ランサー・エボリューションVII 【2001,2002】

第3世代の新ボディに新開発ACDを採用した4WDスポーツ

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第3世代の“ランエボ”の開発

 三菱自動車工業は2000年5月、第6世代のランサーとなる「ランサーセディア」を発売する。ロングホイールベースにビッグキャビン、そして上品で落ち着いた車両デザインを採用した6代目はスポーティな雰囲気が薄く、従来のような“エボリューション”のベース車には適さないように思われた。しかし、そこは高性能スポーツモデルの開発を熟知した三菱自工の技術陣。確固たる思想をもってエボリューション化にチャレンジし、2001年1月に第3世代ボディの“ランエボ”となる「ランサー・エボリューションⅦ」を発表した(発売は同年2月)。

精悍かつ高剛性な戦えるボディ採用

 「進化は世紀を超えた」というキャッチフレーズを冠したエボⅦの新ボディは、サスペンション取り付け部およびボディフレーム結合部の補強や20カ所におよぶ専用リーンフォースメントの追加、ドア開口部のスポット溶接の増し打ち、ストラットタワーバーの装着などにより剛性の大幅アップを図る。また、ボンネットフードやフロントフェンダーといった大型パーツにアルミ材を採用するとともに構造や形状の合理化を実施し、重量増を極力抑えた。ボディの徹底したエアロチューンも敢行。大型フロントバンパーエクステンションやサイドエアダム、アンダースポイラー一体型リアバンパー、エンジンルーム下面を覆う大型アンダーカバー、可変迎角機構付き大型リアスポイラー等の専用パーツを装着し、優れた空力特性を実現する。

 インテリアについては、ドライビングのあらゆるシーンを踏まえ機能や操作性、視認性をきめ細かく検証。リファインを施した。内装色はオフブラックを基調とし、ここに専用の5連スポーツメーター(レッド透過照明常時点灯タイプ)やMOMO製本革巻き3本スポークステアリング、本革巻きシフトノブなどを配する。フロントシートにはレカロ製フルバケットを装着。周辺部の表地には吸放湿性と帯電防止性に優れる“シルクウェーブ”を採用した。

4G63型エンジンの改良と4WDシステムの進化

 エンジンは、進化版の4G63型1997cc直4DOHC16Vツインスクロールターボを搭載する。改良内容は多岐に渡り、ターボタービン形状の見直しやインタークーラーの大型化、3ノズルインタークーラースプレーの組み込み、吸排気系配管の取り回し変更、メインマフラー内への背圧可変式バルブの取り付け、カムシャフトの中空化、ロッカーカバー材質の変更(アルミ→マグネシウム)などを実施。出力および冷却性の向上やユニット自体の軽量化を効果的に達成した。組み合わせるミッションは1速をローギア化、5速をハイギア化した専用セッティングの5速MTを採用。エンジントルクの向上に伴い、クラッチカバーの押しつけ荷重の引き上げやクラッチディスクおよびフライホイール径の大型化も行った。

 駆動系では、前後輪の差動制限を電子制御する新開発のACD(Active Center Differential)を筆頭に、左右後輪の駆動力配分をコントロールして旋回力を制御するAYC(Active Yaw Control)や操舵状態に応じて全輪の制動力をコントロールするスポーツABSなどによってフルタイム4WDシステムを構成する。また、ACDとAYCは1つのコンピュータで統合制御。それぞれの単独制御に比べて、優れた加速性能と操縦安定性能を実現した。先進のドライブ機構を支える足回りにも抜かりはない。フロントサスには熟成度を深めたマクファーソンストラット倒立式を、リアサスにはリファインを図ったマルチリンク式を採用。チューニングに関しては、最適なロールセンター高およびアライメントの設定、バンプストロークの見直し、バネ下重量の低減、クロスメンバー形状の最適化、補強バーの追加などを実施する。組み合わせるタイヤは、高性能ハイグリップコンパウンドを内蔵した専用チューニングの235/45ZR17サイズ。ブレーキ機構にはブレンボ製ベンチレーテッドディスクと大型タンデムブースターを奢った。

WRカーのベース車となったエボⅦ

 ボディおよびプラットフォームとしては第3世代、ランサー・エボリューションとしては第7世代となるランエボⅦのグレード展開は、従来と同様に高性能ロードバージョンの「GSR」と競技用ベース車の「RS」を用意する。GSRの車両価格はⅥ時代よりも安い299万8000円に設定。当時の広報スタッフは「三菱のランエボならではの“走る楽しさ”を、より幅広いお客様に体感してもらえるよう、価格設定を頑張った」と説明していた。

 エボⅦは、三菱車初のWRカーのベース車としても起用される。WRC(世界ラリー選手権)のレギュレーションに則して、エンジンではインタークーラー搭載位置の変更や吸排気系の改良、足回りでは前後マクファーソンストラット式サスペンションの採用、ボディではホイールハウスの拡大などを実施。完成したマシンは「ランサー・エボリューションWRC」を名乗り、2001年10月開催のWRC第11戦サンレモラリーから実戦投入された。

新機構、電子制御可変式多板クラッチのACDとは--

 ランサー・エボリューションⅦでは、センターデフの差動制限システムを従来のVCU(Viscous Coupling Unit)に代えて電子制御可変式多板クラッチのACD(Active Center Differential)を採用した。

 ACDは、走行状況に応じて前後駆動力配分50:50に設定されたセンターデフの前後輪差動制限力をフリー状態から直結状態まで最適にコントロールし、操舵応答性とトラクション性能を高次元で両立させる機構。差動制限力コントロールは室内に配した切替スイッチによりTARMAC(乾いた舗装路面)/GRAVEL(砂利道および濡れた路面)/SNOW(雪道およびアイスバーン)という3モードの任意選択を可能とした。また、パーキングブレーキ操作中は差動制限力をフリーに近い状態とし、ジムカーナ等の競技においてサイドブレーキターンなども行えるように設定していた。