ファミリア 【1985,1986,1987,1988,1989】

磨き込みで進化した2代目ベストセラーFF

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先代イメージを踏襲した 攻めのモデルチェンジ!

 1984年5月、マツダは正式社名を東洋工業からマツダ株式会社に変更する。社名とブランド名の一体化は、従来以上の創造的なクルマ作りで国際派自動車メーカーを目指すという決意表明だった。新生マツダのファーストモデルが1985年1月に登場したファミリアだった。ファミリアとしては通算6代目、FFとしては2代目だった。
 6代目は大ヒットを記録した先代モデルのイメージを踏襲。実力面を徹底的にリファインしていた。各部はゼロから再設計され、歴代ファミリアの伝統である信頼性と高い基本性能を磨き込んでいた。ボディタイプは先代同様3ドア&5ドアハッチバックと4ドアセダンの3種。ホイールベースは先代より35mm長い2400mmで、ボディサイズは全長と全高がそれぞれ15mm拡大している。

 キャビンは前後席ともに身長180cmのパッセンジャーがゆったり座れることを目標に構築された。ホイールベースの35mm拡大はすべて室内空間の増加に充てられ、VWゴルフなど欧米のライバルと比較しても遜色のないキャビンを誇った。広さとともに細心の注意が払われたのが質感だった。視覚的にはもちろん、スイッチの操作感や各部の触感を含めて徹底的な作り込みを実施していた。インスツルメントパネルに使われる樹脂パーツの表面仕上げや各部の合いは、とても大衆車とは思えないレベルを達成。従来のマツダ車のイメージを覆した。重厚なドア開閉音もドイツ車を彷彿させた。

走ると即座に分かった、高い完成度

 高速走行時の安定性や燃費に直結するエアロダイナミクス性能も根本的に見直している。ボディ各部のフラッシュサーフェス化やフロア面を含めた形状リファインによってクラストップとなる0.35のCd値を実現する。6代目ファミリアは高速走行時にも不快な風切り音が少なく、スピードの伸びが思いのほかいいクルマだった。これはエアロボディの効果だったに違いない。

 正直なことを言うと6代目のスタイリングは基本モチーフが先代モデルと共通だったため、新鮮な印象は薄かった。ライバルのシビックやカローラと比較して保守的な印象さえ受けたものだ。しかし内容的には6代目は十分にアバンギャルドな存在だった。室内の入念な作り込みといい、乗るとその素晴らしさが実感できるクルマだったのである。

個性に合わせて6種の足回りを用意

 6代目のファミリアは“熟成のファミリア”だった。その証明が走りの個性に合わせた6種の足回り。サスペンション形式自体は全車とも4輪ストラット式ながら、スタビライザーとダンパーの設定を合計6種も用意し、エンジンやグレードの性格ごとに使い分けたのだ。マニュアルミッションとAT車では設定を変えるほどのキメの細かさで、とくにスポーツ仕様のXG-Rには、ノーマル/クルーズ/スポーツの3モードが選べる減衰力可変ダンパーを採用。俊敏なフットワークでファンを魅了した。

国産初のフルタイム4WDターボの誕生

 パワーユニットは当初4タイプが設定された。基本的に従来モデルからの大幅改良型でベーシック仕様がキャブレターを組み合わせた1296cc(74ps/10.5kg・m)。主力となる1490ccは3種のチューニングが選べた。もっともパワフルなのがターボチャージャー版でスペックは115ps/16.5kg・m。パワーと燃費のバランスを重視したのEGI(電子制御インジェクション)版は95ps/12.6kg・m。一般的なキャブレター版は85ps/12.3kg・mを発揮した。トランスミッションは4速と5速のマニュアルと、3速オートマチックをグレードに応じて使い分ける。どのパワーユニットも十分なパフォーマンスの持ち主で、先代と比較すると高回転時の静粛性が大幅にリファインされていた。1985年7月には1720ccのディーゼルが追加され、優れた燃費で経済派ユーザーのニーズに応えた。

 異色の存在だったのが1985年10月に登場した、国産車初のフルタイム4WDターボのGT-Xである。遊星ギアを用いたセンターデフ式のフルタイム4WDメカニズムと140ps/19kg・mの強力パワーを誇る新開発1597ccのDOHC16Vターボをドッキングしたピュアスポーツで、路面状況を選ばない圧倒的な速さが印象的だった。フルタイム4WDターボはWRC(世界ラリー選手権)にも積極参戦し、1987年のスウェディッシュラリーでは総合優勝を果たす。ファミリアがその高い実力を世界に証明した瞬間だった。