サファリ 【1997,1998,1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005,2006,2007】
世界で活躍するワールドサイズのパワフル4WD
日産のモデルレンジに「サファリ」の名を持つモデルが登場したのは、1980年6月のことだ。強固なラダー(梯子型)フレームに大排気量の直列6気筒エンジンを搭載し、2速のトランスファーを組み合わせたオフロード向けの4輪駆動車であった。車名のサファリ(SAFARI)とは、アフリカ東部のネイティブで使われているスワヒリ語で、「狩猟」とか「狩猟のために行う遠征旅行」の意味を持つ。オフロードを長時間にわたって走り続ける、屈強な4輪駆動車にはふさわしいネーミングと言える。
このオフロード向け4輪駆動車であるサファリの始まりは、1951年9月に発足した警察予備隊(現・自衛隊)が使う車両として、政府が日本国内の主な自動車メーカーに呼び掛けた競争試作に応じて造られたモデルにある。同じ競争試作に応じたのは、日産の他にはトヨタと中日本重工(現・三菱自動車工業)の3社だった。結局は、アメリカのウィリス社から生産ライセンスを購入していた当時の新三菱重工業のJEEP(CJ-3A型)が採用されることになる。不採用となった日産とトヨタは、試作したモデルをベースに一般向けに改良を加え、日産は「ニッサン パトロール」、トヨタは「ランドクルーザー」と名付けて市販することにした。
ニッサン パトロールは、同じ経緯で市販化されたトヨタ ランドクルーザーと共に、海外へ輸出されるモデルの中核を担うまでに発展した。いわば、自動車輸出の陰の立役者となっていた。生産台数の80%以上が輸出されていたと言えば、高い実力が理解できる。日本国内向けのパトロールは、1980年6月にデビューした初代サファリに後を託して生産を中止した。
パトロールに代わって登場した日産の本格的なオフロード向け4輪駆動モデルであるサファリは、あらゆる点で直接的なライバルとなっていたトヨタ ランドクルーザーを意識した設計となっていた。無論、ユーザーの使い方も大きく変化し、SUVと言われるように、オフロード向け4輪駆動モデルにも乗用車的な乗り心地の良さや高速性能、安全性などの要素が求められるようになった。サファリは、そうした市場の変化に対応するべく全く新しく設計されたモデルとなったのである。
1997年10月に登場した3世代目となるY61系サファリは、先代同様、梯子型フレームにボディーを組み付ける構造や、前後輪ともコイルスプリングを用いたリジッドアクスルを採用(前は3リンク、後は5リンク)。ボディスタイルはリアゲートを持った2ボックスで、ホイールベース2400㎜の2ドアハードトップとホイールベース2970㎜の4ドアステーションワゴンの2種があった。スタイリングは、旧型が実用最優先と言える極めてビジネスライクなものだったのに比べ、室内スペースが拡げられたことから、2ドアハードトップでは2列シートで5名、4ドアステーションワゴンでは3列シートで、前方から2人、3人、2人の7人乗りを可能としている。
3代目の初期型モデルのボディサイズはホイールベース2400㎜の2ドアハードトップでは全長4340㎜、全幅1840mmもしくは1930㎜、全高1855㎜となり、ホイールベース2970㎜の4ドアワゴンでは、全長4910㎜、全幅1840mmもしくは1930㎜、全高1865㎜となる。車両重量は2ドアハードトップが2040〜2080kg、4ドアステーションワゴンが2210〜2390kgとなる。この種のモデルとしてもかなりの重量級である。
3代目サファリの駆動システムは、2速トランスファーギアを持ったパートタイム4輪駆動で、トランスミッションは国内市場向けにはフルレンジ電子制御の4速オートマチックと5速MTを設定。ブレーキは前後ともベンチレーテッドディスク。搭載されるエンジンはガソリン仕様で排気量4478㏄の直列6気筒OHV(TB45E型、出力200ps/4400rpm)を筆頭に、ディーゼル仕様では排気量4169㏄の直列6気筒OHVターボチャージャー付き(TD42T型、出力160ps/3600rpm)およびショートホイールベース用の排気量2825㏄の直列6気筒SOHCターボチャージャー付きディーゼル(RD28ETi型、出力135ps/4000rpm)の2種があった。
1999年8月にマイナーチェンジされ、ショートホイールベース(2400㎜)仕様のエンジンを「ネオDi」と呼ばれた、排気量2953㏄の直列4気筒DOHCの直接噴射方式のターボチャージャー付きディーゼルエンジン(ZD30DDTi型、出力170ps/3600rpm)に換装している。これで、どちらかと言うとアンダーパワーと言われたショートホイールベース仕様のサファリの評価は大いに好転した。
しかし、日本市場でのシェアは大きくなく、月間の販売台数が150台に低迷した。その結果、2002年8月で一旦国内販売を中止している。ランドクルーザーやパジェロを超えるには、大きな飛躍が必須となった。
そこで、サファリは基本的なコンセプトは変わらないものの、ショートホイールベース仕様をカタログから落とし、ロングホイールベースの4ドアステーションワゴン仕様のみとしたモデル展開で販売を集中する方針を打ち出し、内外装の装備やデザインを一新し、グランロードリミテッド仕様一車種を以て再び販売を開始した。
メカニズムとしては、新しく排気量4758㏄の直列6気筒DOHC(TB48DE型、出力245ps/4800rpm)ガソリンエンジンを搭載し、ディスクブレーキのローター径を拡大するなど実質面の変更を加えた。しかし、国内販売は回復せず、パキスタンなど、一部東南アジア向け(ディーゼルエンジン仕様やマニュアルトランスミッション仕様を含む)としての輸出は継続されたが、2007年6月で国内販売を終了している。
だが、サファリは海外では堅調な販売セールスを持続した。2010年2月に第4世代となるY62系のサファリがデビュー。中東向けの車種となり、前後輪のサスペンションにはダブルウィッシュボーン/コイルスプリングを採用。エンジンは排気量5.6LのV型8気筒DOHC(VK56VD型、出力406ps)を搭載する。駆動系は強化したオールモード4×4で、トランスミッションは7速オートマチックと6速マニュアルがある。油圧による姿勢制御装置であるHBMCなど、電子制御デバイスも完備する。サファリのネーミングを継承するだけに、スケールの大きな走りを実現した隠れた名車である。