コルサ 【1994,1995,1996,1997,1998,1999】

まじめ設計。使いやすく安全な良質コンパクト

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信頼性とコストパフォーマンスに優れた5代目の誕生

 5代目コルサは、BROS車のターセル/カローラIIとともに、1994年9月に登場した。キャッチコピーは“新しいスタンダード・コンパクト”。その言葉どおり、コンパクトカーとしての基本をまじめに追求していた。目新しい新技術の投入こそ控えられていたが、優れた安全性、取り回し性、信頼性、燃費を含めた経済性を高次元でバランスさせた良質車だった。

 ボディタイプは、従来どおり4ドアセダンと3ドアHBの2タイプで構成。エンジンは1496ccと1331ccの直4DOHC16Vガソリン仕様と、1453cc直4OHCディーゼルの計3種。トランスミッションはグレードに応じ4速&5速MTと、3速&4速ATを組み合わせていた。駆動方式はFFを基本に、一部グレードでは4WDが選べた。実用燃費の指標となる10・15モード燃費はFF仕様の1.5ℓ/5速MT車で19km/ℓ。燃費はクラストップ級の数値を誇り、ハイレベルの経済性を実現していた。

 ちなみにコルサは、パワーユニットはもちろん、足回りなども含めて、他のトヨタ車でおなじみのユニットで構成していた。これは定評のあるメカニズムを用いることで、信頼性を高め、さらに車両価格をリーズナブルにするための工夫といえた。コンパクトカーにとって、信頼性や車両価格の安さは、必須条件のひとつ。熱心なマニアの目で見ると、斬新なメカニズムの見当たらないコルサは、やや寂しい存在と映ったが、それは本当の意味でのユーザーメリットを考えての、設計者の良心だった。

 ボディサイズはセダンが全長4120mm、全幅1660mm、全高1370mm。HBは全長が205mmm短い3915mmで、全幅と全高はセダンと共通。ホイールベースは両ボディとも2380mmの設定だった。当時、弟分だったスターレットよりやや大きく、兄貴分のカローラよりひと回り小さい絶妙なサイズ設定であり、日本の狭い道でも持て余す心配はなかった。ちなみに最小回転半径は4.5〜4.9mと小回りが利いた。

クリーンでシンプルな造形。室内は開放感を強調

 スタイリングはセダン、HBともにクリーンでシンプルな造形でまとめられていた。個性よりも誰にとっても好かれることをテーマにしており、その目標は見事に達成されていた。もちろんデザインはおとなしいだけではなかった。ドライビングポジションと各ピラーの配置、フードの高さなどを絶妙に計算し、良好な視界を実現していたのだ。運転席に座るとクルマの前端や後端が把握しやすく、実に運転しやすかった。空気抵抗も吟味されており、セダンではクラストップ級の0.32をマークした。

 インテリアは、実質的な広さはもとより、大きなグラスエリアや、ラウンディッシュなインパネデザインで心理的な開放感も大切に設計されていた。手触りのソフトなファブリックで仕立てた大型シートを装着し、ベーシックグレードを除く運転席ドアガラスにはUVカット仕様を採用。エンジン回転数感応型パワーステやワイヤレスリモコンドアロック、パワーウィンドウなど装備も充実していた。

充実の安全性能。事故に遭わず、事故から乗員を守ることを実践

 コルサ最大のセールスポイントは安全性にあった。事故を未然に防ぐアクティブセーフティと、不幸な事故からパッセンジャーを守るパッシブセーフティの両面を積極的に追求、ハイレベルな安全性能を実現する。
 アクティブセーフティの分野では、前述の優れた視界はもとより、「走る」「曲がる」「止まる」というクルマとしての基本性能を見つめ直し、事故に遭わないクルマ作りを実践した。

 パッシブセーフティの面では、日本だけでなくアメリカの基準にも適合した安全設計の衝撃吸収ボディを採用。とくに側面衝突に対してはドアトリムとクォータートリム内に新たな衝撃吸収構造を盛り込んだ。コルサは「コンパクトカーは事故のときに不安」という通念を払拭するセーフティ性能を誇った。
 コンパクトカーは生活に密着したクルマである。コルサはコンパクトカーの本質を見つめ、実質機能を磨き込んだ実力車だった。地味な印象があるものの、トヨタのクルマ哲学が結実した1台といえた。