ナディア 【1998,1999,2000,2001,2002,2003】

次世代乗用車像を提示した2列シート車



次世代の乗用車を目指して意欲的に開発

 1990年代後半は、各メーカーともに次世代セダンの開発に積極的だった。トヨタが1998年8月に市場投入したナディアもその1台である。ナディアの「カジュアルからフォーマルまで、多様なライフシーンに応えられるユーティリティが特徴的な次世代乗用車」という開発コンセプトは、まさにキャラクターを象徴していた。ラージセダンの後席レッグスペースと、ワゴンのラゲッジスペースを使い分けられるマルチユースフルなクルマ、それがナディアだったのだ。セグメント的にはちょうどコロナ・プレミオあたりと同格だった。

 ナディアは全長こそコンパクトながら、ミニバンのイプサムをベースに開発したモデルだった。2735mmのホイールベースは両車共通で、フロントがストラット式、リアがトーションビーム式の足回りもオーバーラップする。2台の最大の相違点はナディアが2列シート、イプサムが3列シートを採用していた点である。ナディアはワンモーションのBIGキャビンスタイルの内側にゆったりと2列のシートを配置することで、従来のセダンでは真似のできない多用途性を実現した点がユニークだった。

リムジンの広さとワゴンの実用性を兼備!

 ナディアの室内長はふたクラス上のクラウンに匹敵する1960mm。室内高も1245mmと十分だった。しかも50対50分割機構を備え、リクライニングも可能だった後席には、180mmの前後スライド機構を組み込んでいた。通常状態でも後席スペースは広かったが、後方に目一杯スライドすると足元のゆとりはリムジン並みに広がった。一方、前方にスライドするとたっぷりとした荷室スペースを確保出来た。

 もちろん後席は折り畳み可能で、フラットで広大なラゲッジルームにアレンジすることも自在だった。それだけではない。上級版のSセレクションでは停車時に前席を回転させた対座レイアウトが楽しめた。前席を回転させた対座レイアウトでは、室内はフレンドリーなコミュニケーションスペースに変身。アウトドアシーンではワンボックスワゴンと同等の遊びのベース基地となった。ナディアはまさに従来型セダンとまったく違うユーティリティを持った次世代型乗用車に相応しい存在だったのだ。

高効率のガソリン直噴ユニットを設定

 走りの面も先進的だった。上級グレードには空燃比50対1の超希薄燃焼を可能とし、高効率化で優れた燃費(10・15モード14.2km/L)を実現したガソリン直噴方式の3S-FSE型ユニットを搭載。レギュラーガソリン仕様ながら145ps/6000rpm、20.0kg・m/4400rpmのハイスペックと相まって俊敏で地球環境に優しい走りを実現していた。

 ステアリングギア部にローラー式のラックガイド、高精度ピニオンギアを採用したことでステアリング剛性を高め、優れた操縦フィールを実現したことも特筆ポイントだった。駆動方式はFFを主体に、アクティブトルクコントロール式の4WDを設定。4WDは通常状態では燃費に優れたFFに近い駆動力配分としながら、雪道など滑りやすい路面になると前後輪を最適なトルクを配分する電子制御カップリング式リアデファンレンシャルを採用していた。

 ナディアは次世代型乗用車として意欲的な内容を持っていた。しかし市場の反応はやや醒めたものだった。確かに通常のセダンと比較するとユーティリティは際立っていた。しかし3列シートのミニバンと比較すると中途半端な印象があったからだ。ナディアの定員は2列シートのため5名。子育て世代には3列シートで定員7名のミニバンが魅力的に映った。チャイルドシートの設置が必須となる子育て世代の場合、定員の余裕はファミリーカーを選ぶ場合の大きな要素だったのだ。ほぼ同価格で3列シートのミニバンが購入可能であれば、そちらを選んだのである。

 一方、既存のセダンのユーザーにはナディアのカジュアルなスタイリングがなじめなかったようだ。既存の枠組みを突き崩すには、相応の時間と努力を必要とする。ナディアは魅力的な次世代型乗用車の先駆だった。しかし決定版として定着するにはちょっぴり力が不足していた。