カローラ 【1991,1992,1993,1994,1995】

設計者の良心が結実した史上最も贅沢な大衆車

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ジャストサイズの高級車、7代目の誕生

 後にバブル景気と呼ばれる時期に開発され、1991年6月にデビューした7代目カローラは、歴代モデルで開発に最もお金を掛けた“贅沢なカローラ”だった。この時期、カローラは世界に誇る1台に成長していた。月間生産台数は10万台規模になり、世界130カ国以上で販売。1990年8月には累計生産台数は1500万台を突破した。

 7代目カローラは4ドアセダンと2ドアクーペのレビンの2シリーズで乗用車のバリエーションを構成。4ドアセダンのボディサイズは全長4270×全幅1685×全高1380mm。レビンは同4275×1695×1305mm。ホイールベースはともに2465mm。ボディサイズは両ボディとも旧型よりひとまわり拡大された。
 スタイリングは各ボディパネルを張りのある曲面で仕上げたラウンディッシュ形状。空気抵抗を低めたフォルムで仕上げていた。印象的なのは高い質感である。両ボディとも組立精度は最高レベルで、各ボディパネルの隙間は最小。塗装の滑らかさ、艶も超一級品といえた。その仕上がりは大衆車レベルを超え“ジャストサイズの高級車”と表現するのが適当なほどだった。

 内装も同様だった。インパネはセダン、レビンともに大型のメータークラスターを持つ立体形状。上質なパウダースラッシュ仕上げが施されていた。シートは大型サイズでクッションに厚みがり、乗り込んだ瞬間に“いいクルマ”であることが実感できる雰囲気にまとめられていた。
 装備も充実しており、4ドアセダンの上級モデルとなるSE-Gグレードではオートエアコン、プッシュ式空調コントロール、カセット一体AM/FM電子チューナー、チルト機構付きパワーステアリング、パワーウィンドー、集中ドアロック、電動リモコンドアミラー、運転席パワーシート、オートライト、集中ドアロックを標準装備。デジタルメーターやSRSエアバッグ、ライブサウンドシステムなどもオプションで設定していた。
 レビンも充実した装備は同様で、上級グレードのGTアペックスではセダンには設定のなかった本革シートを用意する。

ガソリン全車DOHC+電子制御インジェクション搭載

 メカニズムにはトヨタの最新技術が投入された。パワーユニットは4ドアセダンが5種。ガソリンエンジンはスポーティ仕様の1.6ℓ4A-GE型が直4DOHC20V(160ps)、メイングレード用の1.6ℓ4A-FE型(115ps)、1.5ℓ5A-FE型(105ps)、1.3ℓ4A-FE型(100ps)は直4DOHC16V。燃料供給装置はすべて電子制御インジェクションを組み合わせた。経済性を重視したディーゼルは2ℓ2CⅢ型(73ps)である。トランスミッションはMT仕様がすべて5速。ATは4速と3速タイプをグレードにより使い分けていた。駆動方式はFFと4WDが選べた。

 一方、レビンのパワーユニットは4種。すべてガソリン仕様でトップグレード用4A-GZE型が直4DOHC20Vスーパーチャージャー(170ps)、主力となる4A-GE型は直4DOHC20V(160ps)、その他4A-FE型直4DOHC16V(115ps)と、5A-FE型(105ps)をラインアップ。燃料供給装置はすべて電子制御インジェクション仕様で、トランスミッションは5速マニュアルと4速ATの2種。駆動方式は全車FFだった。

すべてに妥協なし!目指したのは100点カローラ

 サスペンションは4ドアセダン、レビンともに前ストラット、後ストラットの組み合わせ。レビンの一部グレードには電子制御ダンパーコントロールのTEMSや、フロントサスペンションにキャンバーコントロールアームを追加したスーパーストラット仕様を設定する。
 走りは全車がパワフル&スムーズだった。4ドアセダンでは静粛性と滑らかな加速が、レビンではキビキビとしたフットワークと胸のすく瞬発力が味わえた。ボディ剛性が高まったことにより欧州車に匹敵するしっかり感と安定性を獲得していたのも印象的だった。

 7代目は、細部までトヨタの良心が息づいた傑作だった。重要回路の配線ハーネスには金メッキ端子を採用する。これについて当時の開発担当者は「金メッキ端子はロングライフを考えたもの。カローラは国内で使用後も海外に中古車として輸出され長く愛されている。それを考慮して徹底的に信頼性にこだわった」と説明していた。カローラは80点主義のクルマと一般的には言われる。しかし7代目は大衆車の価値を徹底的に高めた、妥協のない“100点主義”のカローラだった。

徹底したロングライフ設計。“信頼のトヨタ”を象徴

 7代目カローラは、通常のクルマの基準を遥かに越えたロングライフ設計が盛り込まれていた。防錆鋼板の使用はボディだけでなくシャシーにまで及び、排気管、ワイパーアーム類はオールステンレス製。これは長期間に渡って錆を防ぐための処置だった。さらに信頼性を高めるためスピードメーターはケーブル式から電気式に変更。メーター照明バルブの超寿命化やEFI(電子制御燃料噴射装置)をはじめとする重要回路への金メッキ端子の採用など、細部までロングライフ設計は徹底していた。

 1990年初頭には、すでに日本車は信頼性の高さで評判を得ていた。その評判は7代目カローラでさらに盤石のものとなった。長く快適に乗れるクルマを目指した7代目カローラは、世界じゅうで好評を獲得する。