トヨタ・アリスト 【1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997】

走りを極めたハイパフォーマンス4ドア

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Cd値0.30のジウジアーロ・フォルム!

 トヨタのトップ・レンジであるクラウンのコンポーネンツを使いながら、全く新しいモデルとしてアリストが登場したのは、9世代目のクラウンが発表された1991年10月のこと。発表時期が重なり、しかも、エンジンやシャシーなどに共通する部品が使われていたために、クラウンの派生モデルと思われがちだが、クルマとしての方向性は全く異なっていた。車名のアリスト(ARISTO)とは、英語で最上とか優秀を意味している。

 アリストは、クラウンと同じ5人乗り4ドアセダンではあるが、クラウンが快適性と豪華装備を中心にした高級車指向のモデルであるのに対し、アリストはエンジンやサスペンションなどを大幅にチューンアップ、スポーツセダンとしての性格を明確にした。全体に丸味を帯びたスタイリングは、基本デザインをジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタル・デザインに依頼、それを基にトヨタの社内スタッフが手を入れたものだ。ジウジアーロのオリジナル・デザインのティストは比較的巧く残されている。スタイリングが空力的に優れていることは、空気抵抗係数Cd値0.30と言うことからも分かる。

最強版はツインターボで圧倒的パワーを実現

 エンジンは、標準型とスポーツ指向型の2種がある。排気量はいずれも2997㏄だが、標準型に搭載されるのはクラウン・マジェスタと同じ直列6気筒DOHC24Vで、最高出力230ps/6000rpmと大人しい仕様。もう一つのスポーツ指向に搭載されるものでは、「ツーウェイ・ツインターボ」と呼ばれるインタークーラー付きターボチャージャーを2基装備して、280ps/5600rpmの最高出力を発揮する。この280馬力という数値は、当時メーカー間で暗黙の内に決められていたパワーリミットの数値であり、実際にはさらに高出力となるセッティングも可能だったと言う。

 アリスト独自の装備である「ツーウェイ・ツインターボ」は、直列6気筒エンジンに2基のターボチャージャーを装備しておき、必要に応じて2基のチャージャーを統合して可変的に使うものだ。これにより、ターボチャージャーに不可避であった、過給時のパワーの段付き感を少なくすることに成功し、低速域から高速域までスムースな加速感を実現していた。こうしたチューンアップの効果は素晴らしく、最高速度は法律上のリミットである180km/hだが、加速は0→400m加速で14.7秒、0→100㎞/hは6.7秒と言われた。ヨーロッパ製高性能スポーツセダンを凌ぐ高性能となっていた。

充実の先進安全デバイス採用

 高性能を裏付けるための安全装備も当時の水準ではきわめて充実しており、前後ブレーキはクラウン系よりも大型化されており、前が296㎜径、リアが307㎜径のベンチレーテッドタイプとなり、トルセン式のLSD(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)がオプション設定されていた。トランスミッションは4速オートマチックのみ。
 実用的なクラウンよりもスタイルが良く、性能的にも数段上のレベルにあったアリストは、349万2千円から474万円と、絶対的な性能の高さから見ればお買い得な価格で売り出された。

海外ではレクサス・ブランドで販売!

 アリストは、日本よりもむしろ海外マーケットを意識したクルマだった。アメリカをはじめとする海外マーケットではレクサス・ブランドの一員として販売(ネーミングはレクサスGS)され、セルシオ(レクサスLS)とともに高い人気を誇った。アリストの魅力は優れたパフォーマンスとともに、卓越した製造品質。一般的にクオリティの高いトヨタ製品のなかでもセルシオと並ぶ入念な作り込みが特徴だった。外装のボディパネルの仕上げから、内装の細かなスイッチ類にいたるまでプレミアム感覚に溢れ、瑣末なことも含めトラブルは非常に少なかった。欧米ではメルセデスEクラス、BMW5シリーズのライバルとして認識され、ユーザー自身がステアリングを握り走りを楽しむアクティブ層にアピールした。ちなみにトヨタの技術系VIPに最も人気が高かったのもアリストだった。