WRX STI 【2010,2011,2012,2013,2014】

サーキットも照準に収めたハイパフォーマンスセダン



SUBARUの頂点、WRX STIの優れた戦闘力

 今日では数少なくなってしまった水平対向型エンジン。低重心を特徴とする設計。シンメトリカル4WDと名付けられたWRC(世界ラリー選手権)で鍛え上げられたフルタイム4輪駆動システムを採用するなど、SUBARUの特徴は多い。中でも本格的なラリーカーやレースマシンのベースにもなるトップグレードのWRX STIは性能の面で国産車のベストな1台である。

 SUBARUは1990年にレガシィRSをベースとしたラリーマシンを開発し、ワークスチームを組織してWRCへの本格参戦を開始する。1995年、インプレッサWRXによってマニュファクチャラーズチャンピオンシップとドライバーズチャンピオンシップ(ドライバーはコリン・マクレー)のダブルタイトルを獲得。その後も圧倒的に強く、1997年まで3シーズン連続でマニュファクチャラーズチャンピオンシップのタイトルを獲得した。

 さらに、2001年にはリチャード・バーンズ選手がやはりインプレッサを駆ってドライバーズチャンピオンシップを、2003年にはペター・ソルベルグ選手がドライバーズチャンピオンシップを得ている。スバルブルーと言われた濃紺のボディカラーと冠スポンサーであったたばこのブランドの派手な組み合わせは、世界のラリーフィールドを席巻していた。

4ドアWRX・STIの復活

 2005年ころからの世界的な経済不況、それに伴うメーカーの経営不振の影響を受け、WRCを含む、モータースポーツ全体は縮小傾向に向かうことになる。また、レギュレーションの頻繁な変更、マシン開発に要する莫大な投資なども重なり、有力なメーカーチームの撤退が相次ぐ。

 2005年にフランスのプジョーがWRCからの撤退を決め、フォルクスワーゲングループのセアトは2000年、シュコダは2005年にそれぞれWRC撤退を決めている。日本のメーカーチームもその例外ではなく、SUBARUは2008年で、三菱も2005年を最後にワークスチームの活動を休止してしまった。

 だが、転んでもタダでは起きないSUBARUは、2010年7月に発表したインプレッサの4ドアスポーツモデルに再びWRXの名を与えた。しかも正式名称からインプレッサの名を省略し、SUBARUを代表するスポーツモデルとしてのポジショニングを明確にする。

 従来までの5ドア同様に、WRX STI セダンには、メカニズムから内装に至るまで、ラリーフィールドで鍛え上げられた装備の数々が盛り込まれ、標準型のインプレッサとは全く異なる高性能モデルに仕上げられていた。STIの名を冠していることからも分かるように、おそらく世界的に見ても最もWRCに出場していたワークスマシンに近い市販モデルのひとつ。セダンは優れた空力特性を武器にサーキットフィールドにも活躍の場を広げる。世界のツーリングカーが速さを競う「ニュルブルクリンク24時間レース」への本格挑戦である。

MT仕様は308psのハイスペック2リッター・エンジンを搭載

 4ドアのWRX STIのバリエーションは2種あり、2リッター・ツインスクロール型ターボチャージャーを装備したWRX STIと、2.5リッター・シングルスクロール型ターボチャージャー装備のWRX STI A-Lineを設定。両車の違いは、トランスミッションで、2L仕様が6速MT、2.5L仕様は5速ATを組み合わせる。
 フルモノコック構造の5人乗り、4ドアセダンのボディは、基本的には標準型のインプレッサセダンに等しいが、WRX STIはファットなブリスターフェンダーを採用し前後のトレッドが35㎜拡大されている。これはワイドタイヤと大径ホイールの装着を想定したものだ。なお2.5LのA-Lineにはリアスポイラーが装着されない。

 搭載されるエンジンは前述のように2種で、STIには排気量1994㏄の水平対向4気筒DOHC16バルブにツインスクロールターボチャージャー付き(EJ20型、出力308ps/6400rpm)が、STI A-Lineには排気量2457㏄水平対向4気筒DOHC16バルブにシングルスクロールターボチャージャー付き(EJ25型、300ps/6200rpm)が組み合わせられる。駆動方式はフルタイム4輪駆動システム。特にSTIではドライバーの操作でセンターデファレンシャルの前後輪へのトルク配分比率を変えられるDCCD(ドライバーズ コントロール センター デファレンシャル)が組み込まれる。トランスミッションはWRX STIが6速マニュアル、A-Lineではマニュアルモード付き電子制御5速ATになる。

ブレンボ製ブレーキなど足回りを強化

 サスペンションは前がストラット/コイルスプリング、後はダブルウィッシュボーン/コイルスプリング、ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクブレーキが標準装備されるが、WRX STIでは前がブレンボ社製対向4ポッドベンチレーテッド、後が2ポッドベンチレーテッドで、A-Lineでは同ブレーキをオプションで用意した。ステアリングはレスポンスに優れたラック&ピニオン式でギア比は13.0となる。

 2011年11月には、STIが独自に設定した仕様と装備を持ったS206をSTIのコンプリートモデルとして発売した。価格は540万7500円で計300台の限定モデルではあったが、オリジナルのカタログなども用意する本格的なものであった。
 SUBARUがWRCから撤退して久しいが、現在はニュルブルクリンク24時間レースなどサーキットレースに挑戦している。しかしラリーはサーキットレースとはまた違った魅力あるモータースポーツであり、F1などに比べれば安価に参加できるものだ。再度のワークスチームでの参戦を期待したいものだ。それこそがSUBARUの魅力なのだから。