライバル、日産エルグランドが登場するとやや影が薄くなる。グランビアと同様に安全性の高い1.5ボックス・スタイルを採用したエルグランドには、パワフルで滑らかなV6パワーというアドバンテージがあった。セドリック&グロリアから転用したエルグランドのVG33E型3274ccのV6(170ps)は、グランビアの3RZ-FE型2693ccの直4(145ps)と比較し、明らかにパワフルでしかも静かだった。

 エルグランドの走りは高級感に溢れ、しかも豪快だった。グランビアは1997年8月に5VZ-FE型3378ccのV6(180ps)を急遽追加して対抗する。その後も1999年にフロントグリルの大型化など積極的なリファインを施した。その背景にはライバル、エルグランドへの強い対抗心が存在した。