三菱デザイン7 【1983,1984,1985,1986】

1980年代中盤に向けたFFエアロデザインの創出

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エアウエッジシェイプを導入した3代目Σ

 独自のエンジニアリングを駆使してスタイリングを創出する三菱自動車工業の開発姿勢は、1980年代中盤になると“エアロダイナミクス”を主軸に置いた新発想の造形を相次いで生み出していく。同時に、パッケージ効率に優れるフロントエンジン&フロントドライブ(FF)のレイアウトを採用し、車両デザインを全面的に刷新していった。

 1983年8月には、3代目となるギャランΣ/エテルナΣが市場デビューを果たす(ギャランとしては5代目)。開発テーマは「新しい発想による、ゆとりと満足感の高い新時代のセダン」。駆動システムをFF方式に一新したうえで、“新しいスタイルの実現”“新しい広さの追求”“新しい走りの達成”を目指した。スタイルに関しては、エアロダイナミクス技術を駆使した空力特性と広い居住空間を融合させた新しい“エアウエッジシェイプ”を創出した点がトピックとなる。さらに、スマートにまとめたフロントマスクやシャープなラインを描くサイドビュー、広くて開放的なウィンドウグラフィックなどを採用し、精悍かつ新鮮なセダンフォルムに仕立てた。インテリアについては、広がり感のあるダッシュボード&ドアトリム造形に厳選したシート表地、最新の快適装備などでミディアムセダンらしい上級感を演出する。

 1984年10月になると、3代目“Σ”に三菱車初の4ドアハードトップ仕様が追加される。シリーズの上級スポーティモデルに位置するハードトップは、スカート一体式大型ウレタンバンパーや大型異形4灯ハロゲンヘッドランプ、専用メッキグリル、クロームモールなどを組み込んで見た目のラグジュアリー感を強調。インテリアではハンドルリモコンスイッチに電子制御パワーステアリング、フルアジャスタブル機構およびベロア表地のシート等を装着してハイグレードに仕立てていた。

2代目ミラージュはタマゴの形からフォルムを発想

 3代目“Σ”の登場から2カ月ほどが経過した1983年10月、小型ハッチバック&セダンのミラージュと兄弟車でセダンモデルのランサー・フィオーレが新型に切り替わる。

 車両デザインとしては、タマゴの形から発想した角がなく滑らかなフォルムによって優れた空力特性を実現したことが特徴。また、開口部をフェンダー部にまで回り込ませたフロントフードや上部を直線ラインで仕立てたリアホイールハウス、スクエア基調の前後ランプ、ボディ同色でまとめたフロントグリル&リアガーニッシュなどによってオリジナリティあふれる斬新なルックスを創出した。

 外観と同様、インテリアの造形も斬新だった。ダッシュボードはステアリング基部およびメーター部を前方に張り出させたうえで、スイッチ類を機能的に配置。デジタル式のメーターや2本スポークのステアリング、ツートンのカラーリングなども人目を惹いた。また、エンジンマウントやサスペンション支持部を新設計したうえで防音・防振材を強化した結果、室内の快適性も大幅に高まる。ガラスエリアを広くとって乗員の開放感を演出した点も、2代目ミラージュ&ランサー・フィオーレのアピールポイントだった。

“スニーカールックスタイル”を創出した5代目ミニカ

 小型乗用車の全面改良を図る一方、三菱自工の開発陣は軽自動車の刷新にも大いに力を入れる。そして1984年2月には5代目となる新型ミニカ、およびその商用バンであるミニカ・エコノを市場に放った。

 新しいミニカは、駆動レイアウトがFF方式に一新される。そのうえで、ロングホイールベースにワイドトレッド、ショートノーズ、トールキャビンの“スニーカールックスタイル”を構築し、リッターカーに迫る広い室内空間を実現した。各部のデザインにも工夫が凝らされ、フロントエアダム一体の大型樹脂バンパーや明るく開放的なウィンドウグラフィック、ボディサイドとリアコンビネーションランプ&ガーニッシュを一体化させたキャラクターラインなどで個性を打ち出す。また、ボディ全体のフラッシュサーフェス化を図った結果、空気抵抗の削減も成し遂げた。

 インテリアについては、広がった居住空間を活かすアレンジが随所に施された。ダッシュボードは平面部に物置スペースを設けると同時に、エアダクトやスピーカーを効果的に配置。台形指針のスピードメーターや太さを変えた水平2本スポークのステアリング(スポーツグレードは3本スポーク)、メインとサイドで色分けしたシートのカラーリングなど、各パーツのアレンジでも個性を打ち出した。