スタンザ・リゾート 【1979,1980,1981】

休日が待ち遠しくなったマルチユース5ドア

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多様化するバカンスの最前線、と表現された斬新5ドア

 セドリックの弟分としてバイオレットをベースに開発された“小さな高級車”であるスタンザに加わった新たな個性、それが5ドアハッチバックのリゾートだった。1979年8月にラインアップに加わったスタンザ・リゾートは「南仏のリゾート地、ニースの香りをのせた5ドアハッチバック」とカタログで表現されていた。“積極的な行動派におくる新しい乗用車”であり、“多様化するバカンスの最前線”だったのである。

 スタンザ・リゾートが登場した1979年は、乗用車といえば4ドアのセダンが主流だった。ステーションワゴンやミニバンはまだ市民権を得ていなかった。しかしその一方で、経済成長の恩恵でライフスタイルは大きな広がりを見せていた。週末を別荘で過ごす富裕層が生まれていたし、夏や冬に長期休暇を取り家族とともにゆっくり過ごすのが憧れになっていた。スタンザ・リゾートは、豊かなライフスタイルをサポートする新種のマルチユースサルーンとして企画されたのだ。スタンザ本来の快適性と、5ドアレイアウトが生むワゴン感覚のユーティリティを融合した斬新なモデルだったのである。

クーペ感覚のスポーティなスタイリング

 リゾートの特徴は、伸びやかなスタイリングに込められていた。ボディの前半はセダンと100%高級だが、リアドア後方からは完全な専用デザインとなり、大きく寝かしたリアピラーがクーペ的なスポーティさを表現。追加されたクォーターウィンドウを持つ大きなグラスエリアが開放的なイメージを訴求した。5ドアハッチナックだけにリアには大型のリアゲートを備えユーティリティも入念に計算されていた。

 折り畳み可能なリアシートのシートバックは2分割構成で、折り畳むとワンタッチでフラットな荷室が作り出せた。リアにデフなどの構造物を持つFRレイアウトだけに荷室はそれほど深くなかったが、それでもセダンと比較すると便利さは圧倒的。確かにどこかに遊びに出掛けたくなるユーティリティの持ち主と言えた。とくに上級グレードに設定したベージュとゴールドのトーンオントーンの派手なボディカラーの場合は、従来にないスペシャルなイメージを発散した。

ナチュラルな走り味でライバルを圧倒

 リゾートのモデル構成は、セダンと同様で1595ccのZ16型(95ps/13.5kg・m)を搭載した1600シリーズと、1770ccのZ18型キャブレター仕様(105ps/15kg・m)とZ18E型インジェクション仕様(115ps/15.5kg・m)が選べる1800シリーズを用意していた。販売主力モデルは1800シリーズで、Z18E型ユニットを積む最上級のX-Eグレードでは4速マニュアル、5速マニュアル、そして3速オートマチックの3種のトランスミッションを選べた。

 サスペンションはフロントがストラット式、リアが4リンク式の組み合わせだ。とくに凝ったレイアウトではないが、優れた前後重量バランスとセッティングの妙でロードホールディングは優秀。乗り心地に優れたナチュラルな走り味はトヨタ・カリーナやいすゞジェミニといったライバルを確実に凌いでいた。ちなみに全車が搭載するZ型エンジンは、1気筒当たり2つのプラグを配置することで燃焼効率を高めた高度な設計を持ち、昭和53年度の日本機械学会技術賞を受賞するなど専門家からも高い評価を得ていた逸品だった。

 セダンを上回るユーティリティと、上質さ、走りのよさを高次元でバランスさせたスタンザ・リゾートは魅力的なクルマだった。しかし販売成績は期待したほどには伸びなかった。販売価格がセダンと比較して高価だったこともあるが、コンセプトがやや斬新すぎたのかもしれない。一部の先進層には愛されたものの、メジャーな存在にはなれなかった。時代を先駆ける者の悲哀をスタンザ・リゾートも味わったのである。