アテンザ 【2012,2013,2014,2015,2016,2017,2018,2019】

“走る歓び”を追求した第3世代フラッグシップ

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次世代フラッグシップモデルの模索

 マツダは2007年3月に技術開発の長期ビジョンである「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」を策定する。見て乗りたくなる、乗って楽しくなる、そしてまた乗りたくなるクルマを、将来にわたって持続的に提供していくというマツダの強い信念を示したものだが、第3世代となるアテンザは、この宣言の基に企図された新世代のミッドサイズカーであった。

 新しいアテンザの開発コンセプトには、「人生を豊かにするモチベーター。“人とクルマの一体化”によってドライバーをポジティブにする」と掲げる。具体的には、①“走る歓び”と“優れた環境・安全性能”を提供する独創のテクノロジー②五感のすべてが調和し、乗るたびに楽しさが深まる“人馬一体”の走り③“魂動”デザイン:野性的なプロポーションと日本の美意識を研ぎ澄ませたOnly Oneデザイン④創意に富み、考え抜かれた機能⑤匠の技に支えられた信頼性と仕上がり、という5項目をキーバリューとした。

新デザインテーマ“魂動”を採用

 スタイリングに関しては、マツダの新しいデザインテーマである“魂動(こどう)〜Soul of Motion”を基本に、ダイナミックで生命感のある動きとスピード感、艶感のある面質をアーティスティックに表現する。フロント部では新世代マツダのアイデンティティであるシグネチャーウィングを彫りの深いグリルに組み込んだうえで、ウィングから伸びるラインをボディサイド全体の動きに連続させ、立体的なノーズとともに強く前進しようとする躍動的なマスクを創出。サイドビューでは、俊敏な方向転換を支える前肢の肩を表したフロントフェンダーの線、推進力を感じさせる腰を表したリアフェンダーの線、リアタイヤを起点に前方へとシャープに伸びる線という3本のキャラクターラインのコンビネーションで“地面をつかむ鋭い跳躍”と“前へ突き進むスピード感”を演出した。

 さらに、LED光源とリング状の導光レンズによる発光シグネチャーのヘッドランプや高輝度タイプの新アルミホイール、精緻で高品質な新開発のボディ色(ソウルレッドプレミアムメタリック/ブルーリフレックスマイカ/メテオグレーマイカ/ジェットブラックマイカ)などを採用。ボディタイプは4ドアセダンとワゴンの2タイプを設定した。ちなみに、マツダは2011年開催の東京モーターショーにおいて“魂動”をベースに据えたコンセプトモデルの「雄」(TAKERI)を披露したが、この車両デザインを量産タイプに仕立て直したモデルが新型アテンザであった。

 インテリアについては、ドライバーオリエンテッドなコクピットデザインを中心に、素材や触感、操作機器の形状にこだわり、上質でスポーティな雰囲気のなかに機能性や快適性を存分に融合させる。精緻なスピンドル加工と深く光るハニカム加工を施したホワイト照明色のメーター、日差しによる陰影がレリーフ彫刻のようなイメージを醸し出すドアトリム、立体感のあるサポート性の高い形状のシートなど特徴である。

“走る歓び”を提供するクリーンディーゼル

 独創的な内外装を支えるメカニズムに関しては、マツダの新世代技術である“SKYACTIV”をフル採用する。搭載エンジンにはクリーンディーゼルのSKYACTIV-D 2.2(175ps/42/8kg・m)、高効率直噴ガソリンのSKYACTIV-G 2.0(155ps/20.0kg・m)、そして新開発の直噴ガソリンとなるSKYACTIV-G 2.5(188ps/25.5kg・m)という3機種を設定した。

 クリーンディーゼルの「SKYACTIV-D 2.2」SH-VPTR型2188cc直4DOHCディーゼルターボは、低圧縮比14.0による燃費改善や2ステージターボチャージャーの装着によるスムーズでリニアなレスポンスと大幅なトルク向上、高価なNOx後処理装置なしでグローバルの規制をクリアする高い排出ガス性能を特長とする。主要技術としては、優れた可燃混合気を生成するマルチホールピエゾインジェクターや暖機中の空気温度上昇に貢献する排気VVL(可変バルブリフト機構)、大小2個のタービンを運転領域によって使い分ける2ステージターボチャージャーなどを採用。また、シリンダーブロックのアルミ化やシリンダーヘッドの肉厚低減、エグゾーストマニホールドの一体構造化、クランクシャフトのメインジャーナル径のダウンサイズなどを行い、エンジンの軽量化と機械抵抗の低減を図った。パワー&トルクは175ps/42.8kg・mを発生。燃費はJC08モード走行で20.0〜22.4km/Lと、同クラスのモデルとしてトップの優れた燃費性能(ハイブリッド車を除く)を実現した。

先進技術を満載したガソリンユニット

 次世代高効率直噴ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」も話題満載だ。このエンジンの最大のトピックは、高圧縮比の実現とノッキング対策、そして低中速トルクおよび燃費の大幅な向上にある。圧縮比は同クラスの量産車用ガソリンエンジンとしては最高レベルの13.0を実現。そのうえで高圧縮比エンジンの課題であったノッキングを4-2-1排気システムやキャビティー付きピストン、マルチホールインジェクター、緻密な燃焼制御などで克服した。また、開発陣はエンジンの軽量化と機械抵抗低減も徹底追求。ピストン/ピストンピン/コンロッドの軽量化、ピストンリングの張力低減、クランクシャフトメインジャーナルの小型化、電子制御式可変油圧小型オイルポンプの装着などを実施する。

 渾身のSKYACTIV-Gは、「SKYACTIV-G 2.5」PY-VPR型2488cc直4DOHC+デュアルS-VT(吸排気可変バルブタイミング機構。吸気側は電動S-VT)と「SKYACTIV-G 2.0」PE-VPR型1997cc直4DOHCの2機種が新型アテンザに積み込まれる。パワー&トルクはPY-VPR型が188ps/25.5kg・m、PE-VPR型が155ps/20.0kg・mを発生。燃費はJC08モード走行でPY-VPR型が15.6km/L、PE-VPR型が17.4km/Lの好数値を達成した。
 組み合わせるミッションは、キックダウンスイッチ制御を追加した“SKYACTIV-DRIVE”電子制御式6速ATを全機種に、スポーティなシフトフィールを実現した“SKYACTIV-MT”6速MTをSKYACTIV-Dに設定する。

新エネルギー回生システムを導入

 新型アテンザのメカニズムでは、SKYACTIV技術のほかに「i-ELOOP」と称する独自の減速エネルギー回生システムも組み込まれる。従来のクルマはエンジン動力の約10%をオルタネーターでの発電に回し、それをバッテリーに蓄電して必要な電装品を動かしていた。一方で新型アテンザでは、電気二重層キャパシタ(EDLC)を使った減速エネルギー回生システムのi-ELOOPによって電装品を動かす電気を補う仕組みを採用。エンジンは発電の負担から解放されるため、効果的に燃料消費の削減を実現した。

 具体的には、走行中にアクセルを戻した瞬間から可変電圧式回生オルタネーターによって発電し、最大25Vまで高電圧化することで大容量キャパシタに効率よく送電・蓄電する。i-stopによるアイドリングストップ中やアクセルを踏んだ時、さらにキャパシタやバッテリーに十分電気が残っているあいだはオルタネーターでの発電は行わず、キャパシタに蓄えられた電気によって走行中のエンジン電装部品はもちろん、ヘッドランプやエアコン、オーディオなどの装備品による電力消費を補う。その際、キャパシタからの電気はDC/DCコンバーターによって電装品の規格電圧である12Vに降圧される。さらに、停車中に消費する電力も補うことで、より長時間のアイドリングストップも可能とした。ちなみに、i-ELOOPはマツダの“ビルディングブロック戦略”のステップ2となる電気デバイス技術で、ステップ1はi-stop、ステップ3はモーター駆動技術となっている。

発売1カ月で販売計画台数の7カ月分超を受注

 マツダの新世代フラッグシップとなる3代目アテンザは、2012年10月より予約を受け付け、翌11月に販売を開始する。グレード展開はセダンとワゴンともに共通で、20S/25S Lパッケージ/XD(クロスディー)/XD Lパッケージという各4仕様をラインアップ。車両価格もセダンとワゴンともに同プライスを掲げた。

 市場に放たれた3代目アテンザは、発売1カ月で月販目標の7倍を超える7300台あまりの受注を記録するほどの人気モデルに成長する。ユーザーが評価したのは、美しくて躍動感のあるスタイリングや先進安全装備の充実、優れた環境性能、他社の旗艦モデルにはないクリーンディーゼルエンジン車の設定、そしてMT仕様のラインアップなどであった。
 また、3代目アテンザは従来型と同様に「Mazda6」の車名で海外でもリリースされる。生産はロシアや中国でも実施され、グローバル規模で販売台数を伸ばしていった。