スバルデザイン3 【1972〜1981】

ユーザー指向に合わせて造形を多彩にアレンジ

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“王様”の名を持つウエッジシェイプの軽自動車

 スバル360からR2にかけて、革新的な軽自動車を開発し続けてきた富士重工業は、1972年6月になると新世代モデルの「レックス」を発表する(発売は7月)。ラテン語で“王様”を意味し、軽自動車市場を切り開いてきた王者の伝統を引き継ぐという意図を車名に表したレックスは、1970年代における軽自動車の上級化の波に沿う形でのモデルチェンジとなった。

 最大のトピックは車両デザインの大胆な刷新だった。ウエッジを利かせた精悍なフォルムにメッキ枠を配した大型のフロントグリル、縦型コンビネーションランプを組み込んだスポーティなカットテールなどを採用し、華やかで存在感のあるスタイリングに仕立てる。内装についても、コンケーブ(湾曲)型ダッシュボードやセンターベンチレーション、ハイバックシートなどを装備して機能的かつ上級な雰囲気を創出する。搭載エンジンは大幅な改良を加えたEK34型356cc・2サイクル2気筒ユニットで、32ps/35ps/37psという3種のユニットを用意。振動やノイズを抑制するスバルI.S.V.も組み込んだ。デビュー当初は2ドアのみの設定だったレックスは、1973年2月になると4ドア仕様を追加。同年10月には4サイクルエンジン(EK21型358cc直2OHC)に換装し、翌1974年9月にはマイナーチェンジを実施して内外装に新鮮味を与えるとともに、リアゲートを備えるワゴンモデルをラインアップした。

ガラスハッチのスイングバック登場!

 1976年1月には軽自動車の新規格が施行され、これに則した形で富士重工は1976年5月に「レックス5」をリリースする。ボディは前後トレッドを拡大するとともに大型バンパーを装着。エンジンはEK22型490cc直2OHCを搭載した。1977年5月になると、EK23型544cc直2OHCエンジンを搭載した「レックス550」が市場デビューを果たす。

 車両デザインはレックス5を踏襲するものの、装着パーツはより近代化され、リアエンジンフードには誇らしく“REX550”のバッジを装着した。デビュー当初は2/4ドアセダンの車種展開だったレックス550は、1978年2月になるとリアにガラスハッチを組み込んだスイングバックを追加する。荷物の積み下ろしに便利なガラスハッチに可倒式リアシートバックと前倒れ機構付き助手席シートバックを装備したスイングバックは、レックス550に新たな魅力をもたらした。

駆動レイアウトをFFに一新した第2世代レックス

 排出ガス対策が一段落した1970年代末、富士重工の開発陣はレックスの抜本的なモデルチェンジを画策する。まず手がけたのは車両レイアウトの設計で、最終的に開発陣はスバル360から続く伝統のリアエンジン&リアドライブから他メーカーも採用するフロントエンジン&フロントドライブに一新する決定を下した。エンジンはレックス550の2気筒ユニットを流用し、FF化するために大幅な改良を図る。足回りはリアサスにセミトレーリング/コイルを組み込み、フロントのマクファーソンストラットと合わせて四輪独立懸架を奢った。

 1981年9月、約9年ぶりにレックスが全面改良を果たす。“ザ・ビッグ・ミニ”のキャッチフレーズを掲げた2代目モデルは、販売の主力となる軽ボンバンのレックス・コンビが登場し、その1カ月後に乗用車版のレックス・セダンが発売された。デビュー当初の2代目の評判は、あまり芳しくなかった。ハッチバックのスタイリングは初代に比べてやや華やかさに欠け、エンジンレイアウトと駆動方式も他社と同様。上質な乗り心地は高く評価されたが、残念ながら一度ユーザーにならないと認識できない特性だった。この評判を払拭しようと、開発陣は付加価値を含んだ新グレードの設定を敢行する。1983年10月にはパートタイム4WDを採用したコンビ4WDをリリース。同年12月にはターボの過給器を組み込んだコンビ・ターボを追加し多様なユーザー層にアピールした。

凝ったウィンドウグラフィックを採用した新世代レオーネ

 軽自動車の進化を図る一方で、富士重工の開発陣は小型乗用車のレオーネのモデルチェンジも鋭意画策する。目指したのは、多様化するユーザーを満足させるための“ワイドバリエーション”化。同時に、車両デザインやメカニズムに関してもスバルらしい独自性を表現する方策に打って出た。

 1979年6月、2代目となる「ザ・ニューレオーネ」が登場する。エンジンは新設定のEA81型1781cc水平対向4OHVと改良版のEA71型1595cc水平対向4OHVを設定。ボディは先代よりもひと回り大きくなり、そのうえで個性的な6ライトウィンドウを採用した4ドアセダンとオペラウィンドウを取り入れた2ドアハードトップをラインアップする。注目の4WDシリーズは同年10月に用意。同時に、リアボディを伸ばして荷室空間を創出したエステートバンとホイールベースを80mm短縮したうえでリアにハッチゲートを組み込んだスイングバックを追加した。さらに1981年7月になると、その後のスバル車の方向性を決定づける最初の“ツーリングワゴン”、レオーネ4WDツーリングワゴンがデビュー。アウトドア派ユーザーを中心に高い人気を獲得した。