サニー 【1990,1991,1992,1993,1994】
上質を追求。スタイルが選べた7代目サルーン
1966年に誕生したサニーは、カローラとともに、日本に大衆車の概念をもたらしモータリーゼーション躍進に貢献。ファミリーカーの代表に成長する。同時に、日産を代表する1台として海外市場でも確固たる地位を確立した。しかし代を重ねるごとにライバルのカローラとは販売ボリュームに大差をつけられるようになった。それはつねにユーザーのニーズを先取りし、バリエーション構成はもちろん、装備や性能を充実させることを怠らなかったトヨタと、小型車=経済性という解釈のもと、クラス感を脱皮するのに慎重だった日産の商品戦略の違いがもたらしたものだった。
カローラは、一貫して大衆車ではあったものの、モデルチェンジのたびに従来の大衆車の殻を打ち破る革新に挑戦。上級モデルを凌駕するほどの進歩を繰り返してきた。だからこそ世界の大衆車の中心に位置することが出来た。対してサニーは、あくまでも数多くの日産ラインアップの1台であり、時代とともに進歩はしていたが、たとえば上級車のブルーバードを脅かすほどの質感・性能を備えたことはなかった。
1990年に誕生した7代目サニーは、様子が少し違った。7代目は「正統派セダン」を開発コンセプトに掲げ、内外装ともに上質な完成度の高いクルマに仕上げていた。カタログでは「シンプル=中味はずっしり豊か。でもいばらない。スタイルがさりげなくきまっている」、「スマート=考え方はしっかりしている。けどハートはやわらかい。格好いい。」、「エンジョイ=フットワークはすばやく敏感。明るく元気で、いっしょだと楽しい」と説明し、「わかった人が乗っている」と、新型のコンセプトを表現していた。7代目は経済性だけを重視したエコノミーモデルではなく、大人が似合う正統派セダンを目指したのである。
1990年1月にデビューした新型のラインアップは4ドアセダンの1種で、従来のクーペは“サニー”という名称が取れ、別系統のNXクーペとして独立。ステーションワゴンのカリフォルニアは当面、従来型を踏襲した(1990年10月にコマーシャルモデルのADバンの派生車に様変わりする)。
グレード構成はLE、JX、EXサルーン、スーパーサルーン、スーパーサルーンe、GT-S、VRの7種。エンジンはガソリンユニットが、1295ccのGA13DS型(79ps)、1457ccのGA15DS型(94ps)、1596ccのGA16DE型(110ps)、そして1828ccのSR18DE型(140ps)の4種。ディーゼルが1680ccのCD17型(55ps)の1種の計5タイプ。ガソリンユニットは全機種DOHC16V仕様の新世代ユニットとなった。トランスミッションは5速MTと4速AT。駆動方式はFFを基本に、一部グレードで4WDを設定した。
新型の特長は、上級グレードのスーパーサルーン系グレードに、エクステリア、インテリア、フットワークの専用セレクションを用意し、ユーザーの好みに応じて、ラグジュアリーとスポーツの2タイプから自由に選べるようにした点にあった。これをメーカーでは“スーパーセレクション”と呼んだ。
セレクションの内容を説明しよう。ラグジュアリーは豪華&快適指向で、エクステリアではフロントぼかしガラス、ブライトメッキモールディングなどを装備。インテリアではラグジュアリーシート&ドアトリム、後席センターアームレスト、4本スポーク革巻きステアリングを備え、フットワークは電子制御サスペンション(コンフォート・オートサス)と標準仕様を用意していた。一方のスポーツはGT-S仕様を名乗り、精悍さと走りを重視。エクステリアはエアロバンパー、プロジェクターフォグランプ、14㌅タイヤを装備。インテリアではスポーツシート&ドアトリム、3本スポーク本革ステアリング、本革シフトノブを備え、フットワークはハードサスペンションと標準仕様を用意した。
前述のようにエクステリア、インテリア、フットワークのセレクション組み合わせは自由。すべてをラグジュアリーやスポーツで統一することはもちろん、エクステリアはスポーティで、インテリアはラグジュアリー、フットワークは標準とすることもできた。
このような内外装や足回りの斬新な組み合わせは、ライバルのカローラは採用しておらずサニーのセールスポイントとなった。日産車でも上級版のセフィーロが同様な取り組みを実施しているだけだった。
端正な3BOXスタイルでまとめられた7代目サニーは、クルマ選びの段階からわくわくし、乗るとスムーズで意のままの走りが味わえるクルマだった。自己主張こそ強くなかったものの、日産の技術力の高さと、ユーザーフレンドリーな姿勢が実感できた。7代目サニーは開発陣の狙いどおり、大人が似合うサルーンとして独自のポジションを構築する。