スープラ 【1986,1987,1988,1989,1990,1991,1992,1993】

名車2000GTの伝統を継承したFRスポーツ

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“至上”を意味する3000GT

 1986年2月、トヨタは全く新しい大型GTモデルのスープラ(SUPRA)シリーズを発売した。もともとスープラはスポーティーモデルのセリカXXの輸出名であったのだが、それを国内向けモデルにも拡大採用したのである。スープラとは、ラテン語で“至上”とか“〜を超える“と言った意味で、英語で言えばSuperということになる。
 デビュー当時のカタログの冒頭には、“名車としての誉れも高い夢のクルマ、TOYOTA2000GTがあった。その精神と魂をここに甦らせるTOYOTA3000GTスープラ誕生。スープラ、それは「至上」を意味する”と高らかに謳い、トヨタ2000GTの血統を継承した本格派スポーツモデルであることを宣言していた。マニアからの熱い視線を独り占めしたのは当然の成り行きだった。

伸びやかなロングノーズクーペ

 スープラのボディーは3ドア・ハッチバッククーペ(トヨタではリフトバックと呼んでいた)。それは基本メカニズムを共用する2代目ソアラとの差別化を明確にするためだった。全長4620mm、全幅1690mm、全高1310mm、そしてホイールベース2595mmという堂々たるサイズを持つが、これでもソアラよりはホイールベースで75mm短い。スタイリングはスポーツクーペの文法に忠実な仕上がりで、風洞実験のデータをそのまま形にしたような印象を与えた。フロントグリルは存在せず、バンパーとノーズピースの間、および大型のエアダムスカート下側に開けられた矩形の隙間からラジエターへの冷却風を採り入れる形だ。ヘッドライトは、これも空気抵抗の減少を考慮して、電気モーターによるリトラクタブル式とされた。リアウィンドウは強い傾斜を持ったCピラーにより、巨大な曲面ガラスに見えるが、実は三分割されており、ハッチゲートとして開閉できるのはルーフに続く部分だけだった。全体としては同時期のフェアレディZや初代マツダRX-7などにも似たラインとなった。如何にもトヨタらしい、ソツの無いまとめ方であった。

 5名乗車が可能なインテリアは、どちらかと言えばオーソドックスなデザインとなっている。ソアラでは先進性を強調するために、全車種デジタル表示のメーターとされたが、スープラでは、速度計やエンジン回転計を始め、すべての計器はアナログ表示。デジタルメーターとなるのは、最上級車種の一部だけという徹底振りである。後部座席は、スタイリングのために特にヘッド・スペースはミニマムであり、ちょっと大き目の2+2と考えた方が良い程度である。

国産最強3Lターボパワー

 スープラのモデル・バリエーションは、主にエンジンの違いにより区別された。搭載されるエンジンは、すべて直列6気筒。具体的には3.0リッター1種と、販売の主力となる2.0リッター仕様に3種のエンジンが使い分けられる。
 最上級グレードである3.0GTターボには、直列6気筒DOHC24バルブに電子制御燃料噴射装置と空冷式インタークーラーを持つターボチャージャーが装備され、230ps/5600rpmの最高出力と33.0kg・m/4000rpmの最大トルクを発揮する。当時は量産型国産車としては最強のエンジンと言われた。一方GTを名乗る2.0リッターのDOHC24V系は、ツインターボチャージャー仕様と自然吸気型が用意されており、好みによって選べた。スペックはツインターボ仕様が185ps/6200rpm、24.5kg・m/3200rpn、自然吸気型が140ps/6400rpm、16.5kg・m/3200rpmだ。トランスミッションは5速マニュアルと4速オートマチックが選択出来た。駆動方式は後輪駆動(FR)で、4輪駆動(4WD)仕様の設定は無かった。

先進の4輪ダブルウィッシュボーン式採用

 サスペンションはトヨタ2000GTと型式が同じダブルウィッシュボーン/コイル・スプリングによる4輪独立懸架。ソアラに設定されているエア・サスペンションは採用されていない。ブレーキは4輪ともサーボ機構付きディスク・ブレーキだ。LSD(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)はGT以上のグレードに、電子制御式ABS(アンチ・ブロッキング-ブレーキ・システム)は3.0GTターボにオプション設定されていた。価格は、最もベーシックな2.0Sの200万9千円から、最上級の3.0GTターボの335万5千円まで。

 スープラには、デビューしてから4ヵ月後の1986年6月には、デタッチャブル・ルーフを装備したスープラ エアロトップ仕様が登場。さらに翌1987年1月には輸出用のワイドボディーを国内向けに仕様変更を加えたモデルが登場している。これは前後フェンダーを拡げ、全幅を1765mmとしたもので、ワイドタイヤの装着を可能としていた。
 スープラは、それまでの国産車では考えられなかった大排気量エンジンのモデルが多数登場し高性能を追求した時代を代表する存在。マニアにはもはや懐かしい時代。日本車黄金期に誕生した名車だ。