バネット・コーチ 【1985,1986,1987,1988,1989,1990】
実用性能を磨いたコンパクトな1BOXワゴン
サニー キャブ/チェリー キャブの後継として、1978年11月にサニー・バネット/チェリー・バネットの名で新登場した日産のワンボックスモデルは、1985年9月にフルモデルチェンジされて第2世代となった。両モデルは販売店系列が異なるのみの事実上の双子車だが、エクステリアの細部を変えて違うスタイルとしていた。1980年3月にはダットサン・バネットも加わり、3姉妹車となった。完全なバッジエンジニアリングである。
車名のバネット(VANETTE)とは、英語で貨物車を意味するバン(VAN)の語尾にETTEを組み合わせた造語で、可愛らしいバンといったような意味を持つ。キャラバン/ホーミーの小型版という位置付けでもあった。
モデルバリエーションはピックアップ、バンおよび乗用車登録のコーチと名付けられた乗用ワゴン仕様の3種があり、第二世代でもこのラインアップが受け継がれていた。デビューした当初のエンジンラインアップは、排気量1973㏄直列4気筒SOHC(CA20型、出力88ps/5200rpm)と排気量1487㏄直列4気筒OHV(A15型、出力67ps/5200rpm)のガソリン仕様、排気量1952㏄直列4気筒ディーゼル(LD20型、出力65ps/4600rpm)の3種。トランスミッションは4速マニュアルと3速オートマチック、駆動方式はフロント縦置きエンジンによる後2輪駆動。4輪駆動の設定はない。
フルモノコック構造のボディは、乗用車登録のコーチ仕様では全長3930㎜、全幅1600㎜、全高1955㎜、ホイールベース2075㎜となっており、とくにホイールベースが短めだったことから、狭い道でも取り回しが楽であった。サスペンションは前がダブルウィッシュボーン/横置きリーフスプリング、後ろが固定軸/半楕円リーフスプリングの組み合わせ。ブレーキは前がディスク、後ろがドラムでサーボ機構を持つ。
スタイリングはあまり特徴のないワンボックススタイルだが、強く傾斜したフロントウィンドウや3次元曲面を持ったサイドウィンドウなどでスタイリッシュなスタイリングを見せていた。比較的小型のボディにも関わらず、室内空間の広さはキャブオーバースタイルの利点を生かし十分以上で、コーチには9人乗り仕様や国産小型ワンボックスワゴンとしては初めてとなる回転対座シートも装備可能となるなど、快適装備やあると便利な装備が充実し、ワンボックスワゴンの流行にも助けられて、高い人気を獲得した。小型ワンボックスワゴンのセグメントで、バネットシリーズはトップシェアを維持していた。
1988年11月には大幅な仕様変更を断行し、ピックアップも第2世代へと進化。パートタイム4輪駆動システムを備えたモデルやディーゼルエンジンにターボチャージャー付きエンジン(LD20Ⅱ型、出力67ps/4600rpm)を設定、実用上の性能を向上させた。この他、日産傘下の特装車メーカーであるオーテックジャパンが手掛けたカッパ(KAPPA)と呼ばれるキャンピングカー仕様も造られた。また、韓国のデーウー(大宇)ではバネット ピックアップがライセンス生産されていた。
アウトドアシーンで魅力を引き上げる専用オプションアイテムも多数設定していた。スキーラックやマッドガード、レジャーテント、といったエクステリアアイテムはもちろんのこと、インテリアにも多彩なオプション品を用意。電動カーテンをはじめ、頭上から冷風が降り注ぐシャワークーラー、キャビンを豪華に演出するシャンデリア風ルームランプなどに加え、同じくルーフに取り付けるカーテレビを用意。こちらはカラータイプで、ワイヤーリモコンまで備えていた。
変化の激しいセグメントでありながら、第2世代のバネットシリーズは9年間におよぶライフスパンを保った。それはボディサイズや実用上の性能において、当時のクルマ社会に最も順応していたことの証でもあった。