ビガー 【1985,1986,1987,1988,1989】
スペシャルティ感覚の国際派セダン
レジェンドという2.0&2.5Lクラスの高級セダンが登場(1985年)する以前のホンダでは、1.8&2.0Lクラスのアコードがトップモデルであった。そのアコードは、アメリカ市場へ本格進出する際の先兵となり、アメリカのオハイオ州に建設した新工場で生産され、グローバル市場で大きな成功を収める。このアメリカでの成功の余勢を駆って、日本市場でも大きな話題を生みだしたのが、1980年代半ばのホンダを支えたアコード/ビガーそしてプレリュードの3兄弟車だった。
エンジンやトランスミッション、サスペンションなどの基本的なコンポーネンツは共用するものの、アコード/ビガーとプレリュードの性格は見事に異なるものとなっていた。アコード/ビガーは実用的なミディアムサイズの4ドアセダンであり、プレリュードはスポーティな2ドアクーペとされた。アコード/ビガーは細部を除いてボディを共用しているが、販売チャンネルが異なっていた。アコードはプリモ/クリオ店扱いとなり、ビガーはプレリュードと共にベルノ店扱いとなる。この時代はホンダだけではなく、各メーカーとも販売チャンネルの拡大に積極的だった。
1985年に登場した2代目ビガーのスタイリングは、この時代を象徴するシャープな面を基調としたもので、側面衝突安全性に対する規制が今日ほど厳しく無かったことから、ウェストラインは低くされており、ガラスエリアの広さもあって四方の視界は素晴らしく良い。空気抵抗係数はCd=0.32と優れた値となっている。グリルレスのフロントエンドやリトラクタブル・ヘッドライトも空気抵抗の低減に大きく貢献している。基本的にアコードと共通デザインだったが、ビガーはリアのナンバーがバンパー下部に配置されていた。ボディタイプは4ドアセダン1車種のみだった。
新設計となるエンジンは、水冷直列4気筒DOHC16バルブで、排気量は1843cc(CVキャブレター2基装備)と1958cc(電子制御燃料噴射装置装備)の2種、他に従来の1.8リッター・エンジンを改良した排気量1829ccの直列4気筒SOHC12バルブ(2バレル・キャブレター1基装備)があった。1958cc仕様にはホンダの独自開発による電子制御燃料噴射装置PGM‐FIが装備される。DOHCエンジンのカムカバーは、そのころ大活躍をしていたF1エンジンのそれを想わせるスタイルが盛り込まれており、ホンダのモータースポーツに寄せる熱いスピリットが感じられたものだ。トランスミッションは5速MTと4速ATを選ぶことが出来た。車重は1030㎏前後とこのクラスとしては十分軽かった。
高級車としての快適装備を満載したビガーは、ホンダの上級乗用車生産への扉を開いたモデルでもあった。アコードの影に隠れているが名車である。