ホンダデザイン11 【1996,1997,1998,1999,2000,2001】

アイデアと個性を追求したコンパクトカー群

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“キュービックパッケージ”を採用した新世代HB

 1990年代後半から2000年代初頭にかけての本田技研工業は“クリエイティブムーバー”と称する新発想レクリエーショナルビークル(RV)を相次いで生み出す一方、量販モデルであるコンパクトカーも積極的に全面改良し、合理的かつ斬新な車両デザインを採用する新世代車を発表していった。

 新世代の第1号は1996年10月に発表された、シティの実質的な後継モデルとなる「ロゴ」だった。基本フォルムは日常域での使い勝手とスタイリングの良さを重視求した、ボンネットは短く、キャビンは長く、背が高い“キュービックパッケージ”。スペース効率を徹底追求し、広くて快適な室内空間と使い勝手のいいラゲッジルームを創出する。ヒップポイントを高めに設定すると同時に広いグラスエリアを設けて、優れた視認性と開放感を実現したことが特長だった。

 内装デザインは、使いやすさにこだわったインパネやカジュアルウェア感覚で仕立てたシート&ドアトリム地、多彩な収納スペースなどが訴求点。ロゴは“ハーフスロットル高性能”と称する普段走りを重視したパフォーマンスやクラストップレベルの安全性能と相まって、新時代に求められるタウンカーを具現化していた。

楽しさを創造した“Jムーバー”のキャパ

 本田技研工業はクリエイティブムーバーに続くRV戦略として“Small is Smart”の考えに基づく“Jムーバー”(楽しさ創造車)を創出する。その第1弾として1998年4月に新世代マルチワゴンの「キャパ」をリリースした。キャパの基本骨格は、人のためのスペース=ヒューマンデッキとメカのためのスペース=メカデッキをセパレートする“デュアルデッキパッケージ”の発想から編み出した新設計。二重フロア構造ボディで構成し、フラットフロアによる広くて快適な室内空間と高い衝突安全性能を実現した。

 エクステリアについては、全長3775×全幅1640×全高1650mmのコンパクトかつハイトなフォルムを構築したうえで、力強さと安定感をもたせた台形スタイルや広いグラスエリア、大型のマルチリフレクターヘッドライトおよびバンパーなどを採用して存在感を主張する。一方、インテリアに関してはシンプルかつ機能性に優れるインパネに落ち着きのあるファブリックを用いたシート、豊富な収納スペースなどで居心地のいい空間を創造。また、スライド&リクライニング&フォールダウン機構を備えたマルチモードリアシートや助手席フォールダウン機構などを組み込んで多彩なシートアレンジを可能としていた。

新ジャンルSUV、HR-V登場!

 キャパの登場から5カ月ほどが経過した9月になると、Jムーバーの第2弾となる新ジャンルカーの「HR-V」がデビューする。2BOXボディで仕立てた車両デザインのキーワードはアーバンクール。ユーザー層として活動的な若者を想定し、全高を抑えながら地上高を高くとった “ハイライダー”スタイルを構築した。ちなみに、HR-Vのエクステリアについて当時の開発スタッフは「かつて人気を博したコンパクトスポーツのCR-Xを、RV的な要素を踏まえながら現代的に再現した」と語っていた。

 インテリアに関しては上下2色に分けたツートンのインパネや大径2眼メーター、ブルーを基調としたカラーリングなどでスポーティかつカジュアルなムードを演出する。また、後席にはワンモーションでフラット化できる5対5分割可倒式シートをセット。収納スペースとして、シートバック&ドアライニング・ネットポケットや2段グローブボックスなども装備した。

低床ビッグキャビンを実現した21世紀型コンパクト

 2001年6月には、後のコンパクトカーのベンチマークとなる画期的な1台が登場する。新開発のグローバル・スモールプラットフォームを採用する新世代コンパクトハッチバック車の「フィット」だ。新プラットフォームは燃料タンクを車体中央に配したセンタータンクレイアウトで仕立て、そのタンクの四方を囲むようにクロスメンバーとフロアフレームをセット。同時に、Gコントロール技術を駆使した衝突安全ボディの構築やショートノーズ設計による全長の抑制、i-DSIエンジンおよび前後サスペンションユニットのコンパクト化などにより、高剛性かつスペース効率に優れる基本骨格を実現した。

 エクステリアに関しては“ZENSHIN(全身、前進、全新)キャビンフォルム”をコンセプトに、基本骨格を活かしたワンモーションスタイルで構成。さらに、空力特性も徹底追求して燃費と静粛性の向上を図った。インテリアについては、“ダイナミックレイヤードスタイル”をコンセプトにデザイン。内装全体に大胆な放射物のモチーフを採用し、さらにメタリックパネルやアルミ調独立3眼メーターなどを装備してスポーティなイメージを主張する。簡単操作で4つのモードを可能にした“ウルトラシート”を組み込んで多彩なアレンジを可能にした点も、フィットのポイントだった。