09ホンダ・インサイトvs 09トヨタ・プリウス 【2009,2010,2011,2012,2013,2014,2015,2016,2017】

完成度を高めた新型ハイブリッドカー対決

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量産ハイブリッドカーのさらなる進化

 電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)に移行するまでの過渡的な存在と言われたハイブリッドカー。しかし、その寿命は当初の予想以上に長く続く。EVやFCVにはコスト面や航続距離、リサイクル性、インフラの整備など、乗り越えなければならない課題が多かったからだ。そのため、環境対策車としてのハイブリッドカーの存在価値は2000年代に入っても高い状況を維持し、リーディングカンパニーのトヨタ自動車と本田技研工業はハイブリッド機構のさらなる進化を図っていくこととなった。

“新時代コンパクトスタンダード”を目指した2代目インサイト

 最初に動いたのは本田技研工業だった。2009年の元旦に「ハイブリッドカーを、安くつくれ」というコピーを掲げた“Honda Green machine”プロジェクトの広告を全国紙に掲載し、同年2月にはZE2の型式をつけた第2世代のインサイトを発売する。車両価格は189万円〜と、普及を促す買い得感の高い値札をつけていた。

 動力源に関しては、本田技研が熟成を重ねてきたパラレル方式の最新IMAを採用する。搭載エンジンはフリクションロスの低減などを図ったi-VTECのLDA型1339cc直4OHC(88ps/12.3kg・m)。全気筒を休止する可変シリンダーシステムのVCMも組み込み、優れた燃費性能と力強い過渡トルクを実現する。電動機については、新設計の薄型DCブラシレスモーターや専用セッティングのPCU(パワーコントロールユニット)、モジュール当たりの出力と耐久性を約30%向上させたうえで小型・軽量化を図ったニッケル水素バッテリーなどを採用。また、PCUとバッテリーで構成するIPU(インテリジェントパワーユニット)は従来比で約19%の小型化と約28%の軽量化を達成し、荷室下への配置が可能となってパッケージ効率に大きく貢献した。組み合わせるトランスミッションには、専用チューニングのホンダマルチマチックS(CVT)を採用する。発進時のストール回転数を下げ、より低い回転域でクラッチをつなぐ制御を導入した新CVTは、発進時の加速性能と燃費の向上を同時に実現した。

 スタイリングは、“エアロストリーム”をテーマに掲げた空力デザインで構成する。参考にしたのは同社の燃料電池車であるFCXクラリティのモノフォルムで、前面投影面積の抑制や整流パーツの付加などによってCd値(空気抵抗係数)0.28を実現した。また、ボディサイズは日本の道路で扱いやすく、しかも前面投影面積が抑えられる5ナンバー枠に収める。インテリアについては“エモーショナル・ハイブリッド・インテリア”をコンセプトに、ドライバーにとっての操る楽しさや同乗者の爽快感、ハイブリッド車らしい先進性の創出を目指す。とくに力点を置いたのがドライバー周りのデザインで、逆ラウンドさせて広さ感を出したインパネ&ドアトリム形状や上下二分割式のマルチプレックスメーター、異なる要素を持つ素材と色を組み合わせた未来感あふれる内装カラーなどを採用した。

“圧倒的な環境性能”と“走る楽しさ”を高レベルで両立させた3代目プリウス

 2009年5月になると、3代目となるプリウスがZVW30の型式をつけて市場デビューを果たす。目指したのは圧倒的な環境性能と走る楽しさの高レベルでの両立。キャッチコピーには“スーパー・ハイブリッドカー誕生”と謳った。

 新しい動力源には、アトキンソンサイクル(圧縮比13.0)の2ZR-FXE型1797cc直4DOHCエンジン(99ps/14.5kg・m)と3JM型交流同期電動機(60kW/207N・m)を組み合わせた“リダクション機構付きTHS-Ⅱ”を採用する。エンジン部にはバッテリーの電力で駆動する電動ウォーターポンプを組み込み、緻密な冷却水流量の制御と駆動ベルトの電動化によるフリクションロスの低減を達成。また、燃焼効率を向上させるクールEGRシステムやローラーロッカーアーム、排気熱をヒーターやエンジン暖機に利用する排気熱再循環システムを装備した。一方でパワーコントロールユニットは、昇圧コンバータによってシステム電圧を最大650Vにまで高めるとともに、冷却系の見直しなどでユニット自体を小型・軽量化。ハイブリッドバッテリーには高出力ニッケル水素バッテリーを採用し、冷却系の吸気ダクトやファンの小型化を図る。走行パターンについては、通常走行モードのほかに燃費を向上させるエコドライブモード、パワフルな走行が楽しめるパワーモード、そしてエンジンを停止して走らせるEVドライブモードを設定した。

 エクステリアは空力理論に基づくエアマネジメントを徹底し、プリウスの象徴である“トライアングルシルエット”をさらに進化させて世界トップレベルの空力性能(Cd値0.25)を実現する。内包するインテリアは、視認性と操作性を一段と向上させたコクピットやステアリングスイッチなど指の触れた場所をセンターメーターに表示するタッチトレーサーディスプレイ、ソーラーパネルで発電した電力を使用して室内換気を行うソーラーベンチレーションシステムなどが訴求点。安全機構として、プリクラッシュセーフティシステムやS-VSC、6個のSRSエアバッグ、アクティブヘッドレストも装備した。

 進化したハイブリッドシステムとエアロボディで獲得した環境性能は、インサイトがJC08モード走行で26.0km/L、10・15モード走行で30.0km/L(G/Lグレード)、プリウスが同32.6km/l、38.0km/L(Lグレード)の低燃費を達成する。さらに、2車ともに国土交通省の「平成17年排出ガス基準75%低減レベル」と「平成22年度燃費基準+25%達成車」の認定取得を実現していた。