プリンス・ロイヤル 【1966,1967】

天皇や皇族、国賓を乗せた国産の御料車

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国産初の御料車として開発

 日本の御料車の始まりは、1912年(大正2年)3月から使われた英国製ディムラー57.2馬力型である。以後、同じ英国製のロールス ロイス シルヴァーゴースト(1920年)や米国製のピアスアロー(1919年)、さらに御料車としては一番長く使われていたメルセデス・ベンツ 770(1932年)、ロールス ロイス ファンタムⅤ(1961年)などがあった。

 このロールス ロイス ファンタムⅤに代わる御料車として計画されたのが、ニッサン プリンス ロイヤルだった。御料車製作計画は1965年7月に始まり、1967年2月に宮内庁へ第1号車が納入されている。計画開始から完成まで、通常の市販モデルであれば3年から4年もかかるものが、わずか1年7カ月というスピード開発だったことになる。当時の日産と合併する以前の、プリンス自動車技術陣の力の入れ様が、半端なものではなかったことが判ろうというものだ。国産初の御料車が完成した時には、プリンス自動車は日産に合併されていたため、正式な車名は日産プリンス・ロイヤルとなった。基本的な構成は、スチール製ラダーフレームに、やはりスチール製ボディーを組み合わせたセパレートフレーム構造で、エンジンやサスペンションはもちろん、細部に至るまで最高レベルの信頼性を持つように設計されていた。各部の信頼性は、今からおよそ50年以上前の水準とは考えられないほど高い。

大型ボディは室内空間確保のため

 ボディサイズは全長6155㎜、全幅2100㎜、全高1770㎜、ホイールベース3880㎜とビッグサイズであり、車重は3200㎏に達した。防弾仕様ではさらに重くなる。スタイリングは3ボックス型の6ライトリムジンで、縦目4灯式ヘッドライトを採用した当時のプリンス グロリアの雰囲気を持つ。
 インテリアでは、運転席と後部客席の間には固定式のガラス製パーティション(仕切り)があり、従者が座る折り畳み可能な補助椅子もセットされている。前席は革張り、後部座席はウールモケット張りとなっている。これは、馬車の時代からの正式なリムジンのセオリーに則ったものだ。もちろん、エアーコンディショナーは完備され、前席と後席間にはインターホンや伝声管も備わる。

6.4Lの新開発V8エンジンを搭載

 エンジンはロイヤルのために新開発された排気量6373㏄のⅤ型8気筒OHV(W64型、出力260ps/4000rpm)で、トランスミッションはアメリカGM製の3速オートマチック。駆動方式はフロント縦置きエンジンによる後2輪駆動。ブレーキは2系統のサーボ機構付き4輪ドラム。サスペンションは前がダブルウィッシュボーン/コイルスプリング、後が半楕円リーフで吊った固定軸となる。ステアリングはパワーアシスト付きのリサーキュレーティングボール式となっており、高い信頼性を裏付けるものとなっていた。

 御料車として5台、国賓級の送迎用として2台の計7台が造られ、その内一台は特別車(霊柩車)に改造されて昭和天皇大喪の礼に使われた。発表当初から、同型車の市販を求める声は少なくなかったと言うが、一切の市販化計画はなかった。2005年まで御料車として使われたが、トヨタ センチュリー ロイヤルに後を譲って退役している。日本を代表する超高級車として、歴史に残る名車と言って良い。