ユーノス・プレッソ 【1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998】
V6ユニットを搭載した軽快な3ドアクーペ
1989年、ユーノス・ロードスターを擁して日本のマーケットに新風を吹き込んだユーノス店。マツダの5チャンネル化によって生まれた販売チャンネルである。
ユーノス店は、ユーノス ロードスター(1989年9月)を皮切りに、ユーノス100(1989年10月)、ユーノス300(1989年10月)、ユーノス500(1992年2月)、ユーノス800(1993年10月)、ユーノス コスモ(1990年4月)など魅力的なモデルを取り扱っていたが、ロードスター、コスモに次ぐ第三の2ドアモデルとして1991年6月に登場したのが、このユーノス プレッソだ。
プレッソ(PRESSO)は「仲間」という意味を持つイタリア語。「人馬一体」の走りにこだわりロードスターの開発を行ったマツダというメーカーらしく、クルマとドライバーの関係を車名に込めたネーミングと言える。輸出仕様の名称は、MX-3。ロードスターの輸出名のMX-5や、クロノスベースの2ドアスペシャルティのMX-6と同様、マツダの頭文字の「M」とスポーツモデルを表す「X」、そして数字を組み合わせる。このネーミングの手法は、ロータリーの「R」を冠するRX-7やRX-8と同じ構成のネーミングである。
プレッソは2ドア+ハッチバックの、言わば3ドアクーペである。ウィンドウはフロント、サイド(左右1枚ずつ)、リアの4枚が基本だが、リアスポイラー風にデザインされたリアエンドのハイマウントストップランプの下側は切り立ったウィンドウになっている。後席サイドにはウィンドウを持っておらず、キャビンは2+2のシート構成。ボディーサイズは、全長×全幅×全高4215×1695×1310mm。ST182系セリカ(4420×1690×1305mm)より200mm以上短く、AE101系レビン(4275×1695×1305mm)と比べても60mm短いディメンションの持ち主だった。
このプレッソ最大のハイライトは、その心臓部にあった。1.8L V6という世界最小クラスのV6ユニットを搭載してデビューしたのだ。エンジンはK8型1844ccV型6気筒DOHC24Vの新開発ユニットで、アルミダイキャスト製シリンダーブロックを持つ。
ボア×ストロークが75.0mm×69.6mm。ショートストロークによる高回転型の心臓で、140psの最高出力を7000rpmで、16.0kg-mの最大トルクを5500rpmで発揮する。2つの開閉バルブを持つ可変共鳴管と慣性過給の特性を組み合わせ、6段階でトルク特性をコントロールする6ステージVRIS(可変吸気システム)を備えていた。その回転フィールはあくまで滑らか。回すほどに澄みわたる上質なエンジンサウンドとともにマニアを魅了するのに十分なものだった。
プレッソにはこだわった足回りも与えられた。スポーツカー並みの15:1のギア比となるクイックなステアリング、ハイウェイでのレーンチェンジから直進状態に復帰した際にふらつきのないピタっと収まる安定性、フロント、リアともに高い剛性を備えたサスペンション、205/55R15タイヤなど足回りに定評のあるマツダ車のなかでもクラスを超えた機能を奢っている。「思惑通りのジャストステア」とは、カタログの足回り解説のページに踊る見出しだが、高剛性ボディーと組み合わされた鍛え上げた足回りは、プレッソを語るうえでV6ユニットとともに不可欠な要素である。
のちにミラージュ/ランサーの1.6L V6エンジン(1991年10月)の登場で世界最小のV6エンジンというキャッチーな称号は数カ月あまりで奪われることになる。しかし、メーカーはプレッソの走りに徹底的にこだわっていた。販売台数こそ少数派に止まったが、多くの魅力を持つ名車の1台である。