マツダデザイン11 【1994,1995,1996,1997】

ブランド復権を目指して車両デザインを大幅刷新

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オーバルシェイプが印象的だった8代目ファミリア

 販売網や車種ラインアップの拡大、海外市場への積極的な進出など、好景気をバックボーンに展開したマツダの攻めの戦略は、バブルの崩壊によって方向転換を余儀なくされた。1990年代半ばにはディーラー網や不採算車種の整理を図っていく。一方で開発現場では、ブランドの再建を目指して新しい車両デザインのモデルを懸命に開発していった。

 1994年6月には、第8世代となるファミリアを発売する。ボディタイプを4ドアセダンと3ドアハッチバックのNEOの2タイプに絞った8代目は、“ベストコンパクト”をキーワードに基本フォルムを曲面基調のオーバルシェイプで構成。そのうえでセダンは全長と全高、ホイールベースを旧型より拡大して居住空間を広げ、一方のNEOはワンモーションスタイルを採用して新しいハッチバックのカタチを創出する。また、2車種ともに衝突安全性能を強化し、ワールドワイドで通用する安全ボディを実現した。インテリアは、ラウンディッシュなインパネ造形や一体感のあるドアトリムなどを基本に、セダンはメーター部とセンター部を一体形状とした上品な雰囲気、NEOはメーターナセルを独立タイプとした個性的なコクピットを演出。前席には乗員をしっかりと包み込み、腰に負担をかけないショルダーサポートシートを設定した。

正統派セダンを標榜した6代目カペラ

 1994年8月になると、セダンのカペラが復活を果たす。“正統派セダン”と称した6代目は、クロノスのGEプラットフォームをベースに5ナンバー規格の4ドアセダンボディを構築。日本の交通環境にフィットしたボディサイズと飽きのこないオーソドックスで上品な3ボックスデザインは、まさにセダンのスタンダードといえた。また、6代目カペラは新衝突安全基準を満たした新しい軽量高剛性安全ボディを採用。同時に4W-ABSやサイドインパクトバーといったセーフティ機構も組み込み、高い安全性を実現していた。

 インテリアについては、曲面構成のインパネにワイド&ロングのキャビン、グラスエリアを大きくとった開放的な視界などで、大人4名がゆったり過ごせる快適な室内空間を創出する。また、前席には腰部の第4/5腰椎をしっかりと支えるとともに臀部の前ずれを防ぐ新形状の形成医学フロントシートを、後席には格納式センターアームレスト付きの6対4分割可倒式リアシートを装備した。

見栄え品質と機能性を高めた多目的乗用車

 1995年10月には、多目的上級サルーンを謳うアンフィニMPVの大がかりなマイナーチェンジを実施する。外装ではグリルやヘッドランプ、バンパーといったフロント回りのデザインを一新し、リアもコンビネーションランプやバンパーなどを変更。全長が195mmほど伸びるとともに、見た目の上質さや存在感がアップする。内装では運転席&助手席SRSエアバッグを標準化しつつ、インパネのデザインをラウンディッシュな形状へと刷新。シート表地および柄も新しくした。

コンパクトクラスの新世代ハイトワゴンの登場

 1996年8月になると、新ジャンルのコンパクトワゴンを市場に放つ。“自由型ワゴン”を標榜する「デミオ」だ。イメージキャラクターには、米国NBAの人気選手であるスコッティ・ピッペンを起用。203cmの長身選手とコンパクトで機能的なデミオとの対比が、大きな話題を呼ぶ。また、同時期にはフォード・ブランドからOEM車の「フェスティバ・ミニワゴン」がリリースされた。

 デミオのパッケージングは非常に合理的だった。プラットフォームには既存のDBタイプの改良版であるDWタイプを採用。ホイールべースは2390mmに設定し、新設計の衝撃吸収高強度ボディと組み合わせる。一方で、全長×全幅を3800×1670mmとコンパクトに収めたうえで全高は1535mmとたっぷりとり、広い室内空間を持つ2BOXのハイトワゴンスタイルを構築した。エクステリア自体にも工夫を凝らし、ブラックアウトしたグリルに横長のヘッドランプユニットを配した精悍なフロントマスクや開放感あふれる広いグラスエリア、大型コンビネーションランプを組み込んだシンプルなリアビューによって独特の“道具感”を創出する。RV的な要素の表現として、ルーフレールなども設定した。

 インテリアに関しては、大きなキャビンルームと多彩なシートアレンジが特長となる。キャビンは背が高くてスクエアなボディ形状の効果で、頭上と肩まわりの余裕を実現。ヒップポイントを高めに設定して、乗降性も引き上げる。シートについては、後席にスライドおよびリクライニング機構とダブルホールディング機構、ショルダーレスト脱着機構を、前席にフルフラット機構を内蔵。乗車人数や積載物などの状況に合わせて、多様なシートアレンジを選べるように工夫していた。