NXクーペ 【1990,1991,1992,1993,1994】

斬新スタイルの伝統クーペ



幕張でプロトタイプがデビュー

 1989年10月26日から開催された第28回東京モーターショーは、千葉県幕張に完成した幕張メッセに会場を移して初めて開催されたモーターショーとして記憶に残るイベントであった。このモーターショーで、日産自動車が展示したプロトタイプの中に、小型実用車である日産サニーをベースとした4シータークーペがあった。ニッサンNXクーペと名付けられた黄色のボディカラーをまとったそれは、翌1990年1月11日に日産サニーと共に発表されるNXクーペそのものだった。
 NXクーペの基本部分はサニーと共用している。それは、フロアパンやサスペンション、エンジンのラインアップ、モノコックボディの骨格にまで及び、異なるのはボディ外板とハッチバックのドアが付けられていることくらいであった。しかし見た目の印象はまったく異なった。従来からサニーにはクーペボディが設定されていたが、歴代モデルはどれもセダンをベースにしていたことが明白だった。しかしNXクーペはクルマの専門家以外には、まったくの独立車種に見えたに違いない。

カリフォルニア生まれの造形

 NXクーペのスタイリング・デザインは、アメリカのカリフォルニア州サンディエゴにある日産デザイン・インターナショナル(NDI)が担当していた。基本的なスタイリングはスケールダウンしたフェアレディZと言えるものだ。これは、NXクーペがそれまでのパルサーNX(日本名エクサ)と交代してアメリカ市場への進出を狙ったモデルだったからだと言われている。グリルレスのフロントエンドやルーフの一部を取り外すことができるTバールーフなどが、アメリカンデザインであることを物語っている。ちなみにこの時代、アメリカではフルオープンは安全基準の関係で一般的ではなかった。

新世代DOHCの高い実力

 NXクーペが搭載するエンジンは3種類。いずれも新世代の直列4気筒DOHC16Vであった。1.5リッター、1.6リッター、1.8リッターの3種があり、最強エンジンは1800タイプSに搭載されるDOHC4バルブの排気量1838ccのSR18DE型で、電子制御燃料噴射装置と圧縮比10から140ps/6400rpmの最高出力と17.0kg・m/4800rpmの最大トルクを得ている。ターボチャージャーなどの過給装置は装備されず、当然ながらセダン仕様に存在するディーゼル・エンジンも搭載されない。グレードはセダン系ほど多くはなく、3種のエンジンとTバールーフの有無、サスペンションのセッティングの違いで7種のバリェーションが揃えられていた。

 エンジンをフロントに横置きするのはセダン系と同様だが、エンジンフードを低くするために、エンジンルーム内の補機類の配置やパイピングなどは若干変えられた。駆動方式はFF。トランスミッションはマニュアル型5速に加えて、4速オートマチック・トランスミッションも選べた。サスペンションは前・マクファーソンストラット/コイル・スプリング、後・パラレルリンクストラット/コイル・スプリングとなる。ブレーキはディスク/ドラムの組み合わせ。電子制御式のABSがオプション設定となっていた。車重は1100kg前後と軽かったので、スポーティークーペとして十分以上の性能を発揮した。価格は、最廉価モデルのNXクーペ1500タイプAが113万6千円(5MT)で、最豪華モデルの1800タイプS・Tバールーフでも181万5千円となっていた。