IDSコンセプト 【2015】

自動運転を実現した2020年代のファーストカー

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意のままの動きを大切にした自動運転車

 2015年の東京モーターショーで公開された日産IDSコンセプトは、2020年代に本格普及が予定されている「自動運転」を実現した先行開発車である。IDSコンセプトに採用された各種の先進技術は、今後の日産各車への搭載が予定されるものばかり。その意味で、最も現実的な未来のクルマといえる。

 日産は創業以来、「移動することで人生はより豊かになり、人々は進化していく」という基本理念のもと自動車を作り続けてきた。自動運転を掲げるIDSコンセプトでもそれは変わらないという。IDSコンセプトが追求したのは、ある時はアクティブに運転を楽しみ、そしてある時には運転から開放され、より創造的な時間を楽しめるクルマだ。大切にしたポイントは自らがドライブするときも自動運転時も、ドライバーの意のままの動くこと。「IDSコンセプトは、ドライバーの“認知、判断、操作”をサポートすることによって、交通事故の発生原因の約9割を占める人的ミスを補い、より安全で、効率的、そしてなにより楽しいドライビングを達成する近未来の理想像」と開発者は説明する。

自動運転時は室内からステアリングが消滅

 ドライビングモードは、ドライバーの意思で操作するMD(マニュアルドライブ)モードと、自動運転となるPD(パイロットドライブ)モードの2種。自動運転のPDモードでは、車両に搭載された各種のセンサーが、周囲の状況を常にモニタリング。AI(人工知能)が現在の運転シーンを正しく把握した上で、先にある状況を予測。その予測に基づき、安全で正確な運転行動をとる。しかもAIは周囲の状況だけでなく、ドライバーのニーズや癖、好みを分析。加速やブレーキング、コーナリングなど、あらゆるドライブシーンでドライバーが心地よいと感じる走行を心がける。IDSコンセプトの自動運転は、ベルトコンベアのようにA地点からB地点に移動することを主眼にしたものではない。あくまでドライブの楽しさを追求したものなのである。

 IDSコンセプトのドライブを楽しくする演出は、PDモード時の室内環境に反映されている。PDモード選択時は、ドライバー正面からステアリングが姿を消し、大型のモニターが出現。さらに4つのシートは内側に少しだけ回転することで、すべての乗員が同じ風景を共有できるようになる。まるでリビングルームでリラックスしているような、いままでにないドライビング体験が味わえるのである。

 一方、MDモードを選ぶとパーソナルなドライビング空間に変身。すべてのシートが前方を向き、ドライバー正面には、乗馬で使う手綱をイメージしたステアリングや、メーター、ヘッドアップディスプレーが出現。インテリア照明はクールなブルーに変わる。

外部とコミュニケーション機能も万全

 ユニークなのは、歩行者など外部とのコミュニケーション機能だ。インテンション・インジケーターと呼ばれるボディサイドの特徴的な水平基調のラインは、周囲に人がいることを検知するとラインが青く発光。さらに点滅する光でクルマが相手を認知していることを知らせる。さらにフロントウィンドー下部には、外向けのディスプレイを配置。「おさきにどうぞ」などクルマからのメッセージを表示する。自動運転というと、無機的なイメージがあるが、IDSコンセプトはそうではない。周囲に安心感を与え、フレンドリーな交通環境を作り出す新世代車でもある。

 IDSコンセプトのドライブトレーンはEV。走行時にCO2をいっさい排出しないゼロエミッション車だ。60kWhという大容量バッテリーを搭載するとともに、高い空力特性を誇るスタイリング、フルカーボン製の軽量ボディとの相乗効果で長い航続距離を実現。スマートフォンなどから操作可能なリモート駐車(パイロットパーキング)技術と、ワイヤレスで充電できる非接触充電技術を搭載しており、ドライバーは駐車から充電までの操作をクルマにすべて委ねることもできる。
 IDSコンセプトは、移動という概念を新しくする自由な発想に溢れたクルマだ。モビリティの豊かな未来を予見する意欲作である。