スプリンター 【1995,1996,1997,1998,1999,2000】

歴史を紡いだ伝統モデルのフィナーレ

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コストを低減し実用性を追求した意欲作

 スプリンターは、1995年5月15日、兄弟車であるカローラ系、そしてスポーツモデルのトレノとともにフルモデルチェンジを受け、8代目へと移行した。この110系の型式を持ったスプリンター&カローラの開発テーマは、「ベストコンパクトカーの創造」。扱いやすいサイズや高いクオリティを維持しながら、省資源、省エネルギーなどを追求。価格や維持費も抑えてTCO(トータル コスト オブ オーナーシップ)に最大限の配慮を施した。TCOは、クルマの場合、購入価格から売却時の価格を除いた金額にガソリン代などの維持費を加えた総費用を指し、価格が安く、燃費に優れ、信頼性が高いほど優れているというもの。バブル景気の崩壊後、日本経済の低迷を反映したコンセプトが設定されていたと見ることもできるが、コスト面の負担が少なく、品質にも優れるモデルは小型車の王道であることもまた事実である。

 セダンのボディサイズは、全長4310mm×全幅1690mm×全高1385mm。先代に比較して、20mm長く、5mmワイドで10mm背が高いというスペックで、ボディーサイズに関しては大きな変化のないモデルチェンジとなった。ホイールベースは2465mmで先代と同スペックだ。セダンはセンターグリル風のフロントマスクを採用し、カローラと比較して洗練された印象にまとめたのが特徴。サイドビューは従来のスプリンターのイメージを踏襲する6ライトのウィンドウ構成を取り入れていた。また、大型の無塗装パーツが、バンパーからサイドプロテクションモールへとボディを一周していたが、これは補修時の経済性とリサイクル性を考えた結果だった。

燃費を大幅改善した1.5リッターユニットが主力

 セダンの搭載エンジンは、FFモデルが1.3リッター(88ps)、1.5リッター(100ps)、1.6リッター(115ps)のガソリンエンジン、そして2リッターのディーゼルエンジン(73ps)の計4ユニットを用意。4WDモデルは、1.6リッターガソリンと2リッターディーゼルを搭載した。3つのガソリンエンジンは、いずれも直列4気筒のハイメカツインカムで、主力となるのは1.5リッターの5A-FE型。1498cc直列4気筒DOHC16Vで、100ps/5600rpmの最高出力と、14.0kg-m/4400rpmの最大トルクを発揮した。10・15モード燃費はMT18.8km/L(AT16.0km/L)。ATの数値は従来の12.8km/Lから16.0km/Lにアップされ、燃費性能が飛躍的に向上していた。

 室内は、直線的なインパネデザインの採用や、ルーフまわりの形状の見直しなどを実施。スペックとしては、室内幅が15mm、室内高が15mm拡大された。シート形状の進化や面圧分布の最適化などでクオリティアップも実施。リアシートのヒップポイントを従来より5mm高めて、後席パッセンジャーの快適性をアップするなど細かな部分にまでこだわった質の高いキャビンを創造した。

トレノはNA165psの強心臓を搭載

 セダンと同時にフルモデルチェンジを受けたトレノは、内外観の一新とともに、エンジンラインアップをNAのみに絞った点が改良の大きなメニューであった。それまでのスーパーチャージャーユニットがなくなり、筆頭は1.6リッターの4A-GE型に。リファインが施されたこの新たな4A-GE型ユニットは、従来同様、1気筒あたり5バルブを採用した1587cc直列4気筒DOHC20Vで、最高出力165ps/7800rpm、最大トルク16.5kg-m/5600rpm。最高出力は従来に比べて5psのアップで、先代のスーパーチャージャー仕様の170psに迫る数値にまで引き上げられた。スーパーストラットサスペンションの用意のほか、ヘリカルLSDや2ウェイエキゾーストコントロールのマフラーなども投入し、ポテンシャルをアップ。搭載エンジンはそのほか、1.5リッター(100ps)と1.6リッター(115ps)のハイメカツインカムを用意した。グリルレスのフロントマスクやボディーの随所に取り入れた直線デザインによってシャープな印象を際立たせたエクステリアや、シンプルながら走りを意識させたコクピットデザインなども魅力となった。

 1995年にデビューした8代目スプリンターおよびカローラ系列では、シリーズにおいて軽量化を実施。セダンでは最大50kg、クーペでは最大70kgの軽量化を実施した。
 1968年に産声を上げたスプリンターだが、この世代を最後にトヨタのラインアップから姿を消すことになった。ディーラー網が異なるカローラとともに歩みながらも独自の個性で輝き続けたスプリンター。ディーラー系列という選択肢ではなく、積極的にチョイスする意味のあった名車であった。