シャルマン 【1981,1982,1983,1984,1985,1986,1987,1988】

上質な仕立てのダイハツ流フラッグシップ

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ダイハツ流を貫いたフラッグシップサルーン

 ダイハツのフラッグシップとなるシャルマンは、1981年10月に2代目に進化した。フラッグシップとは言うもののベースモデルはトヨタのカローラで、いわば身近なプレステージモデルだった。トヨタ傘下で、軽自動車を中心にコンパクトモデルを主力とするダイハツにとって、フラッグシップは主力外。ラインアップ上、上級モデルを必要としたのだが、あくまでダイハツ流のフラッグシップとしていたことが潔かった。

 1974年登場の初代がカローラ20系をベースにしていたのに対し、2代目シャルマンはTE70型系カローラを基本としていた。TE70型のカローラは1979年にデビューしている。したがってメカニズム面には新鮮な印象はない。しかしシャルマンのセールスポイントは、あくまでダイハツ流の上質さ。その意味では信頼性抜群のカローラは最適なベースモデルと言えた。

入念な静粛設計がカローラとの違いを訴求

 シャルマンとカローラの共通パーツは、フロアパン、足回り、エンジンなど。つまり2400mmのホイールベースを持つFRシャシー、フロントがストラット式、リアが4リンク式のサスペンション、そして1290ccの4K-U型(74ps.10.7kg・m)と1452ccの3A-U型(80ps/11.8kg・m)の2種から選べたエンジンはカローラと共通だった。とはいえ足回りのセッティングはシャルマン独自としており、カローラ以上にソフトな乗り心地重視の味付けとなっていた。遮音材をカローラ以上に奢った入念な静粛設計も特徴で、エンジン騒音は全般的に低く抑えられていた。大衆車のカローラに対し、シャルマンはあくまで上級指向のクルマ、キャラクターの差が乗るとすぐに実感できる仕立てだったのである。

 シャルマンの個性を表現したのは独自の内外装である。6ライトの大きなグラスエリアを持つスタイリングは、オーソドックスで伸びやかなもの。どことなく当時のマークIIセダンを彷彿させる落ち着き感を持っていた。全長4200mm×全幅1625mm×全高1380mmのサイズはカローラと同等だったものの、風格という点でははるかに勝っていた。まさに“小さな高級車”のイメージだったのである。とくに上級グレードの1500アルティアと1500LGXに設定されていたツートーン塗装を選ぶと、その印象はさらに明確となった。

クラウンのイメージが漂った豪華な室内

 室内は外観以上にカローラと違っていた。1500アルティアではシートが前後ともにルーズクッションタイプのモケット張りとなり、後席にはセンターアームレストとヘッドレストをビルトイン。インスツルメントパネルも各種メーターを配置した大型クラスターを採用し、木目パネルを配するなど豪華な印象に仕上げていた。室内はマークIIというよりクラウンのイメージだったのだ。

 装備は充実しており、1500アルティアはパワーステアリング、パワーウィンドー、集中ドアロックをはじめ、FM付きオーディオ、デジタル時計、ティンテッドクールガラス、タコメーターなどをすべて標準で備えていた。まさにフラッグシップの味わいだったのである。さすがに後席にVIPが座るショーファードリブンという雰囲気こそなかったが、行動的なVIPが自らステアリングを握るに相応しいムードの持ち主だった。

 2代目シャルマンは、ダイハツの関係者や熱烈なダイハツ信奉者に高い支持を受ける。しかし残念なことに一般のユーザーからは大きな共感は得られなかった。1980年代は、まだまだクルマは大きくパワフルなほど素晴らしいと考えられていた時代だったからだ。シャルマンのように適度なサイズの賢い高級車を受け入れるほど、日本のモータリーゼーションは成熟していなかったのである。

広告ビジュアルに立木義浩作品を採用!

 シャルマンの広告展開はなかなかおしゃれだった。カタログを含む広告メインビジュアルに写真家、立木義浩の撮り下ろし作品を採用したのだ。“ロマンチック・アーバン・ストリート”をテーマに都会の風景のなかにシャルマンを置いたビジュアルは、モダンで幻想的だった。

 アーバンクルーザーというシャルマンの個性を見事に表現しており、光りと影が織りなすハイコントラストの作品は完成度が高かった。カタログには「クロスオーバーした時代性が魅力だ」というコピーとともに立木義浩自身が登場し、作品だけでなく彼自身がCMキャラクターの役を引き受けていた。著名人を広告展開に起用するのはいわば常套手法だが、作品を含めての起用はユニークと言えた。