トヨタ・セリカXX vs 日産フェアレディZ 【1978,1979,1980,1981,1982,1983】
“XvsZ”の新世代上級スペシャルティ対決
世界で最も厳しいレベルの数値が課された昭和53年排出ガス規制に対し、エンジンの改良や三元触媒の装着などで克服したトヨタ自動車工業と日産自動車の両巨頭。両社は、1970年代に入って顕著になったユーザーニーズの多様化、とりわけスペシャルティカーの上級化の要望に応えるための新型モデルの開発に精力を注いだ。
新世代の上級スペシャルティの開発に際し、省燃費や低公害といった社会的要請を満たすのと同時に、より高度なパフォーマンス、具体的には“1980年代に向けたスポーティカー”にふさわしい動力性能と走行性能、さらに快適性・居住性・安全性とが高いレベルで融合した1台であることが求められた。この要求に対し、トヨタ自工は次期型セリカの新たな上級バージョンで、日産はフェアレディZの刷新で応えようとした。もちろん、主力市場となるアメリカ市場の嗜好を存分に加味することも忘れなかった。
先陣を切ったのはトヨタ自工だった。1978年4月、A40型系セリカをベースとする“グランドツーリングカー”MA46/45型系「セリカXX」を市場に放つ。車名に“X”を入れたのは、最大のライバルとなるフェアレディ“Z”を意識してのことだった。
ボディについてはエアロダイナミクスを駆使したセリカLBをベースに、フロントノーズを210mm、ホイールベースを130mm、全幅を15mmほど拡大。同時に、落ち着きのある角型ヘッドランプや2000GTを彷彿させるT型グリル、横長で立体感のあるリアコンビネーションランプ、七宝製の“XX”エンブレムなどを装着し、上質でスポーティなスタイリングに仕立てた。インテリアに関しては、高性能車にふさわしい豪華で高級な雰囲気を演出。ファブリックやコノリーレザーのシート地にランバーサポートアジャスター付きの運転席、オートエアコン/オートドライブ/パワーウィンドウ/リモコンミラーなどのアイテムを装備する。さらに、エンジンルームとキャビンの間の遮音材を増やすなど、静粛性の向上にも力を入れた。
搭載エンジンは独自の三元触媒方式により昭和53年排出ガス規制に適合させた4M-EU型2563cc直6OHC(140ps/21.5kg・m)とM-EU型1988cc直6OHC(125ps/17.0kg・m)という2機種を設定する。組み合わせるミッションは5速MTと4速ATを用意。同時に4輪ディスクブレーキやリアスタビライザー、70偏平のスチールラジアルタイヤ(HR規格)などを組み込んで高性能化に対応する。
セリカXXの登場から4カ月ほどが経過した1978年8月、2代目となるS130型系「フェアレディZ」が発売される。キャッチフレーズは“Z ZONE”。大ヒットした初代の伝統を受け継ぎ、そのうえで進化させたことを主張するコピーだった。
外装に関しては好評だったロングノーズ・ショートデッキのフォルムを基本に、空力特性のいっそうの向上と洗練度のアップを図る。フロント部はロングノーズエンドやフード一体型バンパーを採用。リア部はラバー付き大型バンパーや角型テールランプなどを装着してダイナミックなスタイルを創出した。ボディタイプは先代と同様、2シーター(ホイールベース2320mm)と2by2(同2520mm)を用意する。
エンジンのラインアップについては、先代から採用しているL20E型1998cc直6OHC(130ps/17.0kg・m)に加え、従来は北米仕様に搭載していたL28E型2753cc直6OHC(145ps/23.0kg・m)を国内仕様にも設定する。また、2エンジンともに最新の日産排出ガス清浄化システムである“NAPS”を組み込み、昭和53年排気ガス規制をクリアした。サスペンションに関してはフロントが従来と同形式のマクファーソンストラット式を採用するが、リアは従来のトランスバースリンクによるストラット式からセミトレーリングアーム式に一新する。ステアリングギアの改善にも力を入れ、操舵時の剛性感のアップや摩擦抵抗の低減などを実施。また、ドイツのZF社と提携して開発したインテグラルパワーステアリングも設定した。
開発陣は居住空間の快適性向上についても努力する。室内幅は2by2が従来比75mm、2シーターが同30mmほど拡大。さらに、インストアンダーカバーや一体成型ダッシュインシュレーターなどを装着してパワートレイン関係の騒音振動対策を施す。空調に関しては室内空気流の見直しや換気量のアップ、大容量ヒーターコアシステムとブロアモーターの採用などで理想的な冷暖房性能を追求。オートエアコンも新開発した。シートは2シーターがスポーティなハイバックタイプで、2by2が豪華なローバックタイプ。運転席にはシートリフターおよびランバーサポートを装備した。
新世代の上級ハイウェイクルーザーに昇華したセリカXXとフェアレディZのライバルは、デビュー後も着実に改良を図っていく。セリカXXは1980年8月にマイナーチェンジを敢行し、リアサスペンションのセミトレーリングアーム化や5M-EU型2759cc直6OHC(145ps/23.5kg・m)への換装などを実施。一方のフェアレディZは1980年11月にガラス製の脱着式ルーフを組み込んだ“Tバールーフ”を設定し、1982年10月になるとターボチャージャー仕様(L20ET型エンジン)をラインアップに加えたのである。