ロードスター 【2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011,2012,2013,2014,2015】

新開発のプラットフォームを採用した第3世代

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次世代ライトウェイトスポーツの開発

 1989年に初代モデルを発売して以来、世界じゅうでライトウェイトスポーツのブームを巻き起こしたマツダ・ロードスター(輸出名MX-5)。“人馬一体”を開発コンセプトに、1998年1月には全面改良を施して2代目に移行し、着実な進化を遂げる。だが2000年代に入ると市場から新たな要求、具体的にはより高いパフォーマンスと質感の向上、安全性の引き上げなどが求められるようになった。これにはホンダS2000やメルセデス・ベンツSLK、BMW・Z3といったライバル車の台頭が背景にあった。マツダとしても会社の業績回復ならびにフォードとの提携拡大における自社ブランドの再構築を図るうえで、ロードスターの刷新は重要な鍵を握るものと判断していた。

 次世代のロードスターを企画するにあたり、開発陣は初代から継承してきた“人馬一体”コンセプトの再定義を実施する。そして開発スタッフ全員に明確な人馬一体を浸透させるため、走る/止まる/曲がる/聴く/さわる/視るという6項目に分けた詳細なチャートを作成した。そこを出発点にロードスターが提供すべき歓びや楽しさ、総じて“Lots of Fun”の概念を創出。次世代ロードスターに盛り込む新たな“Fun to Drive”(思い通りに走らせる楽しさ)、“Fun to Own”(所有する楽しさ)、“Fun to Use”(日常で使いこなす楽しさ)を打ち出していった。

“Lots of Fun”なクルマを目指して--

 3代目ロードスターは、基本骨格については新規に開発したNCプラットフォームを採用する。ホイールベースは従来比+65mmの2330mmに設定。前後トレッドの拡大も実施する。組み合わせるボディは超高張力鋼板と高張力鋼板を多用し、ボディ剛性のアップと軽量化を両立。同時に、各パーツの無駄な贅肉を削ぎ落とす“グラム作戦”のもと、ボンネットやトランクリッド、パワーユニットとファイナルドライブユニットをリジッドに結合するZ型断面のP.P.F.(パワープラントフレーム)、前サスペンションコントロールアーム、後サスペンションスプリングシート、リアハブサポートなどにアルミ材を使用した。

 懸架機構にはガス封入式モノチューブダンパーをセットした前ダブルウィッシュボーン/後マルチリンクを採用する。制動機構は前Φ290mmベンチレーテッドディスク/後Φ280mmソリッドディスクを装備。ライトウェイトスポーツにとって重要な前後重量配分は、エンジン搭載位置を従来型比で135mm後方に、燃料タンクを同110mm前方かつ120mm低い位置に、バッテリーを車両重心近くに移設したことなどにより、理想的な50対50を成し遂げた。

3代目はエンジンを2リッターに拡大

 エンジンはアルミ製ブロックを用いる2リッターMZRユニット(LF-VE型1998cc直4DOHC16V)をFR用にリファインして搭載する(輸出モデルのMX-5には1.8リッターエンジンも設定)。吸気バルブの開閉タイミングをエンジン回転数に即して最適制御するS-VT(シーケンシャル・バルブタイミング)や低回転から高回転までリニアでスムーズなトルク感をもたらすVIS(可変吸気システム)、10.8という高い圧縮比、専用開発の軽量フライホイール(MT車)、大径エレキスロットルなどを採用した2リッターMZRユニットは、従来モデル比で吸気抵抗を57%、排気の圧力損失を40%低減した。

 組み合わせるトランスミッションは1~4速にトリプルコーンシンクロを内蔵した6速MT、1~2速にトリプルコーン、3速にダブルコーン、4速にカーボンタイプのシンクロを採用した5速MT、そして6速化した電子制御AT(アクティブマチック)の3タイプを設定。パワー&トルク値はMTモデルが170ps/6700rpm、19.3kg・m/5000rpmを、ATモデルが166ps/6700rpm、19.3kg・m/5000rpmを発生する。より滑らかでダイナミックな車両制御と高い操縦安定性を提供する目的で、トルクセンシング式のスーパーLSDも組み込んだ。

 外装デザインに関しては、ロードスターらしさを継承しながら、モダンでより洗練されたオーバルシェイプのフォルムを構築する。また、光と影のリフレクションによって様々な表情を作り出すボディ造形によって、見るたびに愛着のわくエクステリアに仕立てた。肝心のソフトトップは、Z型の折りたたみ式へと一新。室内側ロックレバーもセンター1カ所に変更する。ボディサイズは全長3995×全幅1720×全高1245mmと、歴代で初めて3ナンバー規格となった。内包するインテリアは、「心地よい開放感とタイト感の絶妙なバランス」をテーマに開発。同時に、各部の質感も徹底して引き上げる。シートにはスプリング式クッションフレームを組み込むバケットタイプを装備した。

パワーリトラクタブルハードトップを新設定

 第3世代となるロードスターは、NCの型式を付けて2005年8月に市場デビューを果たす。車種展開は標準仕様、レザー内装を採用した上級仕様の「VS」、そしてビルシュタイン製ダンパーや205/45R17サイズタイヤなどを装備したスポーツ志向の「RS」をラインアップ。また、発売記念として500台限定の特別仕様車「3rd Generation Limited」を設定した。
 発売から1カ月間で月販目標360台の5倍超となる約1900台を受注して好スタートを切った3代目ロードスターは、初代や2代目と同様、デビュー後も緻密な改良と車種設定の拡大を積極的に実施していく。

 2006年3月には、モータースポーツ用ベースモデルとなる「NR-A」グレードをリリース。翌4月にはWebカスタマイズモデルの「ウェブチューンロードスター」を新規に設定する。そして同年8月には、画期的な電動ルーフシステムを装備するプレミアムモデルの「パワーリトラクタブルハードトップ(RHT)」シリーズを市場に放った。RHTの最大の特長は、トランクスペースをまったく犠牲にしない新機構を採用したことにあった。ルーフ部を軽量コンパクトに仕立てるとともに、ルーフをホイールベース間のシートバックスペースに収納してトランクスペースに干渉しない構造としたのである。また、電動ルーフの開閉操作は当時世界最速の約12秒で完了した。RHT化に合わせた各部の改良も行われ、リアデッキ部のデザイン変更やサスペンション設定の最適化、クロームタイプパーツの装着(フロントグリルガーニッシュ/フロントヘッドランプインナーベゼル/アウタードアハンドルカバー)などを実施していた。

“人馬一体”の楽しさをさらに進化

 3代目ロードスターは、2008年12月になると最初のマイナーチェンジが敢行される。まずエクステリアでは、マツダ車のデザインモチーフである5角形グリルを採用したうえで、バンパーやサイドガーニッシュ、前後ランプ類のデザインを変更。全長は従来比+25mmの4020mmとなる。

 エンジン関連では、鍛造クランクシャフトの導入やピストンのフルフロート化、新設計バルブスプリングの組み込みなどにより、出力ピークを300rpm、レブリミットを500rpmアップさせた。また、樹脂製サージタンクの剛性最適化や新開発のインダクションサウンドエンハンサーの採用(6速MT車)などにより、エンジン音質の向上を図る。組み合わせるトランスミッションでは、6速MTでのトリプルコーンシンクロのアウターコーンのカーボンコーティング化や3~4速のシンクロ容量アップ、6速EC-ATへのダイレクトモードおよびAAS(アクティブ・アダプティブ・シフト)の導入などを実施した。さらに、フロントロールセンター高の引き下げ(-26mm)やサスペンション各部の最適チューニングを行って操舵性と乗り心地を改善。同時に、ドアモジュールの剛性アップおよび№2クロスメンバーへの補強材の設定によって静粛性を引き上げ、RHTモデルでは発泡ウレタン材充填フロントサスクロスメンバーの採用やルーフへの制振材の追加も行ってロードノイズの低減を図った。

 3代目ロードスターのリファインは、まだまだ続く。2012年7月には一部改良を行い、エクステリアではフロントビューの刷新を、インテリアでは加飾パネルとステアリングホイールベゼルのカラー変更などを実施。また、MT車のスロットル制御プログラムの改良によって加速コントロール性の向上を、ブレーキブースターの特性変更により減速コントロール性の向上を成し遂げる。さらに、一定以上の衝撃をセンサーが検知するとボンネット後端が瞬時に持ち上がって歩行者の頭部への衝撃を緩和するアクティブボンネットを全車に導入した。翌2013年12月にも一部改良を実施し、人気アイテムであるレカロ製バケットシートの単独オプション化(従来はアルミホイールとのセットop)やフォグランプの標準装備化(RSおよびRHT全車)、S RHTグレードへのステアリングシフトスイッチおよびDSC+TRCの設定などを行った。

誕生25周年を記念して限定モデルを発売

 ロードスター/MX-5シリーズは2014年になると、デビュー25周年を迎える。それを記念して、マツダは英国JOTA Sportとタッグを組んで6月開催のニュルブルクリンク24時間レースにMX-5で参戦。また、4月開催の米国ニューヨーク・ショーで「MX-5 Miata 25th Anniversary Edition」を発表し、翌5月には日本で「ロードスター25周年記念車」を25台限定で発売した。RS RHT(6速MT)グレードをベースに、専用ボディカラーのソウルレッドプレミアムメタリックやオフホワイトレザーシート&ドアトリム、ベストバランスを求めて厳選したピストン/コネクティングロッド/フライホイールなどを採用したスペシャルモデルは、たちまちファンのコレクターズアイテムに昇華した。

 2007年1月には80万台、2011年2月には90万台と、2人乗り小型オープンスポーツカーの累計生産台数記録を次々と更新していったマツダ・ロードスター/MX-5。世界市場で熱い支持を受ける“人馬一体”のキャラクターは、2015年5月にデビューする第4世代(ND型系)にも着実に引き継がれていったのである。

誕生20周年を記念した超軽量バーションの内容

 話は少し遡るが、ロードスター/MX-5は2009年の発売20周年の節目にコンセプトカーの「MX-5 Superlight version」を開発。同年9月開催のフランクフルト・モーターショーにおいて初公開した。
 MX-5の持ち味である軽量さをいっそう深化させたMX-5 Superlight versionは、ドイツにある欧州マツダR&Dデザインセンターが企画を手がける。最大の注目はフロントウィンドスクリーンやサイドウィンドウ、ソフトトップなどを省略した、いわゆるスピードスターボディを構築した点で、スクリーン部およびキャビン周囲には新規にカーボンファイバー製パネルを装着する。同時にエアコンやオーディオ類、センターコンソール、アームレストなども省き、車両重量はベース車比で80kgほど軽い995kgに収めた。

 シャシーに関しては専用のビルシュタイン製ダンパーやアイバッハ製スタビライザーなどを組み込み、最低地上高は-30mm、前後トレッドは+50mmに設定。同時に、ブレーキローターは前Φ300mm/後Φ280mmの強化タイプに換装する。搭載エンジンは欧州仕様の1.8リッターMZRエンジンに、パウダーコート加工のマツダスピード製エグゾーストシステムを装着した。ほかにも、カーボン製バケットシートやシングルタイプ・ルームミラー、アルミ製シフトレバー&ハンドブレーキレバー、ブラウンレザー内装、キルスイッチ、LEDストップランプ組み込みロールオーバーバーといったスペシャルアイテムを装備する。走行性能については、0→100km/h加速がベース車比約-1秒の8.9秒を達成。また、欧州複合モード燃費は6.3l /100km、CO2排出量は150g/kmと、ベース車比でそれぞれ約10%の改善が図られていた。