ムラーノ 【2003,2004,2005,2006,2007,2008】

斬新な造形で魅了したアバンギャルドSUV

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ニューヨークでベールを脱いだ新世代SUV

 2002年3月のニューヨークオートショーに日産自動車は全く新しいクロスオーバーSUVであるムラーノ(MURANO)を展示した。この種のモデルでは後発となってしまったが、それだけに完成度は高くショーでの注目度も高かった。車名のムラーノとは、ベネチアングラスの産地として知られるイタリア北東部に在る島の名前に由来するものだという。

 ムラーノは、2002年11月から北米での販売が開始され、性能の高さやスタイリングの良さで好評を博した。日本市場での販売を求めるユーザーの声も大きく、2003年10月の第37回東京モーターショーにアメリカ仕様を参考展示した後、2004年9月から日本仕様としてステアリングと計器盤の位置を変更、2.5リッター直列4気筒エンジンをバリエーションに加え、グリルを一部変更した日本仕様モデルの販売を開始した。

パワフルなV6と日常重視の4気筒を設定

 ムラーノは、シャシーやサスペンションなどに同社のアッパーミドルクラスの乗用車であるティアナなどにも使われているFF-Lプラットフォームを採用していた。エンジンは2種あり、排気量3498ccのV型6気筒DOHC(VQ35DE型/231ps)と排気量2488ccの直列4気筒DOHC(QR25DEを型/163ps)を搭載する。ディーゼルエンジンはない。パワフルなエンジンによる高性能こそが、この種のSUVにとっては不可欠のものだからだ。

 トランスミッションは通常型の4速オートマチックと日産の独自開発によるエクストロニックCVTと呼ぶ電子制御システムを備えたCVT(Continuously Variable Transmission)仕様の無段変速機構を使い分けていた。駆動方式はフルタイム4輪駆動仕様のほか、前輪駆動方式としたモデルもあった。車両重量は1780kg(350XV)と重かったが、この種のクルマとしては平均的なレベル。サスペンションは前がストラット/コイルスプリング、後ろはマルチリンク/コイルスプリングで、セダンのティアナ系と同じ形式を採用。ブレーキはサーボ機構付き4輪ベンチレーテッドディスクになる。

したたかな走りを見せる4WDの完成度

 ムラーノのオールモード4×4システムは、先進の4WD機構だった。各センサーからの信号により走行状態を判断し、前輪が滑り出す前に電子制御カップリングを介して後輪にトルクを瞬時に伝えた。ムラーノは悪路や雪道の上り坂でも安定したトラクションを発揮し、思いのままに走ることができた。しかもSUVだけにタフな走行条件を考慮、常時4WDとするLOCKモードや低ミュー路での車輪スリップを抑えるブレーキLSDを加えていた。オンロードではスポーツカーのような俊敏で伸びやかな走りを見せつけ、走行条件が厳しくなってもしたたかに走りきるムラーノは、まさに新世代のSUV。日産の先進テクノロジーの結実だった。

フェアレディZにも似たコクピットデザイン

 スタイリングは斬新で個性的。大柄ではあるが全てにわたってソフトなイメージを持っていた。独特の存在感を訴求する未来的なスタイリングだ。ボディサイズは全長4777×全幅1880×全高1685mm。ホイールベース2825mmは、国産車中でも大きな部類に入る。基本的にはハッチバックボディの5人乗り多目的スポーティーモデルであり、直接のライバルとなるのはトヨタ・ハリアー/ヴァンガード、Jeepグランドチェロキーなど。

 インテリアは、スポーツカーであるフェアレディZに似た印象で、3スポークの小径ステアリングや3個の円形メーターが収められた独立型のメータークラスター、ラウンドタイプのダッシュボード、さらにアルミパネルを張ったセンターコンソール、ホールド性に優れたスポーツシートなどが個性を強調した。6段リクライニング機構を備える後部座席の居住スペースも十分に広く、長時間のドライブにも支障はない。また、後部荷物スペースも並みのワゴン以上に大きく、特にルーフの高さは嵩張る荷物の積載にも不自由はない。この汎用性の高さは、クロスオーバーSUVが人気を集める大きな理由だ。
 第1世代の日産ムラーノは、アメリカ市場だけではなく、日本を始め世界80ヶ国以上の国々で販売された。2008年1月から第2世代へと移行し、第1世代の生産は終了。総生産台数はおよそ4万台に達した。