ライフ 【1998,1999,2000,2001,2002,2003】
使い勝手と安全性を重視した新規格Kカー
ホンダは、1998年10月、前年の4月に復活させたばかりの2代目ライフをモデルチェンジし3代目を送り出した。新型は、1998年10月施行された軽自動車の新企画に合わせたブランニューモデルだった。3代目は外観イメージこそ2代目を踏襲していたが、ボディパネルからエンジンまですべてが新設計の自信作。ホンダの長い歴史の中でも僅か1年半で、これほどすべてを一新した例は珍しい。
3代目ライフは、当時ホンダが提唱していた「Kムーバー」という思想を具現化していた。Kムーバーとは“Small is Smart”の考えを基に、安全・環境性能を世界トップレベルまで徹底追及しながら、軽自動車本来の実用性・経済性や、乗る人の楽しさを追求した新しい価値を創造するスモールカーのことである。
バリエーションは、B/G/Tの3グレード構成。Bはエアコンこそ標準装備だったがシンプル装備のベーシック仕様。Gはキーレスエントリーやパワーウィンドウ、オーディオなどを装備した中心モデル、Tはプライバシーガラス、ルーフレール、タコメーター、アルミホイールなどフル装備の上級版だった。パワーユニットは排気量656ccの直列3気筒OHC12V(50ps)である。旧型と比較して約20%低速トルクをアップさせるとともに、排出ガス中の有害物質を大幅に減らしたLEV仕様としていた。トランスミッションは3速ATと、5速MTの2種で、ATはコラムシフト、MTはフロアシフトだった。
スタイリングは、全高をたっぷりと採ったトールデザインの2BOX。大型バンパーやピラー類を骨太に仕上げることで、がっちりとした印象を訴求した。グラスエリアを大きくすることで良好な視界を確保したのが特徴で、ボディサイズは全長3395×全幅1475×全高1605mm(Tは1645mm)。ホイールベースは2360mmである。
インテリアは、使用シーンに応じて多彩にアレンジ可能なシートが便利だった。前後席をつなげたフルフラットモード、後席を床下に収納したラゲッジモード、助手席と後席片側を倒した長尺モードなどが選べ、シート自体も素材/クッションともに上質な大型タイプが採用された。フロアはフラットに仕上げられ前後席ともにレッグスペースは十分に広かった。静粛性にも気を配っていた。各部の遮音材の効果と、エンジン自体の低騒音設計によって小型車レベルの静粛性を達成する。
3代目のライバルに対するアドバンテージは、その安全性にあった。Kカーながら、フルラップバリアテスト(55km/h)だけでなくオフセットバリアテスト(64km/h)でもキャビン変形を最小限に抑えた世界最高水準の衝突安全性を確保。それだけでなく歩行者との事故の際に、歩行者の頭部傷害を軽減する衝撃吸収ボンネットや衝撃吸収フェンダーを採用。パッセンジャーだけでなく、歩行者に対しても安全なクルマに仕上げていた。全車に運転席&助手席エアバッグを標準化し、オプションでABSを設定するなど安全装備も充実していた。
実際にドライブしても、3代目ライフはしっかりとした印象を受けた。ボディ剛性が高くKカーながら独特の重量感があった。決して速いクルマではなかったが、実用域のパワーは十分で、静粛性も高いことから乗っていて気持ちよかった。3代目ライフは好調な販売セールスをマークした。それは実用車として大切な機能と、おしゃれなイメージ、そして優れた安全性が巧みにバランスされていたからだったからに違いない。