ラウンドボックス(コンセプトカー) 【2007】

「わくわく、どきどき」がキーワードのカジュアルオープン

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スポーツバーの盛り上がりを意識したラウンドボックス

 日産GT-Rが華々しいスポットライトを浴びた2007年の東京モーターショーに出品されたラウンドボックスは、ピュアなスポーツ性を真摯に追求したGT-Rとは対極のカジュアルなオープンコンパクトだった。ドライバーだけがクルマとの対話や刺激を楽しむのではなく、仲間と一緒に「わくわく、どきどき」できることをコンセプトとした感覚重視のライブビークルだったのだ。

 ラウンドボックスについて先行商品企画室の潮崎氏は「コンセプトはスポーツバーの盛り上がりです。スポーツバーではみんなでゲームに集中し、純粋に楽しみます。しかし実際にグラウンドでプレーする選手が背負うプレッシャーや緊張感とは無縁です。そこは仲間と一体感を味わいながら、ストレスなく楽しむ空間。危険を伴うリスクのない、ジェットコースターのような“わくわく、どきどき”が感じられる空間と表現すればいいでしょうか、ラウンドボックスで提供したいのはそんな世界です」と説明し、絶対的な速さやスペックではなく気持ちのよさ、それも乗る人だれもが実感できる世界にこだわったことを強調した。

異質の組み合わせが新たな価値を創造

 ラウンドボックスの個性はミックスカルチャーな演出にあった。言いかえれば通常ではあり得ない異質の要素の組み合わせが、新鮮なわくわく、どきどきの源泉だった。たとえばラウンドボックスのネーミングの由来ともなった居住性に優れる広々としたキャビンと、踏ん張り感に富んだアンダーボディが合体したエクステリアである。上半身はカジュアルで下半身はスポーツ。上下で異なる異質の要素がラウンドボックスに新しい価値を与えていた。

 インテリアも同様で、一見リラックス感を強調したベンチシートタイプのクッションと、サポート性に優れたバケットタイプのシートバックという異質の組み合わせがラウンドボックスらしかった。左右の乗り移りやすさに優れたカジュアルなベンチシートと、一端座ってしまえば身体をしっかりとホールドしてくれるバケットタイプのシートバックの組み合わせは、新たな機能性の表現だったのである。

斬新な体験が共有できたコミュニケーション手法

 キャチボールディスプレーもラウンドボックスらしさを表現する。後席も含めたパッセンジャーとインタラクティブにコミュニケートできるセンターの大型タッチスクリーンと、ドライバー正面の運転情報画面との間で、あたかもキャッチボールするかのように各種情報をキャッチボールが出来、相互のコミュニケーションが取れたのだ。たとえばタッチスクリーンを利用して後席を含めたパッセンジャー同志でこれから行きたい店の情報を検索。行きたい店が決まるとそれを即座にナビ情報に変換し、ドライバーの運転情報画面に送ることができた。いままでドライバーが半ば独占していたドライブの主導権を、パセンジャー同志で共有することが可能だったのだ。ラウンドボックスらしい斬新な体験をもたらす工夫と言えた。

 ロードサーフェス・ウィンドーという両側の足元に設けた小さな窓も楽しい工夫だった。オープンカーというと頭上に拡がる広い空間が一般的だが、それだけでなく、足元の窓から見える路面が後方に流れることで、乗員すべてがこれまでのクルマでは味わうことのできなかった刺激をリスクにさらされることなく共有することができたのである。

 ラウンドボックスは環境に優しいターボ付きの直噴ガソリンエンジンとエクストロニックCVTの搭載を想定しており、動力性能もハイレバルなことが予想された。しかしそれ以上にコンセプトそのものが新しかった。絶対的な性能だけでなく、仲間と一緒に「わくわく、どきどき」するオープンコンパクト。ラウンドボックスの思想を継承した市販モデルの登場に期待したい。