プロシード・レバンテ 【1995,1996,1997】

スズキからOEM供給を受けて販売した小型SUV

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マツダとスズキの積極的な業務提携

 好景気を背景に車種設定の強化を目論んだ1980年代終盤のマツダは、1975年末から退いていた軽自動車市場に再び参入するための方策を検討する。最終的に決定したプランは、他社との生産協力。当時のマツダにとって、ゼロから軽乗用車を開発するのにはコストや時間などの制約の面で無理があったからだ。首脳陣が提携先として選んだのは、直接のライバル関係にはない、つまり国内№3の座を競う自動車メーカーではないスズキだった。スズキ側にとっても、自社製品の販売量が無理なく増えるというメリットが生まれる。結果的に両社は、1987年12月に軽自動車生産の協力体制を構築する旨を発表した。

 クルマそのものの供給、すなわちOEM供給については、まず軽商用車のカテゴリーで行われる。スズキ・エブリイ(バン)/キャリー(トラック)をベースに専用エンブレムなどを装着したスクラムが、1989年6月にマツダのオートザム ブランドを通して発売された。以後、スクラムはマツダの定番軽バン/トラックとしての地位を確立していく。また、スズキからは軽乗用車用のコンポーネント、具体的にはF5B型547cc直列3気筒OHC12Vエンジンと駆動系、2335mmのホイールベースを持つシャシーや足回りなどの供給も受け、スズキの浜松工場で生産されたこれらの製品を広島に運び、独自のボディと内装パーツを組み付けて新型キャロルを完成させた。さらに、軽自動車が新規格に移行してからはF6A型657cc直列3気筒のOHCやDOHCターボなどを購入し、ミッドシップスポーツのAZ-1を生み出した。

 一方でマツダからスズキへは、スズキにはないパワートレイン、すなわちディーゼルエンジンが供給される。選ばれたのはRF型1998cc直列4気筒OHC渦流室式ディーゼルターボユニット。電子制御式の燃料噴射ポンプや電子式EGRなどを採用して平成6年排出ガス規制をクリアし、また始動性を高めるQSS(クイック・スタート・システム)も組み込んだRFユニットは、1994年12月よりエスクードに搭載された。
 マツダとスズキの提携は、1990年代半ばに入ると新たな展開を見せる。当時、市場で人気を博していた小型SUVの設定がなかったマツダに、スズキがエスクードをOEM供給することとなったのだ。

“東風”のサブネームをつけて発売

 マツダ版エスクードは、1995年2月に「プロシード・レバンテ」の車名で市場に放たれる。レバンテ(LEVANTE)とはイタリア語で東風の意味。ボディタイプはベース車と同様、5ドアのロング(ホイールベース2480mm。乗車定員5名)と3ドアのショート(同2200mm。4名)をラインアップしていた。

 内外装デザインは基本的にエスクードと共通で、相違点はフロントグリル内の社名ロゴとリアゲート部に配した車名エンブレム程度。搭載エンジンは2ボディともにガソリンとディーゼルの2機種を設定。ガソリンユニットはVの角度を60度に設定したうえでシリンダーブロック/シリンダーヘッド/ヘッドカバー/アッパーオイルパンにアルミ材を採用したスズキ製のH20A型1998cc・V型6気筒DOHC24Vで、パワー&トルクは140ps/18.0kg・mを発生する。一方のディーゼルユニットはマツダ製のRF型1998cc直列4気筒OHC渦流室式ディーゼルターボで、パワー&トルクは76ps/17.5kg・mを絞り出した。組み合わせるトランスミッションは、H20A型エンジンに5速MTとロックアップ機構付4速AT、RF型ユニットにロックアップ機構付4速ATをセット。駆動システムにはオートフリーホイールハブ付のパートタイム4WD(2H/4H/4L)を採用していた。

ベース車に合わせてマイナーチェンジを実施

 マツダ ブランドの小型SUVとして地味ながらも着実な支持を集めたプロシード・レバンテは、デビュー後もベース車のエスクードに合わせた一部改良を随時行っていく。
 1996年11月にはパワートレインのラインアップを刷新し、3機種の新エンジンを採用する。ひとつめはフラッグシップユニットとなるガソリンのH25A型2493cc・V型6気筒DOHC24V。従来のH20A型のボア×ストロークを78.0×69.7mmから84.0×75.0mmにまで拡大し、加えてマイクログルーブドベアリングなどの新技術も採用したH25A型は、160ps/22.5kg・mのパワー&トルクを発生した。

2つめは高効率インタークーラーとセラミックタイプ・グロープラグを新採用したRF型1998cc直列4気筒OHC渦流室式ディーゼルターボで、パワー&トルクは92ps/23.0kg・mにまで向上する。3つめは新開発のオールアルミ製J20A型1995cc直列4気筒DOHC16Vのガソリンユニット。16ビットマイコン制御やマルチポイント式EPI、ダイレクト・アクティング・バルブなどを組み込んだJ20A型は、140ps/19.0kg・mのパワー&トルクを絞り出した。また、駆動システムは走行中でも2Hと4Hが切り替えられるドライブセレクト4×4に改良。内外装デザインの一部変更も行った。
 1997年11月にはベース車のエスクードが第2世代に移行する。それに伴い、プロシード レバンテも新型に切り替わった。