バモス 【1999,2000.2001.2002.2003.2004.2005.2006.2007.2008.2009,2010,2011,2012,2013,2014,2015,2016,2017,2018】

広い室内&荷室スペースが自慢のMRマルチワゴン

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生活を創造する楽しいミニワゴン

 1999年6月に登場したバモスは、便利で楽しい、オールマイティな軽1BOXワゴンだ。前年10月の軽自動車規格改訂に合わせて同時にフルモデルチェンジした軽商用車アクティの乗用車バージョンである。スペイン語で「さぁ、行こう!」を意味するバモス(VAMOS)のネーミングは、1970年にデビューした初代フルオープン・ピックアップからの流用。初代バモスと、2代目バモスは、軽自動車という以外に物理的な共通項はない。しかし、“生活をアクティブにする楽しさに溢れたユーティリティビークル”というキャラクターは共通だった。

 1990年代後半のホンダは、初代オデッセイ&ステップワゴンを皮切りに、“クリエイティブ・ムーバー=生活創造車”をテーマにした、ライフスタイルに広がりを持たせる提案モデルを多数デビューさせていた。2代目バモスもクリエイティブ・ムーバー路線に乗ったクルマの1台で、軽自動車とは思えない豊かなキャビン&ラゲッジスペースでユーザーを魅了する。

ミッドシップ・リアドライブが生む優れたスペース性

 バモスの豊かなスペースは、ミッドシップ・リアドライブ(MR方式)という独自の方式から生み出されていた。スズキやダイハツ製1BOXワゴンが前席下にエンジンを搭載していたのに対し、バモスはリアタイヤのやや前方、ちょうどリアラゲッジスペースの下にエンジンがあった。このため前後席ともにフラットで低いフロアが実現できたのだ。しかもエンジンを超コンパクトに設計することで、ラゲッジフロアはけっして高くなっていなかった。リアエンジン・リアドライブ(RR方式)を採るスバル・サンバーより明らかにラゲッジフロアは低く、一見するとどこにエンジンを搭載しているのか分からないほどだった。

 室内寸法は長さ1690×幅1250×高1270mm。これに後席を立てた状態で長さ1080mmのラゲッジスペースがプラスされるのだ。まさに使い勝手は抜群。後席を畳めば自転車2台が楽々と積み込み可能だったし、前後シートをフルフラット状態にすると身体をゆっくり伸ばしての車中泊も楽しめた。軽自動車のためシートは2列構成で、乗車定員は4名に制限されていたが、スペース的にはシートの3列配置が可能な室内空間の広がりがあった。

コーナリング感覚はあのビートを彷彿

 エンジンのミッド配置は、静粛性面でも大きなメリットを生む。騒音発生源がドライバーから遠い位置にあるため、ライバル各車よりも数段静かだったのだ。エンジン排気量が限られた軽自動車は、交通の流れに乗るだけでもエンジンを高回転まで回す必要がある。それだけにバモスの静粛性は大きな魅力だった。とくに高速クルージング時の静かさは、ライバル各車に大きく差をつけていた。
 走行安定性面でも優秀だった。エンジンなどの重量物が、車両中心部分の低い位置に集中していたため、コーナリング時の挙動も安定していたのだ。適度なキビキビ感を残しながら、しなやかにワインディングロードを駆け抜けるフットワークは、どこかミッドシップ・スポーツのビートを彷彿させた。

 バモスの唯一の弱点は絶対的な動力性能だった。軽自動車とはいえ、規格いっぱいのボクシーデザインで、しかも入念な安全設計を施していたから車重は1トンに近かった。それに対し656ccの直列3気筒OHC12Vユニットのパワー&トルクは46ps/5500rpm、6.0kg・m/5000rpm。ホンダだけにエンジンはスペック以上の実力を秘めていたが、それでも登り坂や高速道路では非力な印象が強かった。実用燃費も普通車と同等でけっして経済的とは言えなかった。

ちょっぴりワルなローダウン仕様、人気沸騰のSパッケージ

 パフォーマンス面での不満は、2000年2月のターボ仕様の追加で解消する。ターボのパワー&トルクは64ps/6000rpm、9.5kg・m/3700rpm。自然吸気の標準仕様と比較して出力で39%、トルクで58%ものアップを実現していた。しかもオートマチックは3速から4速にグレードアップしており、全域で力強く、一段と静かな走りが楽しめた。実用燃費もターボのほうが標準仕様より優れていた。バモス・ターボはコンパクトなサイズと、使い勝手抜群の室内スペースという従来殻の美点に、俊敏さという新たな魅力を加えた。バモスは、あまりに便利で魅力的なため、オーナーが手放さないクルマの筆頭。デビューから長い時間が経過しても、なお現役なのは高い実力のなによりの証明である。

 バモスのラインアップのなかで別格の人気を誇るのが、2001年9月のマイナーチェンジで、ターボと上級版のLタイプに設定されたSパッケージである。車高が15mm低くなる専用ローダウンサスペンションと、専用デザインの13インチアルミホイールで外観を引き締め、内装もブラック基調のシートや、3本スポークステアリングなどで仕上げたドレスアップ仕様だ。Sパッケージは、精悍でちょっぴり“ワルな風情”を発散し、遊びグルマとしてのバモスの性格を際立たせるメーカーオプションだった。4万円高というプライス設定以上の価値があった。