R2L 【1971,1972】

クリーン&トルクフルな水冷エンジン搭載車

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水冷新世代エンジン車の登場

 1969年8月に登場した名車スバル360の後継車、R2は積極的なモデル追加と改良で完成度を高める。1970年4月にスポーツモデルのSSとスポーティデラックスがデビュー。同年10月には豪華仕様のGLが加わり、さらに1971年2月にフロントマスク形状を変更。そして10月には水冷エンジンを搭載したLシリーズが設定された。

 R2の変化のなかでもLシリーズは意義深いモデルだった。伝統の空冷エンジンから水冷エンジンへの変更は、厳しさを増す環境・排気ガス規制への対応を目指したものだったからだ。Lシリーズには、将来に備えたクリーンな次世代水冷エンジンの先行搭載モデルという意味合いが込められていた。

 R2・Lシリーズは、従来からの空冷エンジン搭載モデルの上級バージョンとして設定された。バリエーションはカスタムLとスーパーLの2グレード構成。ともにリクライニング機構付きハイバックシート、時計、ライター、オーディオなどが装備され、カスタムLでは熱線入りリアウィンドウやステアリングロックも標準だった。

新たな心臓はパワフルで静か、そして温かい!

 Lシリーズが搭載する水冷エンジンは、空冷式と共通の356ccの排気量から32ps/6000rpm、4.1kg・m/5000rpmを発揮する2ストローク2気筒ユニット。空冷エンジンと比較してトルクが0.3kg・m太く、しかも発生回転数が500rpm低くなっているのが特徴だった。Lシリーズは中速域で空冷エンジン以上にねばり強い性格が与えられていた。

 排気ガス対策としては、アイドルリミッター機構の搭載によりアイドリング時のCOの排出を低く抑える。さらに、キャブレター内で発生する蒸発ガスをクローズドベント(密閉式)とすることで解消。燃料蒸発制御装置とともに万全のシステムとしていた。

 水冷エンジンは静粛性も特徴だった。シリンダー周囲に配置された冷却水路が、エンジン音を効果的に吸収したのである。通常走行でもエンジンの高回転域を使用する軽自動車にとって、エンジン音の低下は大きなメリットをもたらした。特に高速走行時の静かさには大差がついた。

 ラジエターはフロントトランクルーム内の右側に配置され、冷却には電動ファン装置を採用する。電動ファンは、水温が92度になると作動しオーバーヒートを防ぐ。常時作動するシステムではないので静粛性と効率に優れていた。冬場のヒーター性能が十分なのもユーザーにとってのメリットだった。空冷エンジンは熱源としてエンジン熱しかないので、安定したヒーター能力に欠けていた。対して水冷エンジンは常時80度以上に達する冷却水が熱源として利用でき、強力なヒーター性能が期待できた。しかもLシリーズでは、冷却水をキャブレターの予熱にも利用。冬期の始動性の改善とウォーミングアップ時間の短縮も図っていた。

大人のR2として高評価を獲得

 スバルR2Lシリーズは、ユーザーフレンドリーな気配り装備が満載だった。夜間のラジオ、ライター、ヒーター調節を楽にするグリーンのイルミネーションランプや、当時の軽自動車の高速道路での制限速度80km/hをオーバーすると鳴る警告ブザー、さらにトランクフードが完全に閉じていない状態でキースイッチをONにすると音が鳴り注意を促した。ちなみにトランクスペースはゴルフバッグならハーフセットで2個収納可能。空冷モデルと比較するとLシリーズはラジエターの配置によりやや狭くなっていたが、それでも独立したトランクの存在は便利だった。
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 外観は、ラジエターの配置に伴いフロントマスク形状をリファイン。デザインは一段とハンサムな印象になる。室内では水温計と、内外気切り替え式のヒーター調節スイッチを追加していた。

 Lシリーズは、R2の美点である広い室内空間と、運転のしやすさをそのままに、パワフルで静粛性に磨きをかけた、いわば大人のR2だった。Lシリーズの水冷エンジンは、1972年7月に登場する次期モデル、レックスにそのまま継承され、いちだんとリファインが図られる。Lシリーズの販売台数は多くはなかったが、その評価は高く、果たした役割も大きなものだった。