アイシス 【2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010,2012,2013,2014,2015,2016,2017】
乗降性に優れた大開口ミニバン
2004年9月、トヨタから登場したアイシスは、一見すると、目新しさに欠けるオーソドックスなミニバンとして捉えられるかもしれない。同じトヨタのノアやヴォクシーといった中型ミニバン系列と勘違いされる可能性さえある。しかし、アイシスは、それらとは成り立ちちが違う。
アイシスは、乗用車用のMCプラットフォームを採用する。カローラシリーズや初代および2代目プリウス、プレミオ、アリオンなどと同じプラットフォームの持ち主なのだ。ミニバン系ではウィッシュがこのプラットフォームを利用。同じプラットフォームを用いるモデルの中では、背の高いアピアランスを持つアイシスだが、ノアやヴォクシーと比較すれば格段に背が低い。スリーサイズは全長4610×全幅1695×全高1640mm。2001年デビューの初代ノア(全長4580×全幅1695×全高1850mm)と比較すると、全長や全幅はオーバーラップするものの、全高は210mmも低くなっている。ホイールベースはアイシスが2785mmで、ノアは2825mm。ノアのホイールベースが2代目イプサムと共通することからも分かるとおり、ノアはイプサムとプラットフォームを共有している。アイシスは、ノアやヴォクシーの系列ではなく、乗用車的な成り立ちで生まれたモデルなのである。
アイシスのエクステリアで目を引くのは、助手席側の前後ドアを開放した際の特徴となる左右非対称設計のボディだ。
左右ともフロントドアは前ヒンジ式、リアは両側スライドタイプである。しかも、助手席側にはセンターピラーがない。そのため、助手席側の前後ドアを開くと、大きな開口部がボディ側面に出現するのだ。これは、パノラマオープンドアと名付けられ、助手席側センターピラーをドアに内蔵させたことで実現。開口幅は最大1890mmにもなる。
パノラマオープンドアは、コンパクトモデルのラウムで培ってきたユニバーサルデザインに関する発想と技術を生かしている。大きな開口スペースは人の乗降はもちろん、嵩張る荷物の積載にも大きなメリットを発揮する。1列目の助手席が簡単に畳める構造なこともあって、様々なライフシーンをサポートする多用途性を秘めている。
ちなみに全グレードにおいて助手席側スライドドアは電動タイプを標準装備。イージークローザー機能も備えている。運転席側の電動機構も一部グレードに標準装備される。
搭載エンジンは2タイプ。高性能の2.0L VVT-iD-4エンジン(1AZ-FSE型)は、直列4気筒DOHC16Vで、最高出力155ps/6000rpm、最大トルク19.6kg-m/4000rpmを発揮。もう一方の1.8L VVT-iエンジン(1ZZ-FE型)は、同じく直列4気筒DOHC16Vで、最高出力132ps/6000rpm、最大トルク17.3kg-m/4200rpmを発生する。2LにはFFのほか4WDモデルもラインアップ。トランスミッションは、2Lモデルが無段変速機のスーパーCVT-iで、エアロパーツを纏うプラタナ・グレードでは7速スポーツシーケンシャルシフトマチックを採用。1.8Lは、4速ATのスーパーECTを搭載した。走りの実力は平均レベルといったところだが、アイシスの個性はユーティリティ。単に3列シートのミニバンというだけでなく、フレンドリーな使い勝手が光るマルチモデルという性格の持ち主だ。
アイシスは、2007年5月にマイナーチェンジを、2009年9月には変更箇所が多岐に渡る一部改良を受けている。この2回の改良ではどちらもエクステリアに多くの手を加えた。2007年5月のマイナーチェンジでは、プロジェクター式ヘッドランプの採用のほか、フロントのバンパーや、グリル、ヘッドランプ、リヤガーニッシュやコンビネーションランプのデザインをリファイン。ホイールデザインも見直し、いちだんとスタイリッシュなエクステリアへと変身させた。室内ではメーターやステアリングホイールの意匠変更、シート&ドアトリムの変更で、質感をアップ。パドルシフトの採用(一部グレード)もこのマイナーチェンジのタイミングで行われた。
2009年9月の改良では、全車に環境性能と動力性能を両立する新世代エンジン動弁機構「バルブマチック」を搭載するなど燃費性能の引き上げがメインテーマだったが、フロントグリル、フロントエンブレム、バックドアアウトサイドガーニッシュなどのデザインの変更も同時に行っている。またこの時、プラタナ系のヘッドランプエクステンションにブラックメタリックを採用している。