クイント 【1980,1981,1982,1983,1984,1985】

5ドアボディを持つ革新モデル

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1980年に登場したクイントは、
シビックとアコードの中間に位置するミディアムカー。
ユーティリティの高い5ドアボディと、
新開発1.6Lエンジンで話題を呼んだ。
「日本では5ドアは売れない」というジンクスを覆した最初のモデル、
それが俊敏で快適装備を満載したクイントだった。
ニュージャンルを目指した斬新コンセプト

 1970年代末ころから、ホンダは音楽用語を車名に多く用いるようになった。1978年のプレリュード(前奏曲)に始まり、1980年には5重奏(クァルテット)から派生したクイントを登場させる。さらに、1988年にはコンチェルト(協奏曲)という名のモデルもデビューさせている。
 クイントは、ホンダベルノ店系列の専用車種として、1980年2月に発表された。サイズ的にはシビックとアコードの中間に位置しており、主要なコンポーネンツはシビックとアコード、さらにパーソナルクーペであるプレリュードから流用されている。基本的には、サイズアップされたシビックというところだが、1601ccの直列4気筒SOHCエンジンは新設計であり、2360㎜のホイールベースもシビックやアコードとも異なっていた。駆動方式は前輪駆動である。

走り爽快! パワフルな新開発エンジン

 ボディバリエーションは、2BOXスタイルの5ドアハッチバックの5人乗りただ一種で、モデルバリェーションは、必要十分な装備を備えたTL。タコメーターなどでスポーティに仕上げたTS。そしてパワーステアリングやクオーツ時計、ハロゲンランプなどの豪華装備を持つ上TEの3タイプを用意していた。トランスミッションは全車が5速マニュアルと、無段変速式のホンダマチックが選べた。

 エンジンは排気量1601㏄の直列4気筒SOHCで、ホンダ独自開発による希薄燃焼システムであるCVCCヘッドを備える。圧縮比8.8と2バレルキャブレターを一基備え、90ps/5500rpmの最高出力と13.2kg-m/3500rpmの最大トルクを発揮、TSで875kg、TEでは895kgと十分に軽いボディを最高速度160㎞/hで走らせた。当時の1.6リッタークラスの乗用車としては高性能である。サスペンションはフロントがマクファーソンストラットとコイルスプリング、リアがストラットとコイルスプリングを組み合わせた4輪独立型となっていた。ブレーキはフロントにソリッドディスク、リアはドラムだが、サーボ機構は標準装備であった。

ひとクラス上の装備も魅力ポイント

 高級仕様であるクイントTEに限って装備されるものは、これもホンダの独自開発による車速感応型パワーステアリング、リアサスペンションに付けられるトーションスタビライザー、フルファブリック張りシート、前席大型ヘッドレスト、シートリフターなど。ひとクラス上の快適装備が標準だった。価格はトップレンジのTEでOD付きホンダマチックトランスミッションを装備した場合で121万3千円となる。
 「日本では、5ドアハッチバックのクルマは売れない」というジンクスを覆し、ホンダ クイントはデビュー当初は、なかなかの成功を収めた。シンプルでクセのないスタイルやCVCCによるクリーンなイメージ、ハッチバックゆえの実用性の高さなどが好評を得たのだろう。クイントは、ホンダが本格的な自動車メーカーへ脱皮するシンフォニーだったのかもしれない。

COLUMN
便利な親切設計。斬新コンセプトが支えた善戦
 車名(クァルテット=五重奏)の由来ともなった5ドアHBボディを持つクイントは、1978年11月にプレリュードのデビューと同時に設立された新販売チャネル「ベルノ店」の専売車種として企画された。VWゴルフに匹敵する優れたユーティリティと充実の装備を誇り、なかなかの販売成績を収めた。クイントがデビューした1980年当時、リアゲートを持つHBボディはシビックなどベーシックカーでは市民権を得ていたものの、1.6Lの上級クラスでは一般的な存在ではなかった。上級クラスはオーソドックスなセダンボディが好まれていた。まだまだ“使い勝手”ではなく、“立派に見えること”を重視する時代だった。その中での善戦はクイントの高い実力を物語っていた。