カルタスクレセント 【1995,1996,1997,1998,1999,2000,2001,2002】

時代が求める上質さを大切にした上級コンパクト

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すべての面で使いやすいクルマを目標に開発

 日本国内では1980年代後半から1990年代の初めにかけてバブル経済に沸いた。新たな価値観も生まれ、以降、高級・上質化はキーワードのひとつとなっていく。そういった時代を経験し、市場はリッターカーのカルタスより上級のモデルも要望するようになっていく。こうして生まれたのが、3代目のカルタスに当たる「カルタスクレセント」だ。従来の2代目カルタスも販売が続けられ、安価なエントリーカーはカルタス、上級な小型車がカルタスクレセントという棲み分けが生まれることになった。

「すべての面で使いやすいクルマ」をテーマに開発された上級シリーズのカルタスクレセント。デビュー時のラインアップは4ドアセダンと3ドアハッチバックの2タイプだった(のちにワゴンも追加)。
 スリーサイズはセダンが全長4195mm×全幅1690mm×全高1390mmで、ホイールベースは2480mm。3ドアは、セダンと比べて325mm短く5mm高い全長3870mm×全幅1690mm×全高1395mmで、ホイールベースは100mm短い2380mmというスペックを持っていた。フロントマスクは落ち着いた印象のボンネットフード一体型グリルが特徴。リアセクションは、セダンとハッチバックで差別化を図ったテールランプを持ち、セダンはスクエア形状、ハッチバックは横長デザインのコンビネーションランプとなっていた。

全モデルが4バルブエンジンを搭載

 カルタスクレセントは、ホイールベースの延長で広々とした室内スペースを実現。ラウンディッシュなデザインのインパネは操作性に優れ、シート地やドアトリムなどには上質な素材を用いた。またシートは面圧分布やフィット性を計算し、おおぶりサイズで快適性をいちだんと引き上げていた。チルト機構付きパワーステアリングを全車に標準装備し、一部グレードを除き、エアコンやパワーウィンドウ、電動リモコンミラーも標準アイテムだった。

 搭載エンジンは4ドアが1.5リッター、3ドアには1.5リッターのほか1.3リッターもラインアップ。どちらも4WDモデルは1.5リッターユニットを搭載した。1.5リッターユニットは1493ccのG15A型で、最高出力は97ps/6000rpm、最大トルクは12.8kg-m/3200rpm。1.3リッターは1298ccのG13B型で、85ps/6000rpm、10.8kg-m/3000rpmのスペック。どちらも各シリンダーに4つのバルブを持った効率を重視した直列4気筒SOHC16Vであった。

 安全性の向上もカルタスクレセントの大きな開発テーマとなった。サイドドアビーム、ハイマウントストップランプ、リア3点式シートベルトなどを採用し、上級グレードのSにはデュアルエアバッグとABSを標準で装備した。

ワゴンモデル登場。高い人気を獲得

 カルタスクレセントは、デビュー翌年の1996年2月にワゴンモデルを追加する。こちらは、セダンやハッチバック以上に上級化が図られ、搭載エンジンはセダンやハッチバックと共通となる1.5リッターのG15A型のほか、G16A型1.6リッター直列4気筒SOHC16V(115ps/14.7kg-m)と、さらに高性能なツインカムのJ18A型1.8リッター直列4気筒DOHC16Vユニット(135ps/16.0kg-m)を搭載。専用シート地のほか、分割可倒式リアシート、フロア下のサブトランク、トノカバー、サイドボックス、ラゲッジフックなどを装備の使い勝手にあふれるラゲッジスペースも注目された。RVブームの中、コンパクトで上質なワゴンモデルとして人気を集めた。

「これから満ちていく月」という意味を持つ車名

「カルタス〜CULTUS」の車名は、英語のcultureカルチャー(文化)や、cultカルト(礼賛や崇拝)に通ずる造語。「思想のあるクルマは文化だ」という主張が込められ、「現代のクルマ文化に貢献したい」という願いを示したものだった。実際その思いは実り、カルタスは1983年に登場の初代、1988年の2代目ともにスズキの世界戦略モデルとして成果を挙げた。

 3代目の車名に加えられたクレセント(CRESCENT)は、英語で「三日月」。音楽用語のクレッシェンド(crescendo=だんだん強く/イタリア語)と同じ語源の言葉で、「満ちていく」という意味合いが込められた。上質な個性を身に付けたカルタスクレセントはその車名のように、その後のV6エスクードや、3ナンバーセダンであるキザシといった、それまでになかったハイグレードなモデルをスズキのラインアップに生み出す礎を築いたモデルと言える。