パルサーGTi 【1995,1996,1997,1998,1999,2000】

さりげなく速い!欧州テーストの快足ホットハッチ

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パルサーの個性はヨーロピアン感覚!

 パルサーは日産の欧州戦略車種として独自のポジショニングを築いてきた。代を重ねるごとにサニーとの部品共用比率は高まってはいたが、そのきびきびとした走り味と、スペース効率を重視した合理的なパッケージングはパルサーの個性であり、魅力と言えた。1995年1月に登場した5代目も基本キャラクターは不変だった。なかでも新たに“セリエ”というサブネームを名乗るようになった3ドアハッチバックは、キャビン空間を広く採ったロングルーフ・デザインを採用し、一段とヨーロピアン感覚を鮮明にする。

 セリエのなかで最もパルサーらしさを主張したのが、スポーティモデルのGTiである。コンパクトなボディに大排気量エンジンを搭載する手法は、魅力的なスポーツモデルを生み出す常套手段だが、パルサーGTiもまさにそんな1台だった。ちなみに欧州ではVWゴルフGTIを筆頭に、コンパクトなハッチバックボディにパワフルなエンジンを積んだスポーツモデルが“ホットハッチ”と呼ばれ高い人気を獲得していたが、パルサーGTiもホットハッチ”に属する生粋のスプリンターとして開発されていた。

さりげなく速い!ホットハッチの美学を実現

 ホットハッチの美学は、外観はさりげなく、しかし走ると凄いという2面性にある。いわば“コンパクトカーの皮を被った狼”というわけである。パルサーGTiもその美学に忠実だった。エクステリアは195/55R15サイズの偏平タイヤや控えめな形状のリアスポイラーを装備してはいるものの、大人しい印象にまとめられ、リアエンドのエンブレムを見ないとGTiとは分からない。室内も同様だった。本革巻きのステアリングホイール、タコメーター、フットレスト、サポート性を高めたシートなど、アップテンポな走りを支える装備を満載していたものの、他グレードとの差は大きなものではなかった。まさにマニア好みの走りの空間だったのだ。

 しかし、走り面のグレードアップは本格的だった。エンジンは1838ccのSR18DE型を搭載する。140ps/6400rpm、17.0kg・m/4800rpmの出力/トルクを誇る余裕たっぷりのエンジンだ、パルサーの主力エンジンとなる1497ccのGA15DE型と比較すると35ps/3.2kg・mもパワフルでパワーウェイトレシオは僅か8kg/ps(MT)である。1気筒当たり吸気2/排気2の高効率設計を取り入れたSR18DE型はレスポンスが俊敏で、しかも全域でパワフルだった。SR18DE型はプリメーラなどにも搭載する日産の主力エンジンだったが、細部のチューニングにより見事にスポーツ心臓に変身していたのだ。

安定したフットワークを誇った隠れた逸品

 GTiはボディも鍛え上げていた。もともと5代目パルサーは強靱なボディ骨格の持ち主だったが、それを一段とシェイプアップしていたのだ。具体的にはフロントストラットタワーバーとともに、リアにもピラーバーを配置して剛性面を強化する。足回りも専用調律である。フロントがストラット式、リアがマルチリンクビーム式という基本構成はそのままに、ダンパーの減衰力、ばね常数、スタビライザー径などを見直し、高速走行時の安定性を引き上げたのだ。単にハードに仕上げるのではなく、日常的な快適性を重視していたのが特長で、パルサーGTiの足回りはふところが深く、まさに欧州車テーストの乗り味を実現していた。ブレーキも強化され、GTiはリアブレーキがディスクに格上げされていた。ビスカスカップリング式のLSDも標準である。

 パルサーGTiは、シリーズのなかでは販売台数がけっして多くなく少数派に止まった。しかしイメージという面ではパルサーの牽引役だった。パルサーの欧州車タッチの走りを象徴するモデルであり、欧州製ホットハッチと比較してもパフォーマンスに優れた本格派だったのだ。走り好きの開発陣がじっくりと仕上げた雰囲気が伝わる隠れた逸品だったのである。