アルト 【1988,1989,1990,1991,1992,1993,1994】

スタイリッシュに進化した3代目カジュアル

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グラスエリアが広い開放的デザイン

 ベーシックな「足グルマ」として軽自動車そのものを復権させたアルトは、1988年9月に3代目に進化した。3代目はシティコミューターとしての機能を見直し、一段と使い勝手とスペースユーティリティを改善していた。目を引いたのは広いグラスエリアと、ぐんと長くなったホイールベースである。

 エンジンルームを従来より55mmも短縮し、キャビンスペースを広げたシンプルな2BOXデザインは窓が大きく、まるでサンルームのような開放的なイメージを漂わせていた。さらにホイールベースは2335mmとクラス最長レベル。従来モデルと較べ大幅に延長することで安定したフォルムを作り出した。前後のフェンダーアーチをかすかにブリスター状に成形するなど走りを意識した演出も巧みだった。ダイハツ・ミラやホンダ・トゥデイなどスタイリッシュなライバルがひしめく中でも、アルトのスタイリングは際立っていた。

パリよりミラノより新しいスライドスリム!?

 使い勝手の面でもさまざまなアイデアが盛り込まれたが、注目を集めたのがスライドスリム仕様だった。左右のドアをヒンジ式からスライド式に変更すると同時に、運転席に回転システムを標準装備。ドアの開閉と連動して運転席が回転することで優れた乗降性を実現したお洒落な新顔である。
「パリよりミラノより、アルトは新しい。」というカタログのキャッチコピーどおりスライドスリムは斬新な存在で、しかも使い勝手に優れるだけでなく、専用ストライプなどでスタイリッシュさも磨き上げていた。

 非対称ドライバーズシート・レイアウトも斬新だった。運転席を助手席と比較してやや中央寄りにレイアウトすることで、ドライバーの右側にゆとりをもたせ、同時に自然な運転姿勢を実現したのだ。これにより全幅が限られた軽自動車とは思えないフレンドリーな運転空間を作り出していた。

 さらにいち早くショルダー側の高さを調節できるELR機構付きシートベルトや、2ウェイの運転席リフターを採用するなど使い勝手に対する配慮も光った。日常的に使うクルマだからこその気配りが行き届いていたのである。

パワーユニットは全5種を設定

 アルトはスズキの屋台骨を支える主力車種だっただけに、メカニズム面も意欲的だった。エンジンは標準シリーズに3種、スポーティモデルのワークス・シリーズに2種の合計5種をラインアップ。全車が547ccの直列3気筒レイアウトを採用しながら、モデルキャラクターに応じてきめ細かくチューニングを分けていた。

 最もベーシックなのは可変ベンチュリーキャブレターを装着したOHC6V仕様(34ps)、中心モデル用が吸気2/排気2の4バルブ構造を持つ高効率のOHC12V仕様(42ps)。標準シリーズの最強版は電子制御インジェクションを組み合わせたDOHC12V仕様(46ps)だった。

 ワークス用は2ユニットともターボ仕様で、上級のRS/R&RS/RグレードがDOHC12Vインタークーラーターボ仕様(64ps)、S/X&S/Rグレード用はOHC12Vインタークーラーターボ仕様(58ps)を搭載した。

累計販売台数200万台突破!人気を確定

 トランスミッションは4速&5速マニュアルと3速オートマチックがグレードによって選べた。ちなみに標準シリーズに設定されたエポはコラムシフト式の3速ATとすることでスペース効率を一段と磨き上げていた。駆動方式はFFを基本にビスカスカップリング式のフルタイム4WDを設定、積雪地などでもしっかりとした走りを提供した。

 3代目アルトは1989年7月に累計販売台数が200万台を突破するなど好評を博し、初代、2代目モデルと同様クラスリーダーカーの地位を明確にする。1989年の消費税導入により商業車の税制上のメリットがなくなると、しだいに乗用車登録に変更し後席居住性をリファインするなど改良に積極的に取り組んだ。

「3代続くと本物」とは日本で昔から言われることだが、すでにブランドを確立していたアルトにとって、3代目は躍進のモデルと言えた。本物が一段と磨かれ逸品になったのである。