キャラバン・コーチ 【1986,1987,1988,1989,1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997】

ラグジュアリー&快適性を磨き込んだ完成形

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ワンボックスワゴンの完成形登場!

 1986年9月、日産ワンボックスワゴンの頂点であるキャラバン・コーチ(そして兄弟車のホーミー・コーチ)がモデルチェンジを行い3代目に進化する。キャラバン・コーチはワンボックスならではの広い室内空間に3列シートを配置し、豪華な装備を満載することで高級乗用車の新たなカタチを提唱したパイオニアだった。3代目は一段とラグジュアリー&快適性を磨き込み、ワンボックスワゴンの完成形に近づいた。

 3代目はスタイリングがスマートになっていた。コマーシャルバンが主役のためスペース効率最優先のボクシーデザインであることは先代と共通だったが、フロントウィンドーを若干寝かし、サイドウィンドーの大型化&フラッシュサーフェス化の徹底で格段にスタイリッシュに変身したのだ。さらにバンパーの大型化によって逞しい印象を身に付けたのもプラスポイントだった。ボディのスリーサイズは上級モデルのシルクロードリムジンでも全長4520×全幅1690×全高1955mmと5ナンバーサイズ。印象としては大きなクルマだったが意外にコンパクトで取り回しに優れていた。ちなみに最小回転半径は4.8mと抜群に小回りが利いた。

メカニズムは先代を大幅リファイン版

 スマートさを増したスタイリングに対し、シャシー関係は基本的に先代用をリファインしていた。2375mmのホイールベースやフロントがダブルウィッシュボーン式、リアが半楕円リーフによるリジッド式の足回り形式はそのままである。先代でもキャラバンのフットワークや乗り心地はクラス平均を大きく上回ると高い評価を受けていた。それだけにあえて変える必要がなかったのである。しかし前後サスペンションにロールを最適化するスタビライザーを設定し、シルクロードリムジンにはダンパーの減衰力をソフトとハードに2段階に切り替えられるアジャスタブルダンパーを組み込むなど数々のリファインを加えていた。とくにアジャスタブルダンパーは、乗車人数に合わせて荷重が大幅に変化するワンボックスワゴンにとって便利な機能だった。1名乗車などの軽荷重時にはソフト、フル乗車の重荷重時にはハードを選ぶと最適な乗り心地が選べたからである。

 パワーユニットも先代のリファイン版だった。経済性に優れたディーゼルと、静粛なガソリンの2シリーズから選べたが主力はディーゼル。人気の高かった1952ccのLD20T・II型・直4OHCディーゼルターボは縦型グロープラグの採用と燃焼室の改善、さらにメタル幅の縮小などによってパワーとトルクをアップしていた。79ps/4400rpm、17.0kg・m/2400rpmのスペックはクラス水準を抜き、静粛性も副射口付燃焼室やシリンダーブロックの剛性アップ、カムシャフトのベルト駆動化などによって引き上げていた。一方、排気量1952ccのZ20S型・直4OHCガソリンユニットも新たに電子制御キャブレターを採用しドライバビリティを引き上げたのが光った。出力/トルクは91ps/5200rpm、15.2kg・m/3200rpmである。トランスミッションはディーゼル、ガソリンともにフロアシフトの5速マニュアルと4速オートマチックが組み合わされた。

最上の時間を約束した豪華な室内

 3代目キャラバン・コーチの個性は、なんといっても豪華さを増した室内空間にあった。ゆったりとした3275mmの室内長のなかに座り心地のいい上質な3列シートを備え、印象はまさにくつろぎの応接間。ドライブを至福のひとときにする工夫が満載されていた。シルクロードリムジンのシートは1列目2名掛け独立、2列目3名掛け分割、3列目3名掛け一体の組み合わせで、フルフラットはもちろん、2列目の回転対座&システムラウンジなど多彩なアレンジが可能だった。3列目を折り畳めば広大なラゲッジスペースが出現したし、シート自体の入念な設計により長時間座っても疲労が最小限だったのもポイントだった。空調も気が利いていた。フロントエアコンとオーバーヘッド配置のツインエアコンをメーカーオプションとして設定し、どの席に座っても快適さを実感できるシステムとしていたのだ。さらに吹き出し口をボディサイドに埋め込んだビルトイン式のリアヒーターも標準装備した。

 この他、フロントがチルトアップ式、リアがスライド式のツインガラスサンルーフ(プラネタルーフ)や電動カーテンなどきめ細やかな装備の数々がパッセンジャーをもてなした。上級モデルへの先進のデジタルメーター採用もドライバーにとっては嬉しいポイントで、最上級のワンボックスワゴンをドライブする満足感を与えた。
 キャラバン・コーチは1988年10月にTD27T型ディーゼルターボ(100ps/22kg・m)やVG30E型ガソリン(140ps/23kg・m)のパワフルな心臓を得て走りをリファインし、1997年にエルグランドにバトンタッチするまで日産のフラッグシップワンボックスとして高い人気を誇った。現代のミニバン人気を準備した偉大な先達である。