SLK 【2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011】

SLRマクラーレンと共通イメージの第2世代

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第2世代となるロードスターの企画

 初代マツダ・ロードスター/MX-5のデビューによって、世界市場でライトウェイトスポーツが再注目を集めた1990年代。この状況に対してダイムラー・ベンツは、1996年に初代「SLKクラス」(R170型系)を発表する。新設計のボディに電動開閉式ハードトップの“バリオルーフ”を纏ったSLKクラスは、新しいクーペカブリオレタイプのライトウェイトスポーツとして販売台数を大いに伸ばした。

 一方で2000年代に入ると、市場からライトウェイトスポーツに新たな要求、具体的にはより高いパフォーマンスと質感の向上、安全性の引き上げなどが求められるようになる。2代目マツダ・ロードスター/MX-5やホンダS2000、BMW・Z3といったライバル車も、着実にポテンシャルを引き上げていた。2000年代中盤以降に向けた次世代のSLKクラスには、どんな内容の進化が必要か−−。様々な視点から検討を重ねた開発陣は、車両デザインからパフォーマンス、快適性など、すべての項目を一新したうえで、メルセデスの思想と情熱を存分に込めたロードスターに仕立てることを目標に据えた。

2代目のボディは高剛性&軽量設計

 基本骨格については、高剛性かつ衝撃吸収に優れるオープンボディ構造を新たに設計する。ボディシェルには軽くて強靭な高張力スチールを多用。また、室内とトランクルームを隔てるリアウォールパネルやルーフ支持部のクロスメンバーにはアルミニウム材を、燃料タンクとトランクの仕切りパネルにはマグネシウム材を導入するなど、要所に軽量で高強度の素材を用いる。

 さらに、フロントセクションに十分なクラッシャブルゾーンを確保してキャビン部の変形を抑えたうえで、フロントピラーには2本の高張力スチール製楕円チューブなどによる補強構造を取り入れた。加えて、シート後方には頑強なロールバーを、ボディ後部には高張力スチールの閉断面サイドメンバーを組み込む。肝心のトップ部には、2層構造のスチール製ルーフパネルとガラス製ヒーテッドリアウィンドウを組み合わせた新設計の“バリオルーフ”を採用。室内のスイッチ操作またはエレクトロニックキーで行う電動開閉に要する時間は、約22秒だ。オープン走行時における風の巻き込みの抑制も重視し、風洞実験を重ねてボディおよびAピラーの形状やシート高を最適化する。トランクスペースはルーフ格納時で185l (VDA方式)、クーペ状態で277l (同)を実現した。

主力モデルのSLK350はV6+7速AT搭載

 新設計ボディを支える懸架機構は、フロントに3リンク/コイルを、リアにマルチリンク/コイルを採用し、高いロードホールディング性能と快適な乗り心地が味わえるように各部を専用セッティングする。制動機構にはφ330mmドリルドベンチレーテッドディスクを上級仕様のフロントに標準装備。同時に、ディスクへの水分付着を抑制するカバ−プレートも配備した。リアにはハイパワーに対応したφ290mmのディスクブレーキをセット。さらに、アクティブセーフティ機構としてABSやBAS(ブレーキアシスト)、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)などを組み込んだ。

 本国仕様の搭載エンジンは4種。271型1795cc直4DOHCスーパーチャージャー(163ps/24.5kg・m)/272M30型2996cc・V6DOHC(231ps/30.6kg・m)/272型3497cc・V6DOHC(272ps/35.7kg・m)/113M55型5438cc・V8OHC(360ps/52.0kg・m)をラインアップする。トランスミッションにはティップシフト機構付7速AT(7G-TRONIC)/ティップシフト機構付5速AT(271型エンジンに採用)/6速MTを組み合わせた。
 このうち主力モデルは、新開発の272型3497ccユニットと組み合わせた7速AT仕様。グレード名はSLK350を名乗った。

スタイリングはSLRマクラーレンをイメージ

 スタイリングについては、SLRマクラーレンと共通イメージのスポーティかつダイナミックな車両デザインを採用する。フロント部は大胆なアローシェイプのロングノーズやその先端に配した水平のフィン、ワイドなインテークを持つスポイラー一体型エアロバンパーなどで構成。サイド部はウェッジシェイプを際立たせたシャープなラインやマッシブなホイールアーチ等で流麗さと力強さを強調する。リア部はエッジを利かせたトランクリッド後端やボリューム感をもたせたバンパーなどで独自の存在感を表現した。
 ボディサイズは従来比で72mm長く、65mm幅広く、ホイールベースが30mm長いディメンション。エアロダイナミクスを駆使した効果で、Cd値(空気抵抗係数)は0.32を実現した。

 インテリアは、人間工学に基づいて突きつめた操作性や視認性を基本に、フロントノーズの造形を反復させたダッシュボードからセンターコンソールにかけてのスポーティなアレンジを採用。スイッチ類などに配したシルバーとブラックの基調カラーが織り成すコントラストによって、高品質で精悍な美しさを表現する。シートには専用デザインのバケットタイプを装着。同時に、シートバックに超小型セラミックヒーターを内蔵して乗員の首まわりなどを温めるエアスカーフも組み込んだ。また、安全機構として運転席&助手席SRSエアバッグに加えてSRSヘッドソラックスサイドエアバッグを装備。さらに、ベルトフォースリミッター付のシートベルトテンショナーも採用した。

本国では4グレードの基本構成で市場デビュー

 第2世代となるSLKクラスは2004年3月開催のジュネーブ・ショーで初公開され、同年中に市販に移される。型式はR171を名乗った。基本的な車種展開は、271型エンジンを搭載する「SLK200コンプレッサー」、272M30型エンジンを積む「SLK280」(2005年より設定)、主力となる272型エンジンを採用する「SLK350」、そして113M55型エンジンで武装する「SLK55 AMG」という計4グレードで構成。日本にはまずSLK350とSLK55 AMGが2004年に導入され、2005年にはSLK280が、2006年にはSLK200コンプレッサーが追加設定された。

 市場に放たれた2代目SLKクラスは、まずそのスタイリングで脚光を浴びる。SLRマクラーレンをコンパクト化したかのようなエクステリアが、スポーツカー・ファンから絶賛されたのだ。また、より高性能で、かつ快適になった走りの特性も好評を博した。さらに、2代目SLKを2004年と2005年の2シーズンに渡ってF1選手権のセーフティカーとして活用したことも、同車のイメージアップに大きく貢献することとなった。

各部の改良で走行性能をアップ

 世界市場で高い評価を受ける2代目SLKクラス。一方で開発現場では、さらなる進化を目指してSLKクラスの多角的な改良を鋭意企画していく。
 2006年には、113Mエンジンの出力を400ps/53.0kg・mにまで引き上げ、強化タイプのシャシーや専用デザインのカーボンファイバー外装などを装備した「SLK55 AMG ブラックシリーズ」を限定で発売。量産モデルのSLK55 AMGには、F1選手権のセーフティカーに準じた強化パーツを組み込む「パフォーマンスパッケージ」を設定する。

 また、SLK200コンプレッサーとSLK280には10スポークアルミホイール/スポーツサスペンション/バイキセノンヘッドライト&ヘッドライトウォッシャー/コーナリングライト/パドルシフトを装備した「スポーツパッケージ」を、SLK350にはAMG5本スポークアルミホイール&ワイドタイヤ/AMGスタイリングパッケージ(フロントスポイラー、サイド&リアスカート)/スポーツサスペンションを装備した「AMGスポーツパッケージ」を用意した。さらに同年、SLKクラス誕生10周年を記念した「エディション10」と称する特別仕様車を発表し、2007年モデルで限定リリースした。