FTO 【1994,1995,1996,1997,1998,1999,2000】

スポーツATを搭載した第2世代スポーティクーペ

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2代目FTOはシルビアのライバルとして誕生

 1994年4月に三菱自動車がデビューさせたスポーティクーペがFTOである。オリジナルFTOはギャランGTOの弟分として、1971年10月に売り出されたモデルであった。4ドアセダンのギャラン系のシャシーを切り詰め、スタイリッシュな2ドアのファストバッククーペとしたものだ。カローラ・クーペやスプリンター、サニー・クーペなどのライバルとして企画されていた。初代FTOのネーミングは、GTクラスのレース用車両としての認定を獲得したことを意味するイタリア語のFresco Turismo Omologatoに由来するものだったのだが、新世代のFTOでは新鮮で若々しいツーリングカーを意味すると言われる、英語のFresh Touring Originationのイニシャルとなっていた。車名を揃えるための苦肉の策である。

 1990年代半ばという時代は、いわゆるパーソナル感覚のスポーティクーペが大流行していた時代で、排気量の大小に関わらず、数多くの2ドアクーペが市場に溢れていた。FTOの直接的なライバルとされたのは、日産シルビア、トヨタ・セリカ、ホンダ・プレリュードなどであった。

主力パワーユニットは滑らかな2LのV6

 曲面を多用したスタイリングのため、見た目には小型に感じられるが、実際にはホイールベース2500㎜、全長4320㎜、全幅1735㎜、全高1305㎜で、3ナンバーサイズとなる。搭載されるエンジンはメインが排気量1998㏄の自然吸気システムを採用した6A12型・V型6気筒DOHC24バルブ。チューニングは200ps/7500rpmのハイパワー版と 170ps/7000rpmのスタンダード版の2種を用意していた。廉価版用に用意したのは1834㏄の4G93型・直列4気筒OHC16バルブでスペックは125ps/6000rpmだった。V6ユニットは、マルチシリンダーらしい滑らかさと刺激的なエンジンサウンドでドライバーを魅了。パワーも十分なスポーツユニットに仕上げられていた。

 駆動方式はフロント横置きエンジンによる前輪駆動で4輪駆動仕様は無い。サスペンションは前がストラット/コイル、後がマルチリンク/コイルとなっていた。ブレーキは4輪ディスクでサーボ機構を持つ。この基本的な成り立ちは、2000年7月の生産終了まで変わることは無かった。

スポーツATの先駆。新世代ミッションを採用!

 FTOのメカニズム上の注目点はオートマチック・トランスミッションにあった。INVECS-IIと名付けられた電子制御4速タイプで、スポーツ走行に対応したマニュアルモードを日本車で初めて採用していた。いわばスポーツATのさきがけである。

 INVECS-IIはDレンジ走行時にレバーを左側のスポーツモード側に倒すとマニュアルセレクトが可能となる仕組みで、手前に引くとシフトダウン、前方に押すとシフトアップが自在に楽しめた。機構、操作法ともに1991年にポルシェが世界で初めて採用したティプトロニックATとほぼ共通である。FTOの誕生までスポーツモデルのトランスミッションはマニュアルが主流を占めていた。しかしFTOの登場以降はスポーツモデルでもATが主流になる。FTOのINVECS-IIはドライバーの意志を忠実に反映するATだった。ATならではのイージーさと、マニュアルミッション並みの自在性を兼ね備えたINVECS-IIはATを革新するメカニズムだった。

 インテリアのデザインは典型的なスポーティクーペのもので、乗車定員は一応4名とはなっているが、後部座席は長時間の乗車には適さず、緊急用か手回り品の置き場と割り切る方が適当だった。事実上は2シーターのパーソナルカーだったのである。今日では常識的なABSやトラクションコントロールシステム、前席のSRSエアバッグなどはメーカーオプションとなっていた。SRSエアバッグが標準装備となるのは、1996年2月のマイナー・チェンジ以降のことであった。

日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた実力車

 第2世代FTOは、パワフルなV型6気筒エンジン、マニュアル操作が可能なATシステム、小ぶりなボディサイズ、剽悍なハンドリング性能など、高性能パーソナルカーとしてはきわめて魅力的なモデルであった。しかし、市場にはライバルが多く、また三菱の販売戦略の拙さもあって、販売台数はデビュー当初から低迷した。そして、デビューから6年後の2000年7月に生産を中止する。ただし、先進的な技術を積極的に採り入れたことなどで、1994〜1995年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したことは、FTOが優秀だったことの証。スタイルや性能は新鮮味を失っていない。