エリシオン 【2004,2005,2006,2007,2008,2009,2020,2011,2012,2013】

日本に適したビッグサイズ上級ミニバン

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ネーミングはギリシャ叙事詩に由来

 ホンダは2003年10月の第37回東京モーターショーにアメリカなどで売られているラグレイト・クラスのコンセプトモデル、ASMを展示した。これが、翌2004年5月から発売される大型ミニバン「エリシオン」のプロトタイプである。車名のエリシオンとは、大ヒットした同社のミニバンであるオデッセイに因んだものであり、詩人ホメロス作のギリシャ叙事詩「オデッセイ(Odyssey)」に出て来るユートピアの名で、オデッセイの兄弟車であることを意味していた。

 ASMはヘッドランプなどにLEDを採用していたものの、内外装はエリシオンそのもの。ステップワゴン、オデッセイに続くホンダ・ミニバンの頂点として高い注目を集めた。ASMには、市販バージョンのエリシオンに継承されなかったアドバンテージがあった。ASMはハイブリッド機構を搭載した地球に優しいミニバンだったのだ。ASMは走行状況に応じてエンジンを補助するモーターアシスト機構を組み合わせたホンダ独自のIMAハイブリッド機構を採用。CO2の排出を抑えながらパワフルな走りを実現していた。

日本ジャストサイズのエリシオン

 エリシオンのボディは、アメリカ市場向けに開発したラグレイトよりは大分小型化されている。日本の道路事情に配慮したためである。全長4840mm、全幅1830mm、全高1760mm、そしてホイールベースは2900mmの設定だった。
 基本的なスタイリングは、ホンダ製ミニバンらしいもの。豪華なクルーザーをキーイメージに取り入れたスタイリングは伸びやかで、滑らかなラインで構成したボディパネルの質感は非常に高い。

 エリシオンは最上級ミニバンだけに、先進のセーフティデバイスを採用していた。なかでもVZグレードに標準装備した追突軽減ブレーキ(CMS)は特徴的だった。追突軽減ブレーキはドライバーへの警報及びブレーキのアクティブな制御により。効果的に追突事故の回避を支援するシステムである。ミリ波レーダーをフロントグリル内から前方に送信し前走車を検知。追突の恐れがあると判断した場合に3ステップで働いた。まず音と表示による警報でドライバーに注意を促し、さらに接近した場合には自動で軽いブレーキをかけることで体感警報を実行。最後に追突の回避が困難と判断した場合は自動で強いブレーキ制御を行い、ドライバー自身のブレーキ操作との相乗効果によって追突被害を低減した。追突事故を自動回避するものではないが、危険の度合いに応じて3段階に働くことでドライバーを覚醒させ事故を未然に防ぐのに効果的なアイテムだった。

開放感を重視した3列シアターポジションを採用

 室内スペースは広く、3列8人乗りシートを余裕を持って配置している。インスツルメンツパネルの仕上げなどは、レジェンドと同等。高級車であることを感じさせる。シートと内装はファブリック、スウェード、本革張りの3種からセレクト出来た。シート位置は後部に行くほど座面が40mmずつ高くセットされたシアターポジションとされ、後部座席からの視界と開放感を良好なものとしていた。2列目と3列目の回転対座機構はオプション設定。全高は1790mmとライバルよりやや低い設定となっていたが、室内の高さはライバル車種と同等かそれ以上だった。これは、床面を一段低く置くホンダ得意の低床型シャシーを使うことで実現されたものだ。

 面白い装備としては、上級グレードが採用した室内へ侵入する様々な騒音に対して、それらを打ち消す波型の音をスピーカーから流し、感覚的に静粛性を向上させるシステムの搭載である。さらに、V6エンジン搭載車では、気筒休止時にエンジンから伝えられる不規則な振動を、電子制御されるエンジン・マウントにより、ほぼ完全に打ち消すという念の入れようである。エリシオンがミニバンであるオデッセイの大きな成功により、日本のミニバンのジャンルでは確固たる地位を築き上げたホンダのトップモデルであれば、騒音や振動の排除にそれほどの完璧さを求めるのは当然だった。

V6ユニットは先進の可変シリンダー機構導入

 駆動方式はFFと4WDがあり、搭載されるエンジンは直列4気筒DOHCの排気量2354cc(最高出力160ps/5500rpm)とV型6気筒SOHCの排気量2997cc(最高出力250ps/6000rpm)の2種。とくにV型6気筒エンジンには可変シリンダー機構が搭載されていた。このシステムは、状況に応じてV型エンジンの片側3気筒を休止させるもので、燃費の向上や排気ガスの減少などに大きな効果がある。トランスミッションは電子制御式の5速オートマチックのみ。

 サスペンションは前後ダブルウィッシュボーン/コイルスプリングで、スタビライザーバーはいずれのモデルにも標準装備される。ブレーキは前・ベンチレーテッドディスク、後・ソリッドディスクの組み合わせで、サーボ機構が付く。価格はさすがに高価で、最も高価なプレステージでは461万にもなる。
 エリシオンはホンダ製ミニバンのトップレンジとして、数々の改良とマイナーチェンジを受け完成度を高め続けている。広い室内空間と、高級感ただよう走りのフィーリングはさすがだ。