トヨタデザイン15 【1997,1998,1999】

1990年代終盤、スポーツモデルを大胆刷新

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新車両パッケージングを採用した2代目アリスト

 ミニバンやハイトワゴンといったレクリエーショナルビークル(RV)が人気を集めた1990年代終盤の日本の自動車市場。一方でトヨタ自動車の開発現場では、スポーツモデルの復権を目指して新しいデザインアプローチで仕立てた新型車を鋭意企画していった。

 1997年8月には、“新時代ハイパフォーマンスセダン”を謳った2代目アリストが市場デビューを果たす。新開発プラットフォームを採用するGジウジアーロが基本を手掛けた車両デザインは、フロントショートオーバーハング&ビッグキャビンのモノフォルムシルエットを基本に、硬質でメリハリのある面処理によって塊感を表現。高級スポーツセダンのニュートレンドを提示した。また、全長を115mm短縮しながらホイールベースを20mm延長し、加えて全高を15mm引き上げることで広い室内空間を実現した点も特徴だった。内装デザインについては、ドライバーを心地よく包み込むコクピットスタイルのインパネや新意匠の3眼式オプティトロンメーター、L字型造形のフロントドアトリムなどを組み込んでエモーショナルな雰囲気を演出。また、ハイパフォーマンスを彷彿させる“VERTEX EDITION”と称するスポーティ仕様のインテリアも設定した。

ダイナミックなフォルムで仕立てた新世代FRスポーツセダン

 1998年10月に発売されたアルテッツァも意欲作だった。プラットフォームはプログレ用のホイールベースを110mm短縮し、また前後トレッドの拡大を図った専用設計タイプで、エンジンのフロントミッドシップ配置やショートオーバーハング化、優れた前後重量配分、専用セッティングの4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションなどによって優れた旋回性と走行安定性を実現した。

 スタイリングについては、アスリートを想起させる流麗でダイナミックなフォルムを特長とする。各部のデザインには工夫を凝らし、力強い造形のフードバルジやウェーブリフレクターのヘッドランプ、フレア造形およびシャープなキャラクターラインを有するサイドビュー、シンプルで張りのある面に丸型テールランプを配したリアセクションなどによって、力強さと躍動感をあふれるエクステリアを構築した。インテリアに関しては、“見る、触る、操る楽しさ”を徹底追求してデザインする。具体的には、黒とメタリックでアレンジしたインパネやクロノグラフをモチーフとしたスピードメーター、球形のシフトレバーノブ、高いホールド性を確保したスポーツシートなど、専用デザインのパーツを豊富に盛り込んでいた。

“ライトな新感覚GT”を開発テーマとした7代目セリカ

 1999年9月になると、7代目となるセリカがデビューする。開発テーマは“ライトな新感覚GT”。斬新な軽量スポーツモデルであることを鮮明にした。
 エクステリアについては、ロングホイールベース(2600mm)とショートオーバーハングの組み合わせによって先進的なワンモーションフォルムを実現する。各部の造形も特徴的で、シャープな縦長ヘッドライトと抑揚のあるバンパーおよびフードで構成したフェイス、ボリュームのあるフェンダーとダイナミックなキャラクターラインでアレンジしたサイドビュー、垂直方向のラインと厚みのあるバンパーで踏ん張り感を演出したリアセクションなどを取り入れた。

 インテリアは、ドライバーとパートナーの空間共有を強調したデザインで構成。具体的には、ドアトリムからコンソールへとつながる円弧のラインをクロスオーバーさせることで、前2席の心地よいパーソナル空間を創出する。また、シートはホールド性を高めながらサイド色にブラック/レッド/ブルー/アメジストを設定し、スペシャルティ感をいっそう盛り上げていた。

スタイリッシュなオープンフォルムで仕立てたMR-S

 1999年10月には、MR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)の駆動レイアウトを採用したライトウエイトオープンスポーツのMR-Sが登場する。
 車両ディメンションについては、操縦性に優れるMRの駆動レイアウトを採用したうえで前後のオーバーハングを極力切り詰めてヨー慣性モーメントを低減。さらに、全長3885mmに対してホイールベースを2450mmとたっぷり取り、優れた走行安定性とハンドリングを実現した。

 ボディは主要部位を大型断面の骨格で構成して補強材を極力省くことで、高剛性と軽量化を高いレベルで両立。同時にフロントピラー下部の大径化やロッカーとの結合剛性の引き上げなどによってクローズドボディと同等の耐変形性を確保した。エクステリアに関しては、低重心のスタイリッシュなオープンフォルムを創出。インテリアはシンプル&スポーツをテーマに、直線的なインパネやディンプルパターンの表面処理、メッシュ調立体ファブリック地のスポーツシートで個性を表現した。