レガシィ 【2009,2010,2011.2012,2013,2014】

“GTイノベーション”をテーマに開発された5代目

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“プレミアムブランド”を目指した新戦略

 富士重工業(現SUBARU)は2002年5月に、2002年度から2006年度を期間とした新中期経営計画となる「FDR-1」(Fuji Dynamic Revolution-1)をスタートさせる。核となる目標は「新たな価値創造への挑戦」。具体的には、「存在感と魅力ある企業」そして「プレミアムブランドをもつグローバルプレーヤー」への躍進を掲げ、2010年までには人の心へ響く技術でカテゴリーナンバー1の商品・販売・サービスを提供し、世界に誇れる高収益な企業体を構築することを目指した。

 富士重工業はFDR-1の具現化策として、5代目となる新型レガシィ・シリーズの全面改良をコアプロジェクトに据える。そして世界市場で通用するプレミアムカーに仕立てるために、日本だけではなく海外市場、とくに北米マーケットを重視して開発を推進する決定した。

開発テーマは“グランドツーリング・イノベーション”

 次世代レガシィ・シリーズを企画する際、開発陣は商品テーマとして“グランドツーリング・イノベーション”を掲げた。具体的には“ドライバーズファン”“パッセンジャーズファン”“エコパーマンス”という3項目の実現を目指した。ボディタイプはセダンのB4、ツーリングワゴン、SUVのアウトバックという3タイプを設定する。

 新型のパッケージングは、従来型に対してボディ寸法を拡大したうえで室内長と幅、高さを増やし、すべての席で十分なゆとりが感じられるキャビンスペースを構築する。ボディ自体は超高張力鋼板を要所に配置するなどして剛性強化と軽量化の両立を果たしたほか、ドア形状をサッシュレスからサッシュ(窓枠)付きにしさらに開口部の拡大を図った。

 エクステリアに関しては“力強さ”と“存在感”をテーマにレガシィらしいスポーティさや機能性、さらに新しさを感じさせるデザインで構成する。具体的には、B4がシャープなエッジやサイドのキャラクターラインなどを融合させた引き締まった造形。ツーリングワゴンは快適な居住空間を想起させる伸びやかで躍動的なフォルム。アウトバックは上質かつタフなイメージを目標とした。インテリアでは、室内空間の広さや快適さを感じさせる“ゆとり”と素材の質感によって機能性を感じさせる“品格”を表現。カラーリングはオフブラックとアイボリーを設定する。また、より快適な座り心地とホールド性を両立させたうえで調整幅なども増やした新造形のフロントシートや使い勝手を向上させた収納スペース、先進のナビゲーションシステムおよびオーディオシステムなどを装備した。

パワーユニットは水平対向3機種を設定

 搭載するエンジンは、排気量の拡大および各部の改良を図った水平対向ユニットで、デビュー当初はEJ25型2457cc水平対向4OHC16V・i-AVLS/EJ25型2457cc水平対向4DOHC16Vターボ/EZ36型3629cc水平対向6DOHC24Vという3機種をラインアップする。ベーシックユニットとして設定したのが、自然吸気のEJ25型(2457cc)だ。可変バルブリフト機構のi-AVLSの採用や吸気ポート形状およびピストン形状の変更、カムプロフィールの最適化、新開発の電子制御スロットルと点火プラグの装着、インテークマニホールドの樹脂化、多機能ダクトおよびストッパーロッドの新設などを行ったEJ25型は、新開発CVTの“リニアトロニック”との組み合わせによって、スムーズでゆとりのある走行性能を実現する。パワー&トルクは170ps/23.4kg・mを発揮。そのうえで、平成17年排出ガス基準75%低減レベル(SU-LEV)と平成22年度燃費基準+5〜+20%を達成した。

 スポーツユニットとして採用されたのが、ターボ付きEJ25型(2457cc)だ。最大の特徴は、ターボユニットをエンジン前方下部に配置する“直下置きターボ”の新レイアウトを取り入れた点で、これにより排気効率のさらなる向上を実現する。また、ターボユニット自体も新タイプを装備した。パワー&トルクは285ps/35.7kg・mを発生。トランスミッションにはスポーツシフトE-5AT(5速AT)と新設計の6速MTを組み合わせた。

 トップユニットは水平対向6気筒のEZ36型(3629cc)。EZ36型は全域におけるトルクと出力の向上を狙ってデュアルAVCSを内蔵。パワーロスの削減やスムーズな回転フィールなどを実現する目的で各部のフリクション低減を徹底化させた。パワー&トルクは260ps/34.2kg・mを発揮。トランスミッションにはスポーツシフトE-5AT(5速AT)をセットし、平成17年排出ガス基準75%低減レベルを成し遂げた。

“Love Your Life”のキャッチコピーで市場デビュー

 5代目レガシィは、駆動機構に改良版のシンメトリカルAWD(フルタイム4WD)を採用する。シャシー面ではスバル独自の“SIシャシー・コンセプト”のもと、クレードル(ゆりかご)状のフレームにパワーユニットを搭載する「クレードル構造マウント」の採用やダンパー構造の変更およびジオメトリーの最適化を実施した懸架機構(前ストラット/後ダブルウィッシュボーン)の導入などを実施。また、全車に電動パワーステアリングと電動パーキングブレーキ、VDC(横滑り防止装置)を設定した。

 第5世代のレガシィは、まずセダンとアウトバックのプロトタイプが2009年4月開催のニューヨーク国際自動車ショーでワールドプレミアを飾る。そして日本では、同月よりティーザーキャンペーンを開始。翌5月に、5代目レガシィのB4/ツーリングワゴン/アウトバックを市場に放った。グレード展開は、B4およびツーリングワゴンがEJ25型エンジンを採用する2.5i系とターボ付きEJ25型エンジンを搭載する2.5GT系で構成。アウトバックはEJ25型エンジンを採用する2.5i系とEZ36型エンジンを積む3.6R系をラインアップした。また、キャッチコピーには“Love Your Life”と冠し、新型の豊かな世界観を表現。イメージキャラクターには、映画俳優のロバート・デ・ニーロを起用した。
 先進機構の導入はもとより、よりプレミアム性を向上させた5代目レガシィは、国内外で高い評価を獲得する。一方で開発現場ではこの状況に慢心せず、5代目の進化を鋭意図っていった。

マイナーチェンジで先進技術を積極的に採用

 5代目レガシィはデビュー後も改良を重ね、完成度を高めた。2010年5月のマイナーチェンジでは、衝突回避性能をさらに高めたプリクラッシュブレーキやより自然な車速制御を行う全車速追従機能付クルーズコントロールなどによって安全性と利便性をいっそう向上させた先進運転支援システムの「アイサイト(ver.2)」搭載モデルを新設定する。また、LパッケージとSパッケージの仕様装備の充実化やクルーズコントロールの全車標準化なども実施した。

 さらに同年6月には、富士重工業のモータースポーツ統括会社であるSTI(スバルテクニカインターナショナル)がチューニングを手がけた特別仕様車のB4/ツーリングワゴン「2.5GT tS」を発売。11月には、好評のアイサイトを装備したうえで内外装を上質かつスポーティに仕立てた特別仕様車のB4/ツーリングワゴン/アウトバック「アイサイト・スポーツセレクション」をリリースした。

 2011年6月になると、懸架機構の緻密な設定変更による走行性能の進化やアイサイトの性能向上、新グレードの「2.5i/2.5GT アイサイトS Package」の追加などをメインメニューとした一部改良を実施する。また、同年11月にはアイサイトやスポーツアイテムを標準装備化した特別仕様車のB4/ツーリングワゴン「2.5iアイサイト B-SPORT」を市場に放った。
 2012年5月のマイナーチェンジでは、FA20DIT型1998cc直噴水平対向4DOHC16V+ツインスクロール式ターボ(300ps)の新搭載とNA(自然吸気)EJ25型からFB25型2498cc水平対向4DOHC16V(173ps)への換装を行う。FA20DIT型に組み合わせるトランスミッションには、従来型リニアトロニックをベースにトルクコンバータやチェーンなど各部品を強化した高トルク対応リニアトロニックを採用。また、リニアトロニックとして初めてVTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)を導入することで、スポーティ走行に最適なトルク配分制御を可能とした。

 その後もグレード展開の見直し(2013年5月)や特別仕様車の設定など、新鮮味を失わないような販売戦略が積極的に行われた5代目レガシィ・シリーズ。しかし2014年4月になると、「6月末をもって受注を終了する」旨がアナウンスされる。そして同年10月にB4とアウトバックがフルモデルチェンジし、ツーリングワゴンは新型車の「レヴォーグ」が実質的な後継を担うこととなったのである。